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Jを目指せ! by 木次成夫

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第149回「信州ダービー 松本山雅vs.長野パルセイロ」
by 木次成夫

 日本各地に様々なダービーがありますが、北信越リーグ、山雅ホームの「信州ダービー」は、県庁所在地の長野市への歴史的対抗意識もベースにある点で、いわば“名ばかり”ダービーとは、かなり違います。ただ、一般的に「松本→長野」に比べると、「長野→松本」の対抗心の方が低いようです。長野の人々にとっては、松本に対抗心を持つ理由が“大してない”ということでしょう。もし、例えば「長野五輪、長野新幹線……でも、Jリーグは松本(山雅)だけ」に“なりかねない”状況になれば、様相が変わるかもしれませんが――。

●7月12日
北信越リーグ1部12節
松本山雅 1-1 長野パルセイロ

 観客=6012人(600円。中学生以下無料)。入場料無料だった07年の6399人には及ばなかったものの、有料化した昨季の4126人に比べると、大幅増。開催スタジアム“アルウィン”は、最寄りのバス停から徒歩30分内外かかる上に、バスの便は1時間に1本程度にも関わらず――。言い方を変えれば、シャトルバスを出せば、もっと客数は増えたのでは? 

[11節終了時点の順位]
1位=ジャパン・サッカーカレッジ(勝ち点29、以下、JSCと略)
2位=山雅(同28)
3位=パルセイロ(同27)
4位=ツエーゲン金沢(同25)

[試合総括]
 パルセイロ・ホームのダービーも引き分けだったものの、パスワークなど“サッカーの質”という点では、パルセイロの方が上でした。しかし、今回は、不思議なくらい、パルセイロの良さが出ませんでした。

「スタジアムの雰囲気に飲まれてしまった面もあると思う」(パルセイロ関係者)。

 一見して5000人以上が山雅ファン。山雅選手は、序盤から積極的なプレッシングを仕掛けました。ただ、相手の良さを“消す”点では効果的ながら、攻撃は相変わらず。つまり、個人能力に依存する“シンプルなサッカー”。そして、パルセイロは……、“なぜか”、クリアや大雑把なロングパスを多用するなど、“らしくない”サッカーで対抗。いわば、山雅に合わせてしまいました。

[得点経過]
67分 1-0(山雅=左SB鐡戸裕史=FK直接)
82分 1-1(パルセイロ=MF佐藤大典=PK)

 山雅の得点を決めた鐡戸(26歳、前・鳥栖、J2通算45試合出場)は、6月下旬に加入した新戦力です。昨季末に、鳥栖から戦力外通告を受け、山雅加入まで、いわば浪人生活。「(出身の)佐賀大学でトレーニングをしていました」(鐡戸)とか。ブランクを感じさえないキレ味は、人格の証だと思いました。11節のサウルコス戦に続いて、スタメン出場。つまり、補強の成果が如実に出たわけです。

 ちなみに、山雅は鐡戸と同時期に以下の3人も獲得しています。

FW、栗山裕貴(20歳、前・鳥栖←ルーテル学院、J2通産4試合出場=08年)
FW、新中剛史(22歳、前・ファジアーノ岡山ネクスト←ファジアーノ岡山←びわこ成蹊スポーツ大←鹿児島城西高)
GK、信藤健太(24歳、前・アルビレックス新潟・シンガポール←筑波大←暁星高)

 鳥栖の監督は読売クラブ(東京V)出身。山雅の加藤GMとは、現役時代からの仲。そして、ファジアーノは、選手レンタルなどで東京Vと関係が深いクラブ。つまり、非常に“わかりやすい”補強です。ただ、限られた予算の有効利用策として少数精鋭を選択したクラブが、4人も獲得した意図は不可解ですが……。予算に余裕があるなら、例えば、近郊に住む子供たちなど交通弱者のために、シャトルバスを出してほしいものです。

 そもそも、JFLのMIOびわこ草津(現在6位)を筆頭にアマチュア中心のチームが大健闘している昨今、山雅は元Jリーガーなど「プロ」重視の強化策をしている点も、不思議です。ちなみに、開幕からフル出場中のDF坂本史生(加入2年目、前・東京学芸大)はアマチュア。昨季はスポーツ用品店勤務でしたが、現在は、知り合いのツテを辿って探したスポーツクラブで水泳コーチをしています。キレが良いのは、仕事も影響しているのかもしれません。

 パルセイロも、山雅同様、6月下旬に補強をしました。DF大島嵩弘(21歳、柏からレンタル)。柏のジュニアユース時代から将来を嘱望されていた選手で、U-16当時は日本代表の主軸。U-19まで日本代表に選出された実績が、あります。柏のトップ昇格3シーズン目。柏からパルセイロへは薩川コーチが出向中ゆえ、これまた“わかりやすい”補強です。山雅戦は、「3バックの右」として、前節に続いてスタメン出場。センターもサイドも“こなす”選手ゆえ、チームにとっては、願ってもないユーティリティ・タイプであり、大島にとっては、真剣勝負ができる点で、絶好のチャンス。サテライトでは味わえない経験をして、柏に帰ってほしいです。

[12節終了後の順位]
7月12日、ツエーゲン金沢 0-2 JSC(1947人)

1位=ジャパンSC(勝ち点32、得失点差+20)、2位=山雅(同29、+30)、3位=パルセイロ(同28)、ツエーゲン(同25)……。

ツエーゲンの2位以下が確定しました。次節は、7月26日。

JSC対山雅、
パルセイロ対ツエーゲン、

 JSCが勝てば、JSCの優勝が決まります。一方、山雅が勝てば、得失点差で首位になり、自力優勝の可能性が続きます。山雅の吉澤監督いわく、「ジャパンは、相当なプレッシャーだと思いますよ」。……果たして、何百人の山雅ファンがJSCに馳せ参じるかという点も注目です。


[アンテロープ塩尻対ゴールズFC]
 当初は、山雅対パルセイロの前に、2部のアンテロープ塩尻対ゴールズFCが行われる予定でした。ところが、アンテの試合は、「信州ダービー」よりも1時間早い15時から、隣のアルウィン・サブグランド開催に変更。それも、アンテの公式HPの告知は7月6日(月)付け――。

 変更理由は、代替で開催した試合で明らかですが、プリンスリーグをアルウィンで行うことにしたため。社会人連盟、サッカー協会など幹部の方々が、“アンテはファンが少ないから問題ない”と判断したということでしょうが、唖然としました。いくら、かつては“教育県”として有名だった長野県とはいえ……。なかなか経験できない、ファン無視策。ちなみに、アルウィンの「スタジアム・スポンサー」のひとつは、アンテのスポンサーにもなっている会社です。

 ところで、アンテ対ゴールズの前半、隣のアルウィンから、前座のショー(信州大学生のパフォーマンス)で使った音楽が聞こえて来ました。うち1曲は、8月1日に開催予定の祭り“松本ぼんぼん”(の歌)。一度聴いたら、外様でも忘れられない、“ほんぼん、松本、ぼんぼんぼ~ん……”。緊迫した試合をする選手の集中力を削いでも“まったく不思議ではない”メロディです。なかなか経験できない、“場違い”な状況でした。

 地域密着した前座は素晴らしいことですが、例えば、クラブ主導で「隣では、同じ長野県のアンテロープが試合をしています。選手の中には、かつて山雅でプレーした選手もいます。そこで、皆さん、隣に聞こえるように、声援を送りましょう」などとなっても、しかるべきでは?

 アンテ対ゴールズは1-0でアンテの勝利。ちなみにゴールズFCは、07年に「Jを目指す」強化をしたものの、短期的に経営破たんしたフェルヴォローザ石川・白山の“生まれ変わり”。2年前は、1部5位ながら、今や、2部最下位。対するアンテは3位。フェルヴォ時代は、数十人のファンがアルウィンを訪れ、熱い応援していましたが、この日のアンテ戦では、少なくともクラブ名などのコールは聴こえませんでした。といっても、前半しか見ることができなかったのですが……。

<写真>信濃毎日新聞が作ったキャラ、「ヤロン様」。山雅なので、ヤロン。頭の上の”山という字”が特徴。ほかに、「セロン様」(信濃グランセローズ=野球)、「パロン様」(パルセイロ)も存在します。


●Jリーグを目指すクラブの動向
・東北リーグ1部
11節(7月12日)
グルージャ盛岡(昨季優勝)9-1 盛岡ゼブラ
福島ユナイテッド(今季昇格)2-2 NECトーキン
*首位=福島U(勝ち点29 、+29)、2位=グルージャ(同29、+25)、3位=トーキン(同26)。9月6日の福島U対グルージャが事実上の優勝決定戦!

・関西1部
13節(7月12日)
バンディオンセ加古川(昨季優勝) 1-3 三洋電機洲本 
* 首位=ラランジャ京都(勝ち点25)、2位=三洋電機洲本(同25)、3位=バンディ(同21)、4位=アイン食品(同21)…

・四国
10節(7月12日)
ベンターナAC 0-3 カマタマーレ讃岐(昨季優勝)

・中国
15節(7月12日)
デッツオーラ島根 0-4 レノファ山口(昨季優勝)

・九州
13週(7月12日)
沖縄かりゆしFC 6-0 三菱重工長崎
ヴォルカ鹿児島 3-0 ヴァンクール熊本
首位=ヴォルカ(勝ち点32)、2位=かりゆし(同29)


※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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Photoニュース
7/12松本山雅vs.長野
7/12松本雑感-1
7/12松本雑感-2

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