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[FANATICインタビューVol.2]国士舘大サッカー部の寮でひっそり追い続けた夢~デザイナー大谷友之祐さん~

 アディダスが主催する「FANATIC Tokyo2016」が6月4日にしんよこフットボールパークで開催された。アパレルブランドやニュースメディアなど32チームが集う中、参加プレイヤーにインタビューを実施した。第2回は、デザイナーの大谷友之祐さん。その類まれなサッカーヒストリーを紹介する。

 サンフレッチェ広島のジュニアユースを経て、瀬戸内高、国士舘大へ。幼い頃からサッカーエリートへの道を順調に歩んできた大谷友之祐さん(23)。しかし、彼はプロサッカー選手への夢を断ち切り、現在はデザイナーとしての活動に励んでいる。

「今はほとんどサッカーをやっていないですね。別に避けているわけではないんですけど、最近はプレーをする機会がなくて……。だから今日の『FANATIC』では、久々に仲間とボールに触れられてすごく楽しいです」

 小学生時代は地元・広島の地域スポーツ少年団に所属。4年生のときに開催された2002年日韓W杯では、世界各国の攻撃から日本のゴールを守るゴールキーパーというポジションに魅せられた。

「キーパーしか目に入らなかったですね。プレーは決して派手じゃないけど、落ち着いてゴールマウスを守る姿がすごくかっこよくて……」

 それ以降、大谷さんはゴールキーパーひと筋だった。広島ジュニアユースのGKセレクションに合格し、週3日の練習に土日の試合と、生活のほとんどをサッカーに捧げた。

「それまでとは環境がガラリと変わりました。充実した施設で、キーパー専門のコーチにプレーを教えてもらって。反面、気弱な僕はカルチャーショックも受けましたね。県中の小学校から優秀なプレイヤーが集まって、一斉に『俺が、俺が!』ですから。正直、ちょっと引いちゃって(笑)。でもその環境が精神力を養ってくれました」

 そして、破竹の勢いでサッカー強豪校へ成長していた瀬戸内高へ進学。初のインターハイ出場、国体5位入賞、地区対抗戦中国地方代表全国1位。常にスタメンとしてゴールマウスを守り、華々しい結果を残して国士舘大へ進学を果たす。しかし、その頃から大谷さんのサッカーに対する想いが少しずつ変わり始めた。

「大学では4年間トップチームにいながら、なかなか試合に出ることができませんでした。僕の学年には、特に優秀なキーパーが多く集まっていたんです。少しでもミスをすれば、すぐに交代させられる、そんな神経を磨耗する日々の中で、少しずつサッカーが肌に馴染まないような感覚にとらわれ始めました。特にキーパーは一番孤独で、一番メンタルが強くなきゃいけないポジション。ネガティブになった途端、一気に自分のプレーができなくなってしまったんです」

 シビアに将来を見据えたとき、どんなに優れたプレイヤーでも、毎年プロになれるのはごく限られた人数しかいないという厳しい現実にも直面した。大学3年生を迎えたころには、サッカーでプロになろうという夢はすっかり消えていた。そんな大谷さんを救ったのが、デザインの世界だ。

「実は小さいころから絵を描くのが大好きで、大学に入ってからも、練習と授業の合間を縫って、時には一晩中、寮でイラストを描いていたんです。仲間には『国士舘まで来て、なに絵なんて描いてんの?』とからかわれていました。でも気にならなかった。むしろ、学校とグラウンドと寮を行き来するだけの小さな世界が、僕には窮屈だったんです」

 大学4年生を迎えようとする春休み、一念発起してデザインスクールの短期コースへ入学。デザインの知識を学びながら、さまざまな展覧会やエキシビションを見て回った。大谷さんにとってデザインスクールへの入学は、就職活動を見据えての真剣な挑戦だった。

「監督には猛反対されました。部活を辞めると勘違いされたみたいで。でも、反対を振り切って通い続けました。監督とはその後、ちょっとぎこちなくなっちゃいましたけどね」

 4年生も半分が過ぎたころ、キーパーコーチが変わった。途端に大谷さんは先発で試合に出場できるようになる。

「自分で言うのも照れますけど、かなり活躍できたんです。監督にも『大谷がいなければ試合に負けていた』と褒めてもらえた。それでサッカーに対する気持ちは完全に吹っ切れました。“最後に恩返しすることができて良かった”“これで気持ちよく卒業できるな”と思いました」

 大谷さんの就職活動は実り、晴れて憧れのデザイン事務所への入社が決まった。寮でイラストに没頭する大谷さんをからかった同級生の中には、プロを断念し、途方に暮れる者もいたという。進む道が決まっていることを、多くの仲間からうらやましいと言われた。

「今はサッカーに対する未練はまったくありません。仕事が楽しくて仕方ないんです。だけど、あれだけ苦しい思いをしながら続けてきたサッカーを、過去の思い出で終わらせたくはない。いつまでもサッカーが楽しめる身体をキープしたいし、将来はサッカー関係のデザインの仕事もしたいんです。『FANATIC』をきっかけに、今後は思い切り楽しんでサッカーと関わっていけたらいいなと思っています」

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(取材・文 波多野友子)