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Jを目指せ! by 木次成夫

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第136回「“今季も群雄割拠”の北信越リーグ開幕」
by 木次成夫

「夢のJ2」参入後、あるいは「夢の途中」としてのJFL昇格後、多くのクラブが観客動員面で苦戦しています。例えば、以下(左側の記載したチームがホーム。観衆は主催者発表)。良い意味での例外として、ファジアーノ岡山が目立ちます。

▼J2第7節
(4月10、11、12日)
徳島 1-1 鳥栖
(10日、2677人)
愛媛 0-0 栃木
(11日、2521人)
水戸 3-3 岐阜
(11日、2302人)
岡山 1-1 横浜FC
(12日、13228人)

▼J2第6節
(4月4、5日)
栃木 1-0 岡山
(5日、4584人)
富山 0-1 徳島
(5日、2741人)
岐阜 0-2 福岡
(5日、2626人)
熊本 4-0 札幌
(5日、4653人)

▼J2第5節
(3月29日)
岡山 1-1 札幌(5435人)

▼JFL前期5節
(4月11日、12日)
ガイナーレ鳥取(J準加盟) 2-0 FC琉球
(12日、2166人)
ニューウェーブ北九州(以下NWと略、J準加盟) 2-1 佐川印刷
(12日、1520人)
MIOびわこ草津 2-0 三菱水島FC
(12日、638人)

 現状として、もはや「Jリーグ」というブランド・パワーが観客動員につながるとは限らないのは、明らか。その上、今や大不況。ということは、「Jを目指すクラブ」にとって最も大事なことは、J2参入までに“未だかつてないほど”ファンを増やせるか、では? そう思うゆえに、先週末は、地域リーグ随一の“群雄割拠”北信越1部開幕戦に期待していました。結果は――、

[11日]
長野パルセイロ(昨季優勝) 1-1 上田ジェンシャン(今季昇格)
*観衆=1425人。チケット料金=大人(高校生以上)500円、小人(小・中学生)200円

[12日]
ジャパン・サッカーカレッジ(昨季2位) 2-0 サウルコス福井(同7位)
*ジャパンは主将の宇野沢祐次(元・柏など)はじめ、元Jリーガー多数。サウルコスも「Jを目指す」クラブです。

ツエーゲン金沢(同3位) 2-0 ヴァリエンテ富山(同6位)
*観衆=1197人。チケット料金=大人1000円(前売り800円)、小・中・高校生300円(前売り200円)

松本山雅(同4位) 4-0 グランセナ新潟(同5位)
*観衆=4014人。チケット料金=高校生以上600円、中学生以下無料

ちなみに、パルセイロ、ツエーゲン、山雅の昨季開幕戦は、
パルセイロ対グランセナ(2061人)
ツエーゲン対フェルヴォローザ石川・白山(1515人)
山雅対サウルコス(2405人)

 チケット料金が違うので、一概には比較できませんが、山雅ファンの多さは期待通り。この勢いで成長すれば、やがて“夢のJ2”で低迷しまくっても、相対的な盛況は“ありえる”のではないか、と感じたほど。ただ、その一方で、試合内容を見る限り、今季もリーグ2位以下が“ありえる”し、たとえJFL昇格を果たしても、現状の環境では成績面で苦戦することは必至だろうとも思いましたが……。

[得点経過]
3分 1-0
(得点=ボランチ三本菅 崇、30歳=5年目、元・浦和など)
・ゴール前の混戦を押し込む。

59分 2-0
(得点=FW柿本倫明、31歳=2年目、前・湘南)
・右SB金澤慶一(24歳=3年目、前・近畿大学)のクロスをヘディング

66分 3-0
(得点=柿本)
・交代出場した攻撃的MF今井昌太(24歳=3年目、前びわこ成蹊スポーツ大学)のスルーパスに絶妙のタイミングで合わせる。

68分 4-0
(得点=柿本)
・ボランチ北村隆二(28歳=今季加入、前FC岐阜)のパスを受け、華麗にシュート。

 数字的には完勝ですが、グランセナが夜間練習“週3日”のアマチュアチームだという点を考慮すると、上々とは言えない内容でした。ハットトリックを達成した柿本はじめ、相対的に優れた個人能力で勝ったという印象。良く言えばシンプル、時に大雑把、あるいは単調。前日(11日)のJFL、横河武蔵野対町田ゼルビア戦で“つなぐ”サッカーを堪能した後ゆえ、試合序盤は特に“山雅はボールの動きが遅い”と、感じました。横河やゼルビアよりも山雅の方が、“経歴という点では上”の選手が多いのですが……。
 ちなみに、横河対ゼルビアのスタメン中、元Jリーガーは横河(5節終了時点で2位)が2人で、ゼルビアは1人。山雅は総勢19人中6人(グランセナ戦スタメン中4人)が元Jリーガーです。

 今季を例にすると、北信越開幕はJFL前期5節に相当する時期ですから、例えば“(北信越)開幕戦だから、チーム熟成していないのは致し方ない”という見方で済ませるわけにも、いかないと思います。

 今井、金澤、竹内優(24歳=3年目、前・駒澤大学)の溌剌したプレーを見て、今季の強化策に、改めて疑問も感じました。元Jリーガーら格上選手と切磋琢磨することでチーム全体のパフォーマンスが高まるということは理解できますが、昨季末に戦力外通知した選手を含めて、ファンに馴染みのある選手の潜在能力に“もっと”期待する選択もアリだったのでは? 

 言い方を変えると、過去のJ2参入クラブの強化スタイルを踏襲して、選手を次々に入れ替えて、J2で戦える状況に至ることが、ファンの夢なのでしょうか? 例えば、チームで唯一人、長野県で生まれ育った今井は昨季の天皇杯でJ2湘南を破る大快挙などに貢献しましたが、当時の仕事は「(食事も提供する)お風呂屋さんで料理を作っていました」(本人)。これほど、“地元の夢”を感じさせる例は稀では? とすれば、今井をはじめ、チームに貢献したアマチュア選手は、例えば、本人の希望しだいで下部組織のコーチを兼任させるとか、クラブ(あるいは松本という地域)に長らく“いられる”状況を作ることも大事なのでは? 

 ところで、前回まで“負けても面白い”と書いてきたゼルビアは、山雅よりも観客が少ない点を含めて、現状では済まされない(かもしれない)事態になりました。横河に1-2で敗れた結果、1勝4敗の15位。多くのゼルビア・ファンが横河戦に訪れることを期待していたのですが、観衆合計で1328人。一見して、ゼルビア・ファン数は、例えば、昨季のパルセイロ・ホームでの山雅ファンよりも“かなり”少なかったです。

 ただ、両チームのサッカーを同じ観点で見るなら、横河戦のゼルビアは面白かったですが、グランセナ戦の山雅は、2点目が入るまでは“勝ってもイマイチ”でした。もちろん、サッカーの見方は様々ですし、より多くのファンが集まるのが一番大事だということは言うまでもないですが……、山雅のアマチュア選手も子供のコーチとして新たなファン増大に貢献できるのでは? とは思います。

<写真>チーム通算3点目をあげて歓喜する柿本倫明

▼Jリーグを目指すクラブの動向

・東北リーグ1部1節
(4月12日)
グルージャ盛岡(昨季優勝) 3-2 塩釜FCヴィーゼ
FCプリメーロ 0-1 福島ユナイテッド(今季昇格)

*元Jリーガーなど大補強した福島ユナイテッドは(意外に?)辛勝のスタート

・北信越リーグ2部
(4月12日)
アンテロープ塩尻(昨季2部4位) 2-1‘09経大FC(新潟経営大学、同5位)

*山雅対グランセナ戦後に同じ会場で開催。地域のサッカーを楽しめる点で、今後も同日同会場開催を実施してほしいと思いました。アンテの“つなぐ”サッカーも面白かったですし、ボールボーイをした下部組織の子供たちに、試合後、コーチが「試合は選手だけじゃなくて、運営する人、応援する人がいてこそ成立することがわかったと思います」など説明する様を見て、改めて、“夢のJ”以外にも多くのチームがあった方が良いと再認識しました。地元出身選手の受け皿という点でも――。

・関西リーグ1部1節
(4月12日)
バンディオンセ加古川(昨季優勝) 1-2 BIWAKO S.C HIRA(観衆200人。チケット料金=無料)

・四国リーグ2節
(4月12日)
カマタマーレ讃岐 4-1 南クラブ(観衆3268人。チケット料金=大人500円、高校生以下無料)

*経営難ゆえにアマチュアチームとしてリスタートしたバンディは今季昇格チームに敗戦という厳しいスタート。その一方で、羽中田昌監督就任2年目のカマタマーレは、人気面でも“上昇気流に乗った”という感じです。

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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4/12松本山雅対グランセナ-2

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