beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第151回「北信越1部13節 松本山雅“散る!”」
by 木次成夫

上位4チームが熾烈な優勝争いを展開してきた北信越1部は、ジャパン・サッカーカレッジ(以下、JSCと略)が、1試合を残して、3年ぶりの優勝を決めました。

[12節終了時点の順位]
1位=JSC(勝ち点32,+20)
2位=山雅(29,+30)
3位=長野パルセイロ(28,+40)
4位=ツエーゲン金沢(25)
……。

●7月26日
北信越1部13節
JSC 2-1 松本山雅

観衆=717人(公式発表)。一見して、3分の2程度は山雅ファン。スタメン中、元Jリーガーは共に5人。ただ、この試合のJSCは、“元Jリーガーではない”選手の健闘が目立ちました。例えば、負傷欠場した主将のFW宇野沢祐次(26歳=2年目、前・福岡)を補って余りあるプレーを披露した、以下、前線の4人――。

MF、池川修平(20歳=2年目、前・静岡学園高、174cm)
MF、田村洋平(23歳=今季加入、前・流通経済大、170cm)
MF、山本真也(24歳、前・神戸広陵高、175cm)
FW、植田雅之(18歳=1年目、前・常葉橘高、175cm)

山雅の守備ラインコントロールに対して、JSCはサイドを広く使ったドリブル、内への切れ込み、パスワークを駆使して、“横の揺さぶり”で対抗。ボールをキープした選手に呼応して、他の選手が“受け”に入る動きは、積極的、献身的かつスピーディ。つまり、局面でのプレーに複数の選択肢があるため、山雅選手は“カットに入りたくても、入りにくい”ということ。見方を変えると、山雅はチーム全体として、前線の4人に仕事をさせる前の対応がイマイチだったということですが……。

今まで何度かJSCを見ましたが、この試合ほど、“さすがはサッカー専門学校”と感じたことは、ありません。チーム熟成が見えない山雅に比べると、JSCの進化は明らかでした。

[得点経過]
44分 1-0(JSC得点、植田)
*田村のパスを受けて、ドリブル→シュート。1年生らしからぬ、落ち着いたプレー。

64分 1-1(山雅得点、柿本倫明=PK)

75分 2-1(JSC得点、土井良太=71分に交代出場)
*土井(21歳=今季加入、前・アルビレックス新潟シンガポール、189cm)。左サイドから植田が“フリーで”センタリング→土井も“フリーで”ヘディング

[不可解な判定]
山雅は70分に、吉澤英生監督が判定に異議を唱えて、退席処分。右SB金澤慶一が「侮辱」で一発レッドカード(退場)。傍目で見ていても、それまで何度も疑問に感じる判定があったので、吉澤監督の行動は理解できます。ただ、数的不利状況になったことが、敗因ではありません。サイドでも、ゴール前でも、相手をフリーにして2失点目を喫したのは、その証。10人で“やるべき”ことを“しなかった”だけです。

また、日本サッカー界(日本社会の状況、日本語表現の特徴という点も含めて)で、一発退場に“ふさわしい”侮辱が何なのか、“まったく”想像できません。例えば英語圏やラテン系言語圏に比べると、日本語のダーティ表現はインパクトが弱いという印象も、あります。

是非、詳細を公表してほしいものです。教育機関であるジャパン・サッカーカレッジにとっても、“絶好の事例”だと思います。

[2年前を振り返って]
07年9月9日、リーグ最終節、山雅は、この日と同じピッチ、つまりアウェーでJSCと対戦しました。13節終了時点で、1位=山雅(勝ち点30、+32)、2位=JSC(28、+24)、3位=パルセイロ(28。+14)、4位=ツエーゲン(27)。得失点差を考慮すると、山雅は引き分け以上で“ほぼ”優勝、その一方で山雅が敗れれば、JSCが“ほぼ”優勝という状況でした。結果は2-2で、山雅が優勝。

17分 0-1 (JSC得点、明堂和也=現・新潟)
80分 1-1 (山雅得点、白尾秀人)
87分 2-1 (山雅得点、尾林陽介)
89分 2-2 (JSC得点、ルシアーノ佐藤)

当時、山雅を率いていたのは、今季からJSCコーチを務める辛島啓珠氏。“つなぐ”スタイルを貫いた末の2点目が印象的でした。左サイドを白尾がJSC陣内の深い位置までドリブル突破した後にクロス→CF片山真人(現・岐阜)が二アサイドで“クサビ”になって、ボールを落として→尾林がシュート。その試合と比べると、果たして山雅はライバル3チームよりも成長したのか……、疑問も感じます。

JFL昇格という至上命題が選手を萎縮させている面もあるのかもしませんが……、少なくとも、2年前の方が、選手たちはハツラツとプレーしていたのでは? 観戦していて、選手たちが目指すサッカーをイメージできたのでは? だとすれば、それは、選手たちが自信を持ってプレーをしていた証では? もしかしたら、今季は歓喜よりも安堵が多いのでは?   

●7月26日
北信越2部13節
CUPS聖籠 3-0 アンテロープ塩尻

JSC対山雅後、同じピッチで、JSC“2軍”のCUPS聖籠(カップス・セイロウ)の試合も行われました。ちなみに、CUPSは、“College of Upward Players in Soccer”の略で、発音はアクセントが語尾です。

[12節終了時点の順位]
1位=テイヘンズ(勝ち点26)、2位=CUPS(24、+20)、3位=アンテ(24、+5)……。つまり、昇格圏(1位=自動昇格、2位=入れ替え戦)“自力”確保という点で、双方にとって、重要な試合でした。

CUPS選手が「サッカー中心の生活をしている若き学生」なのに対して、アンテは「経験豊富とはいえ、仕事とサッカーを両立させているアマチュア社会人」。勝敗を決したのは、個人能力の差。つまり、チーム完成度はアンテの方が上でした。

[13節終了後の順位]
テイヘンズが大原学園に敗れたため、CUPSは首位(27)奪取。以下、2位=テイヘンズ(26)、3位=アンテ(24)……。

最終節、CUPSはゴールズFC(最下位)と対戦するので、順当に行けば、勝利=優勝。ただ、問題は、同一経営母体のチームは、同一カテゴリーのリーグに複数登録できないという規定があること。つまり、“1軍”JSCがJFLに昇格しない限り、CUPSの一部昇格は“ありえない”のです。見方を変えると、今後もJSCにとって、CUPSが良い刺激(大きなプレッシャー)になる(だろう)ということですが……。

[JSCの今後]
もしJSCがJFLに昇格した場合、近隣の人々はアルビレックス新潟と違った価値観を持って、試合を楽しんでくれるでしょうか? 様々なチームを見てきた同校生徒にとって、トップチームの悲願達成後こそ、学習成果の見せ所だと思います。言い方をかえれば、サッカー・ビジネスコースなども備えた学校全体の評価も問われるということですが……。

<写真>ジャパンサッカーカレッジのグラウンドには、地元開催の国体(国民体育大会)のPRも

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

▼関連リンク
JFL2009日程&結果

本コラム紹介クラブリスト09年
紹介クラブリスト08年以前

TOP