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プレミア“独走首位”鳥栖U-18はクラセン8強敗退…圧巻ポゼッションも5バック崩せず、10番主将MF福井太智「もっと怖い選手に」

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MF福井太智(3年)

[7.30 クラブユース選手権準々決勝 鳥栖U-18 0-1 横浜FCユース 前橋フA]

 高円宮杯プレミアリーグWESTで首位を走るサガン鳥栖U-18の夏は、全国ベスト8の成績で幕を閉じた。ボール保持率70%を上回っていそうな圧巻のポゼッションで相手を押し込み、サイドからのクロスやセットプレーで迫力ある攻勢も展開したが、5-4-1で構える横浜FCの守備陣を前にノーゴール。田中智宗監督は「相手のいい守備に“してやられた”ゲーム」と総括するしかなかった。

 5バックで守る相手をいかに崩していくか——。ボール保持に強みを持つチームにとっては永遠のテーマと言えるが、その課題はプレミアリーグWESTの首位を独走する今季の鳥栖も無縁ではなかった。

「今年はこういうゲームがすごく多い。引かれた相手、5枚で守ってくる相手にどうゴールを奪うかが難しい課題。こういう試合が増えているからこそ、自分たちでどうテクニックで剥がしていくかが課題になっている」(田中監督)

 過去のシーズンでは縦へのダイナミックな展開を持ち味としてきた時期もあった鳥栖が、今季はU-19日本代表MF福井太智(3年)をはじめ、MF坂井駿也(3年)、MF楢原慶輝(3年)とテクニックのある選手が並ぶ中、「ゴールを目指すために取っている」(田中監督)というポゼッション戦術。その脅威は広く知れ渡り、全国大会の舞台でも守備ブロックを固めてくるチームは少なくない。

 準々決勝で対戦した横浜FCユースも同様だった。4-3-3でサイドに幅を広く取りながらテクニックある選手が中央で絡む鳥栖の攻撃に対し、横浜FCは徹底的に中を通させないように封鎖。またサイドへの展開にはウイングバックやストッパーが出足良く対応し、常にインターセプトからのカウンターを狙い続けていた。また鳥栖のポゼッションを支える即時奪回に対しても、システムのギャップを突いた前進ができるようプランを持っていた。

 試合後、小野信義監督は「鳥栖さんのグループリーグの試合を見て、ボールを握られるシーンはあるだろうという中で、プランとしては引きすぎないよう、ゴール前だけの守備にならないようにしようとしていた」と入念な分析を明かし、最終ラインでチームを支えたDFヴァン・イヤーデン・ショーン(3年)も「夜のミーティングだったり、オフに全員で映像を見て分析できていた。思い通りに守備で外に逃せて、自分たちの思うようなサッカーができて勝ててよかった」と振り返っていた。

 とはいえ、この鳥栖の戦い方がプレミアリーグで大きな成果をもたらしているのも事実。またJリーグで活躍することを目指す選手たちの将来を考えても、個人の長所を活かした戦いをするのであれば、いつかは直面する課題であり、ここで向き合い続けることに大きな価値があるはずだ。

「一番はまずJリーグでたくさんの選手が試合に出られるようになってほしい。プレミアリーグはJリーグのメンバーに入れなかった選手、試合に出場できない高校生が出場するリーグだと思っている。トップチームに呼ばれる選手がたくさん出てほしい。プレミアリーグの中ではチャンピオンシップを目指してやっていきたいが、一番の目的はトップのゲームに絡むこと。選手がリーグ戦の中で切磋琢磨しながら、トップチームを目指す場にしていきたい」

 鳥栖の選手育成についての考え方をそう明かした田中監督は、今後の改善策について「クオリティーのところ」と断言。「人がいても30cm、50cm離れていてもボールは通せる。そこのコントロールなど細かいところのクオリティーは追求していかないといけない。よりトップに近づいていく中で、時間と場所が限られた中でプレーするのにそこは欠かせない」とスキル向上を求めていた。

 その感覚は選手たちも同様だ。試合後、この日の敗戦について「自分らのボールを握る時間が長い中、相手のセットプレー一本で負けてしまって、相手の狙いどおりというか、負けるべくして負けた」と悔やんだ福井主将は「ゴール前のクオリティーがまだまだ足りない」と指摘。「相手が5枚という中で、人数が多かったのもあった中、自分がもっとボールに関わり続けて、直接的にゴールに関われればもっと良かった」と自らに矢印を向けていた。

 U-19日本代表の福井は来年のU-20ワールドカップを目指すメンバー。普段はトップチームでのトレーニングを中心に行っているが、夏の連戦を強いられるこの大会に将来のビジョンを持って臨んでいた。

「体力の部分もそうだし、連戦が続く中でどれだけ自分のクオリティーを出せるかがこの大会でとても大きい。代表でも連戦があるし、これから先ワールドカップに出るとなった時、これより高い強度で連戦が続くと思うので、この大会でどれだけ自分のクオリティーが出せるかを頭に入れて臨んだ」

 だからこそ、「もっと結果を出したかったし、悔しい気持ちでいっぱい」と福井。3ゴールを奪った今大会で得たものを次につなげるべく、「この大会はゴールに関わることができたし、自分がボールを触って上手いだけの選手にならないように、怖い選手になれるように意識していきたい」と前を向いた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】第46回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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