beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第152回「JFL後期5節 V・長崎と町田ゼルビアの現状」
by 木次成夫

JFL後期5節(8月1日、2日)を終え、Jリーグ参入条件の「4位以内」争いが熾烈になってきました。後期5節終了時点の10位までの順位は以下の通り。()内は勝ち点。

1位=SAGAWA SHIGA(46)
2位=ニューウェーブ北九州(39)
3位=横河武蔵野(38)
4位=ガイナーレ鳥取(36)
5位=アルテ高崎(35)
6位=V・ファーレン長崎(34)
7位=ソニー仙台(34)
8位=佐川印刷(33)
9位=MIOびわこ草津(33)
10位=町田ゼルビア(33)
……

4位(ガイナーレ)と、Jリーグ準加盟4チーム中最下位のゼルビアの勝ち点差は、わずか3。
両チームの対戦は終わっているので、ゼルビアは他力本願ですが、最終節でガイナーレと戦うV・ファーレンは、4位以内を自力確保できる状況になりました。

●8月1日 JFL後期5節
ジェフリザーブズ 0-1 V・長崎

V・ファーレンは前期13節(5月31日)後、成績不振を理由に東川昌典監督を解任。大久保毅コーチが監督に昇格したものの、リーグ4試合を指揮した後に辞任。結果的に、07年シーズン終了時まで監督を務めていた岩本文昭氏が監督に復帰しました。

東川監督解任時点の順位は12位。「成績不振」どころか「上々」と思っていたので、驚きました。18チーム中3チームが"Jリーグ参入"を果たしたリーグに、全国地域リーグ決勝大会2位で昇格したV・ファーレンは、いわば"17番目"ですから。

[得点経過]
64分 0-1(長崎、得点=加藤寿一)
*CK(ボランチ田上渉)→ボランチ原田武男がヘディング・シュート→こぼれ球をCB加藤寿一がダイレクト・シュート

[試合総括]
V・ファーレンは、フル出場を果たした大ベテランの原田(37歳、前・福岡、元・横浜Fなど←早稲田大←国見高)を中心に、攻守両面で安定していました。改めて、当たり前のことですが、お互いが"できること"を活かし合い、"できないこと"をカバーし合うことの重要性を実感。

つまり、原田の体力的衰えを他の選手がカバーすれば、原田のゲームメイクセンスが活きて、チーム全体の"サッカーの質"が向上するということ。見方を変えると、運動量やスピードは、"若さ"でカバーできますが、それだけでは原田のようなセンスあふれるプレーを模するのは至難。

試合中、原田がジェフ選手からボールを奪い、即座に攻撃に移行するパスを出すシーンが何回もありました。相手が"登録変更"Jリーガーが多いジェフゆえに、より印象的だったのですが、原田のプレーは、JFA(日本サッカー協会)やJクラブ、強豪教育機関のエリート教育でも"教えられないことがある"ことの証では?

例えば、以前にも書きましたが、ユース代表の遠征よりも、すべてのJクラブにジェフリザーブズのようなチームを作ることを義務化した方が効果的では? 見方によっては、同世代の日本トップクラスよりも原田のような"大ベテラン"にボールを奪われる方が屈辱的であり、逆に練習のモチベーションになるのでは?

[常務取締役兼監督]
V・ファーレン監督に復帰した岩本氏は国見高校出身の41歳。同高時代はスピード抜群のアタッカーで、全国選手権などで活躍。その後、駒澤大学に進学し、卒業後は長崎県内の銀行に就職。07年シーズンまでは仕事と監督の両立。08年は、監督解任されたものの、出向で事業部長。そして、今季は退行(退社)して、V・ファーレン常務取締役に就任――。

国見高校"黄金時代"の先駆者であり、V・長崎"立ち上げ"からの「主役の1人」とはいえ、クラブ経営幹部であると同時にトップチーム監督という立場は、あまりに過酷では? とは思います。

[帰路はバス]
ジェフ戦は16時キックオフ(市原臨海競技場)。試合後、V・ファーレン選手たちは、バスで帰路に着きました。往路は飛行機、帰路はバス。経費削減策の一環でしょう。バスの運転手いわく「(長崎から市原に)来る時は17時間かかった」とか。

●8月2日
町田ゼルビア 1-1 MIOびわこ草津

[得点経過]
56分 1-0(ゼルビア=山腰泰博)
*右サイド、FW蒲原達也(25歳、前・鳥栖)がMIOのDFを"背負いながら"ゴール前にパス→山腰ダイレクト右足

86分 1-1(MIO=谷口洋平)
*ゼルビアのミスに乗じてボールを奪ったMF壽健志(後半交代出場、26歳、前・近畿大←G大阪ユース)がクロス→DF谷口(24歳、前・滋賀FC)がヘディング・シュート

[試合総括]
優勢に進めながらも、一瞬の隙で失点してしまうという"ゼルビアらしい"試合でした。シュート本数、ゼルビア10本(前半6本、後半4本)、MIO2本(後半2本)。スタメン平均年齢、ゼルビア=25.4歳、MIO=23.6歳。試合前、どちらかというと、若い選手が多いMIOが運動量を生かして、優勢に進めるだろうと予想していたのですが、実際は逆。試合運びでMIOの"若さ"が露呈してしまいました。

「仕事とサッカーの両立」
両チームの出場選手中、プロはゼルビア=1人(蒲原)、MIO=1人(CB石澤典明=24歳、神戸からレンタル)だけ。つまり、元Jリーガーを含めて、ほとんどの選手が仕事とサッカーを両立させているわけです。

例えば、ゼルビアCB深津康太(24歳=今季加入、前・岐阜)――。流通経済大学柏高校出身、例えば、松本山雅のSB阿部琢久哉(前TDK←駒澤大=4年次レギュラーとして、インカレ制覇)と同級生です。

高卒後、名古屋グランパスに加入。その後、水戸、柏、岐阜でプレーし、昨季終了後に岐阜から戦力外通告。クラブ経営難ゆえ「世代交代するとは言われていましたが、若手の中では一番、試合に出ていたので、(戦力外通告は)予想もしませんでした。それも、いきなり紙1枚(の通告)でしたから」(深津)。

現在、深津はクラブ・スポンサーでもあるリフォーム関連会社"イーグル建創"勤務。「太陽光発電器具の営業をしています」(深津)。ゼルビアの知名度が高まり、他社よりも優位な営業活動ができれば、選手雇用側の企業は、幸い。スポンサー形態の現実的見本だと思います。とはいえ、Jリーガーから、いきなり、営業マンの日々は……「大変ですけど、毎日、玄関のブザーを押すことから、(営業活動を)始めています」(深津)。

引き締まった肉体と、安定したプレーが、"人生選択の答"と言えるでしょう。

「来季はJリーガーに戻りますから、よろしくお願いします」(深津)

[Jを目指すクラブの現実]
チームの作り方は様々ですが、強豪大学の有無、一般雇用状況など、地域事情も影響すると思います。つまりスポンサー形態を含めて、地域全体の総合力が問われるわけです。
そして、選手たちに問われるのは、仕事や移動など、プレー以外でも頑張れる(耐えられる)メンタリティでは?

<写真>試合後、笑顔を見せるV・ファーレン主将、原田武男(37歳)


●Jリーグを目指すクラブの動向

・北信越リーグ1部
14節(最終節)
ジャパン・サッカーカレッジ 2-4 長野パルセイロ
松本山雅 0-3 ツエーゲン金沢(観客=2334人)
ヴァリエンテ富山 2-1グランセナ新潟
上田ジェンシャン 2-0 サウルコス福井

(最終順位)
優勝=JSC(35)
2位=パルセイロ(31、+45)
3位=ツエーゲン(31、+40)
4位=山雅(29)
5位=サウルコス(10、-25)
6位=グランセナ(10、-40)
7位=ジェンシャン(8)
8位=ヴァリエンテ(7)

・九州リーグ15週
沖縄かりゆし 8-0 ヴァンクール熊本


※本コラムは毎週火曜日更新予定です。感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

▼関連リンク
NEWS:ジェフリザーブズvs.長崎
町田vs.MIO

本コラム紹介クラブリスト09年
紹介クラブリスト08年以前

TOP