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Jを目指せ! by 木次成夫

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第153回「JFL後期第6節:4位以内争い混戦中」
by 木次成夫

 冒頭の写真は、ニューウェーブ北九州のMF、佐野裕哉(27歳、前V・ファーレン長崎←湘南←東京V)です。ユニフォーム胸スポンサーの位置には、「TEAM KITAKYU」という文字が――。開幕当初は単独企業名が着いていたのですが、前期末に変更。複数の企業が「共同スポンサー」になったということです。

“地域全体でクラブを支援している”思いが伝わってきます。不況ゆえの“苦肉の策”かもしれませんが、日本各地、多くの「Jを目指すクラブ」にも参考になる(パクるべき)妙案では?

8月9日
JFL後期6節
流通経済大学 1-1 ニューウェーブ北九州

[人生いろいろ。チーム作りも、いろいろ]
NWのスタメンは以下の通り。平均年齢、29,4歳。20代中盤選手を中心にして“Jを目指す”チームが多い中、独特です。

GK、水原大樹(34歳=3年目、前・東京V)
右SB、重光貴葵(26歳=今季加入、前・ファジアーノ岡山←東京V)
CB、片野寛理(27歳=今季加入、前・佐川印刷←栃木SC)
CB、伊藤琢矢(35歳=今季加入、前・ファジアーノ岡山)
左SB、冨士祐樹(28歳=2年目、前・徳島ヴォルティス)
ボランチ、桑原裕義(37歳=4年目、前・ファジアーノ、元・広島など)
右MF、関 光博(27歳=今季加入、前ロアッソ熊本)
左MF、日高智樹(29歳=7年目、前・福岡教育大学)
トップ下、佐野裕哉(27歳=2年目、前・Vファーレン長崎←湘南←東京V)
FW、中嶋雄大(24歳=3年目、前・福岡教育大学)
FW、長谷川太郎(29歳=今季加入、前・横浜FC)

 出場しなかったものの、ベンチには以下の2大ベテランも健在でした。

MF、小野信義(35歳=4年目、前・横浜FC←V川崎=現・東京Vなど)
FW、藤吉信次(39歳=3年目、前・琉球、元・V川崎=現・東京Vなど)

[得点経過]
59分 1-0(流経=フランク・ベロカル)
*MF千明聖典(22歳、前・流通経済大柏高)→MFベロカル(21歳、前・青森山田高)

70分 1-1(NW=日高智樹)
*関→佐野→日高

[試合総括]
後期5節終了時点で、NWは2位。対する流経は14位。NWからすれば、“格下との引き分け”ということになりますが、前期17節以降4勝2分という好成績を残してきたチームらしい、安定感のある内容でした。序盤から、大ベテランの桑原を中心に、丁寧なポゼッションと大胆なアタックを織り交ぜた、多彩な攻撃を展開。いわゆる“攻撃疲れ”後の隙を突かれて、先制されたものの、粘り強い“つなぎ”で同点に――。

 いわば“現在、学習中”の流経に比べると、NWは“現場(修羅場)で培った”職人芸。流経は、リアクション・サッカーという点では、修正能力(適応能力)の高さを発揮しましたが、自分たちで試合を組み立てるという点では、経験不足が露呈。NW選手が“できる”ことと“できない”ことを判断“できる”のに対して、流経選手は“できる”ことも躊躇してしまったという感じです。

 また、NWからすれば、一般的に、ベテランの夏バテ(蓄積疲労)が懸念される一方、学生チームが熟成してくる時期に、優勢に戦いきれたことも、価値があると思いました。

 ちなみに桑原はフル出場。95年に広島でJリーグ・デビューを果たし、J1通算259試合、J2通算16試合のリーグ戦出場経験を誇る重鎮は、健在です。

[地域リーグ→JFL→Jリーグに向けたチーム作り]
 今季のNWは「26人中21人がプロ契約」(NW関係者)。06年に桑原ら4人とクラブ史上初のプロ契約をしてから、4シーズン目。アマチュア選手への雇用先紹介、プレー手当の支給など、徐々に待遇改善して、現在に至っています。すでに、選手用の寮設備もあり、クラブ関係者の1人いわく「うちの家内が、食事を作っています」とか――。

 JFL昇格後、経費削減のために、アウェー時はサブを限度よりも2人少ない5人に絞っていましたが、後期2節からは7人に変更しました。

 そんな中、この試合で得点を決めた日高は、03年加入の7年目。06年の主将ながら、JFL昇格を決めた07年は“控え”になることも多かった選手が、今や、Jリーグに最も近いチームのレギュラーとして活躍するとは……、まったく、想像できませんでした。

 桑原ら他の選手にも言えることですが、改めて、選手の成長、衰えは様々だと痛感しています。同時に、選手の潜在能力を短期的判断で見誤るクラブも、あるのでは? という疑問も感じます。それは、目には見えにくいリーダーシップ能力を含めて――。

「うちは、人格的にも、しっかりしたベテランが多いので、若手や中堅も、見習わざるをえないんですよ」(NW関係者)

[後期6節終了時点、上位10チームの順位]
()内は勝ち点。

1位=SAGAWA SHIGA(49)
2位=ニューウェーブ北九州=J準加盟(40)
3位=ガイナーレ鳥取=J準加盟(39)
4位=横河武蔵野(38)
5位=ソニー仙台(37)
6位=MIOびわこ草津(36)
7位=ジェフリザーブズ(36)
8位=V・ファーレン長崎=J準加盟(35)
9位=アルテ高崎(35)
10位=町田ゼルビア=J準加盟(34)

“Jリーグ準加盟を目指す”MIOの健闘が光りますが、5節のMIO対TDK戦の観客数は722人(公式記録)。「相対的に強くなればファンが急増する」とは限らないのが、サッカーの難しいところです。

<写真>ニューウェーブ北九州MF佐野裕哉


●Jリーグを目指すクラブの動向

・九州リーグ
16週
海邦銀行SC 0-2 沖縄かりゆし 
ヴォルカ鹿児島 4-1 新日鐵大分
*首位=かりゆし(勝ち点35)、2位=ヴォルカ(35)。かりゆしとヴォルカの2位以内が確定

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

▼関連リンク
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本コラム紹介クラブリスト09年
紹介クラブリスト08年以前

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