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“大黒柱”出停で「決められるのは自分しかいない」193cmヴァン・イヤーデンが決勝弾!! 堅守続く横浜FCユース、優勝候補・鳥栖破って史上初の4強入り

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横浜FCユースがベスト4

[7.30 クラブユース選手権準々決勝 鳥栖U-18 0-1 横浜FCユース 前橋フA]

 日本クラブユース選手権(U-18)大会は30日、準々決勝を行い、サガン鳥栖U-18(九州1)を1-0で下した横浜FCユース(関東2)がクラブ史上初のベスト4進出を決めた。大黒柱のDF池谷銀姿郎主将(3年)が出場停止という緊急事態の中、代役ゲームキャプテンのDFヴァン・イヤーデン・ショーン副主将(3年)が獅子奮迅の大活躍。今大会ここまで4試合1失点の堅守で鳥栖の攻撃を阻むと、セットプレーの流れから試合を決める自ら決勝点を沈め、見事にクラブの歴史を動かした。

 ボール保持率では圧倒的な劣勢を跳ね除けての4強入りだった。

 序盤から鳥栖が一方的にボールを握り、5-4-1の守備ブロックで耐える時間が続いた横浜FC。小野信義監督は「鳥栖さんのグループリーグの試合を見て握られるシーンはあるだろうという中で、プランとしては引きすぎないよう、ゴール前だけの守備にならないようにしていた」と振り返りつつも、「もう少し高い位置から守備を始めようとしたけど、前半の始めからなかなかできない時間が長くなってしまった」と苦戦を感じていたという。

 それでも猛暑のため設けられていたクーリングブレイクを使っての修正も試みながら、前半を0-0で終えることに成功。なかなか反撃に出ることはできずにシュートこそ0本に終わったが、徐々にウイングバックのMF高塩隼生(3年)とMF清水悠斗(3年)が積極的に奪いに出るシーンも見られるなど、後半に望みを残す内容となった。

 すると後半2分、横浜FCはGK西方優太郎(2年)のゴールキックから最初の見せ場をつくった。鳥栖のハイプレッシャーに屈さずに短く出し、狙いを持ったパスワークを展開すると、次々にプレスをかわして局面を打開。「鳥栖さんの守備は4-4-2っぽい形で、自分たちが3-4-3。どこにミスマッチができて、どう運んでいくかは狙っていた。ウイングバックでフリーになって、ボランチを経由して、逆サイドへというところがうまくいった」(小野監督)。そのまま左サイド深くまで攻め切って左CKを獲得した。

 横浜FCにとってセットプレーは大きな武器。この日は28日のラウンド16札幌戦(○3-1)で退場処分を受けた池谷が出場停止だったため、“二枚看板”の片割れを欠く形となったが、そのぶん燃えていたのがヴァン・イヤーデンだった。DF中村琉聖(3年)のキックはファーサイドに流れたが、右で待っていたMF永田滉太朗(2年)がクロスボールを供給。これをDF林賢吾(2年)がかすかにそらし、最後は193cmの長身を活かした代役キャプテンが胸でふわりと流し込んだ。

「決められるのは自分しかいないし、キックも自分を狙って蹴ってくる。チームを勝たせられる点を意識していた」(ヴァン・イヤーデン)

 その後は鳥栖がU-19日本代表MF福井太智(3年)やMF楢原慶輝(3年)らを中心とするパスワークとサイドからのクロスボール、FW今村元紀(3年)のロングスローで攻勢を強めていく中、ますます横浜FC守備陣の集中力はアップ。「後半は慣れたのもあって、フリーで入らせるようなことがなくなって守備が安定した」(小野監督)。ひたすらボールを握られる流れは続いたものの、一つ一つのインターセプトでも選手たちから雄叫びが挙がるなど、守り勝つ姿勢をチーム全体が共有していった。

 なんとか追いつきたい鳥栖は後半アディショナルタイム2分、本職CBで186cmのDF大場章太郎(1年)を最前線に投入し、パワープレーをスタート。冷静なサイドへの展開も交えながら、最後の最後まで同点ゴールを狙いにいった。だが、ラストプレーのクロスボールはGK西方の果敢なパンチングで処理され、そのままタイムアップ。両チームの選手がピッチに崩れ落ちる猛暑の死闘は1-0で横浜FCに軍配が上がった。

 現在プレミアリーグWESTで首位を走っており、優勝候補の一角とみられていた鳥栖は8強で無念の敗退。田中智宗監督は「ボールを握ることはできたと思うが、怖いところに入れていけなかった。ゴールに近い選手にボールが入っていかず、話はしていたがゲームの中で改善にできなかった」と課題を指摘しつつ、「相手もあってのことなので相手のいい守備にしてやられたゲームだと思う」と横浜FCの守備に称賛を送った。

 一方、横浜FCはグループリーグ3試合に続いての無失点勝利。主将不在という危機を乗り越え、またも堅守が光った。指揮官は「キャプテンがいなくなって難しいゲームになると思っていたが、代わりに入った選手が集中してくれて、自分の持っているものを表現できていた」と池谷の代わりにピッチに立った林をねぎらいつつ、「プレミアリーグでは得点は取れているけど、失点がすごく多かった(※リーグワースト2位の27)。どう多いかというと立ち上がりとカウンター。そこが改善できつつあり、成長できている」と今大会1失点の守備に手応えを語った。

 次の相手はセレッソ大阪U-18(関西2)に決定。プレミアWESTでリーグ最多31得点を記録し、今大会でも最多の13得点を挙げている破壊力あるチームだ。横浜FCはC大阪U-18とグループリーグ第3戦でも対戦し、4-0で圧勝。しかし、双方ともにターンオーバー構成で臨んだ一戦とあり、今度は出場停止が明ける池谷も含めてフルメンバーで決着をつける形となる。

「やり方はなんとなくわかるけど、自分たちのやってきたことがどれだけ出せるか。守備で押し込まれる時間はあるけど、それも含めて自分たち。自分たちが攻撃を構築する時間をどれだけ作れるか、そして耐えられる時に耐えられるか」。

 そうテーマを掲げた横浜FC・小野監督は「ここまでベスト4を一つ目標として、狙ってやってきた。準々決勝の相手が鳥栖で、『自分たちの力を試せるね』ということでやってきた。ただここでやり切ったというのではないし、優勝を目標にやっていく」ときっぱり。8月1日の準決勝に向けて「『ここから俺たちは何ができるのか』というのを示せるようにやっていきたい」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】第46回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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