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Jを目指せ! by 木次成夫

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第137回「“群雄割拠”北信越PART2 ツエーゲン金沢」
by 木次成夫

 ツエーゲン金沢は昨季終了後、池田司信監督はじめ、レギュラークラスの選手が多数、退団しました。“Jを目指すクラブ”として積極的な強化を始めて以降、06年4位、07年4位、08年3位。「3年目の集大成」(クラブ関係者)に昇格を逃したことと、不況も影響したクラブ経営事情が、チーム再編の大きな理由のようです。

「昨季の年間予算は約1億円でしたが、今季は約7000万円です。限られた予算の中で契約更新をオファーしたものの、他チームで“上を目指したい”という理由で去った選手も、いました」(ツエーゲン関係者)。

 今季は上野展裕“新”監督(前・京都コーチ)のもと、選手総勢22人。うち新加入15人。そして、2-0で勝利した1節の富山戦はスタメン全員が新加入選手。どんなチームになったのか気になり、去る19日、2節のアウェー、対グランセナ新潟戦を見に行きました。

 ツエーゲンのメンバーは以下の通り。スタメン中10人が新加入選手でした。

[スタメン]
フォーメーションは4-4-2
GK、木寺浩一(37歳、前・広島)
右SB、豊田和斗(18歳、前・四日市中央工業高校)
CB、諸江健太(23歳、前・FC刈谷、元・名古屋←名古屋ユース、金沢市出身)
CB、込山和樹(22歳、前・大阪体育大学=08年総理大臣杯優勝←星稜高校)
左SB、辻田真輝(24歳=4年目、前・大宮)
ボランチ、ビジュ=主将(34歳、前・水戸)
ボランチ、遊佐克美(20歳、広島からレンタル。広島ユース出身。高校3年時は主将としてJユース杯制覇。元U-18日本代表)
右MF、斉藤雄大(22歳、前・国士舘大学)
左MF、根本裕一(27歳、前・ジェフ=大分からレンタル。元U-23日本代表=アテネ五輪アジア予選出場)
FW、デニス(23歳、前Ituitaba EC=ブラジル)
FW、仲谷圭史(22歳、前・仙台大学=08年インカレ出場)

[サブ]
MF、広庭 輝(23歳=3年目、前・柏)=67分に斉藤と交代出場
DF、山道雅大(22歳、前・大阪体育大学)=78分に遊佐と交代出場
MF、秋田政輝(26歳=2年目、前・バンディオンセ神戸=現・加古川)=83分に辻田と交代出場
GK、田代祐平(24歳=3年目、前・金沢星稜大学)
MF、海野将光(25歳=2年目、前ジェフリザーブズ)
FW、クリゾン(21歳、前AA Francana=ブラジル)
FW、小森谷亮太(20歳=3年目、前FCトリプレッタ・ユース)

 結果は5-0でツエーゲンが勝利。最終的には大差になったものの、前半は0-0で、内容的にも互角。グランセナは守備重視策ではなく、いわゆる“ガチンコ”勝負を挑み、健闘しました。その一方で、ツエーゲンは、“ビジュを基点にスピーディに攻めるサッカーを目指しているのだろう”とは感じましたが、全体的に単調。チーム合流後、1カ月にも満たない選手が複数いることを考慮すれば、熟成不足は致し方ないのでしょうが……。

 例えば、“切れ味”系の右MF斉藤とFW仲谷、“しなやか”系のFWデニスは、随所で能力を感じさせるプレーを披露したものの、周囲とのコンビネーションが未熟。地域リーグ所属クラブとしては超大物ゆえに期待していた根本は、持ち味を“ほぼ”発揮できず。根本へのパスが少ない上に、根本が得意のアーリークロスに合わせる“周囲の動き”も皆無。

 そんな中、停滞する流れを変えたのは、右MFで交代出場した広庭でした。レイソル所属時代とは比べ物にならないほど逞しくなった体格。自信に溢れた駆け引き。得点後にファンが待つスタンド席の前まで走って、喜びを共有したフォーマンス。  様々な点で、“高卒6年目”の成長を実感すると同時に、再チャレンジの場としての“JFL以下の存在価値”を再認識しました。

[得点経過]
46分=0-1
デニス
*ビジュの浮き球フィードに合わせ、絶妙のタイミングで、ループ・シュート

73分=0-2
広庭
*ビジュのパスを受けて、豪快に右足一蹴!

77分=0-3
ビジュ
*広庭が右から後方のビジュに落とし、ビジュがダイレクト

85分=0-4
デニス
*広庭からパスを受けた後、ドリブル→グランセナ選手を複数抜き去って、シュート

88分=0-5
デニス
*左SBに下がった根本のパスに合わせて抜け出してドリブル→カットに入ったDFをかわしてシュート

 グランセナは第1節の山雅戦に続いて、終盤に大崩れしてしまいました。とはいえ、ツエーゲンのサッカーが飛躍的に良くなったというよりは、グランセナ選手が疲労し、集中力が切れたという印象。ただ、試合後にツエーゲン選手たちが、ファンの応援=リズムに合わせ、飛び跳ねて勝利を喜ぶシーンを見て、“今季は違う”と感じました。大学新卒など若手が多いからでしょうか、何となく2年前の山雅を思い出させる“ノリの良さ”――。

 また、チーム作りで出遅れたということは“伸びしろ十分(かもしれない)”ということ。
 中でも、チーム唯一の高卒1年目、豊田が再三、オーバーラップするなど堂々としたプレーを披露したのは、驚きでした。クラブが“賄いナシ”ながらも寮に相当する住居を用意しているとはいえ、慣れない1人暮らしを始めて間もない中で、ですから。

「練習中もチーム全体の雰囲気が明るいですし、良いリスタートが、できました」(ツエーゲン関係者)

 とすれば、次の課題は、いかにファンを増やすか?

 昨季もアウェー試合の取材陣が少ない点が気になっていたのですが、この試合に訪れた地元マスコミは0人。NYヤンキースの松井秀喜に象徴される野球人気の地域とはいえ、ユニフォーム・スポンサーになっている地元新聞も取材に来ていないとは……。

 ところで、この試合で最も印象に残ったのは、応援チャントです。

 例えば、デニスは沢田研二が歌った「TOKIO」のメロディで、
“デ~ニ~ス、デニスがボールを持ったなら、デ~ニ~ス、デニスは停まらない”

 ビジュは名曲「YMCA」(ヤングマン)風に、“B、I、J、U(ビ~、アイ、ジェイ、ユ~)”

 以前から感じていたことですが、ツエーゲン・ファンはチャント作りが上手いです。

・北信越リーグ1部、他の試合結果は以下の通り。

サウルコス福井(昨季7位) 1-2 長野パルセイロ(同優勝)
上田ジェンシャン(今季昇格) 0-3 ジャパン・サッカー・カレッジ(昨季2位)
ヴァリエンテ富山(同6位) 0-1 松本山雅(同4位)

・Jリーグを目指すクラブの動向

▼東北リーグ1部2節
(19日)
FCプリメーロ 1-2 グルージャ盛岡(昨季優勝)
塩釜FCヴィーゼ 1-0 ゼブラ盛岡
仙台中田SC 1-2 福島ユナイテッド(今季昇格)

▼北信越リーグ2部2節
(19日)
大原学園 3-2 アンテロープ塩尻 

▼関西リーグ1部2節
(19日)
滋賀FC 0-2 バンディオンセ加古川(昨季優勝) 

▼四国リーグ3節
(19日)
カマタマーレ讃岐(昨季優勝)6-1 ベンターナAC(観衆=1168人)
南国高知FC 3-0 なんこくトラスター

▼中国リーグ
(19日)
レノファ山口(昨季優勝) 1-1 元気SC(今季昇格=鳥取県)

▼九州リーグ3週
(19日)
ヴォルカ鹿児島 3-2 九州INAX
沖縄かりゆしFC(昨季優勝) 4-1 九州総合スポーツカレッジ

<写真説明>デニスのドルブル突破を網越しで鼓舞するツゲーゲン・ファン

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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