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[関東1部]「土台がしっかりすればどこにも負けない」全国へ後のない技巧派軍団・筑波大が逆転勝ち

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[10.20 関東大学リーグ1部第17節 筑波大 2-1 東京学芸大 味スタ西]

 第86回関東大学サッカーリーグ戦関東1部リーグ戦は20日、第17節1日目の4試合を行い、味の素スタジアム西競技場(東京)の第1試合では7位の筑波大と最下位の東京学芸大が対戦。全日本大学選抜MF上村岬(3年=磐田U-18)の決勝ゴールによって筑波大が2-1で逆転勝ちした。

 全日本大学選手権出場圏内の4位以内へ負けられない筑波大が踏みとどまった。試合は前半、「相手が凄くリスクを負って前に出てきていた」(筑波大・上村)という東学大がセカンドボールを支配するなど好守からのスピード感ある攻撃で筑波大ゴールを脅かす。10分には全日本大学選抜MF茶島雄介(3年=広島ユース)の左CKからCB藤井航大(4年=鹿島ユース)が決定的なヘディングシュート。筑波大はDFがゴールライン上でクリアしたが、東学大は15分にもMF佐藤聖(2年=三菱養和SCユース)のインターセプトから茶島が右足シュートへ持ち込むなど、茶島とMF山崎直之(3年=F東京U-18)を中心にボールを動かしてシュートシーンをつくり出す。

 下がっている相手に対してロングボールが増えてしまうなど、なかなかテンポのいい攻撃をすることができない筑波大は31分に右サイドを抜け出したFW赤崎秀平(3年=佐賀東高)のダイレクトの落としから上村が右足シュート。決定機をつくったものの、先にスコアを動かしたのは東学大だった。39分、茶島の左FKをファーサイドのFW岡卓磨(3年=徳島ユース、前・徳島ヴォルティス)が頭で逆サイドのゴールネットへ流し込むファインゴール。主導権を握っていた東学大がリードを奪って前半を折り返した。

 だが、後半開始前の円陣で「ダメでも自分たちらしく、つないで攻めよう」と意識を徹底させた筑波大は後半、ファーストチャンスで同点に追いつく。2分、左サイドで上村からのパスを受けたMF曽山慶太(3年=アミーゴス鹿児島U-18)がスピードでDFを振り切り、ラストパス。これを中央のMF中野嘉大(2年=佐賀東高)が難なくゴールへ押し込んで1-1とした。

 追いついた筑波大はボールを丁寧に動かして波状攻撃を繰り出す。7分には上村の絶妙なラストパスから赤崎が決定的な右足シュート。26分にも上村のループパスに赤崎が反応する。粘り強く守った東学大もカウンターから決定機をつくり出すが、筑波大は「裏に結構シンプルにボールを放り込んできたり、どちらかというとスピードとかパワーの勝負になって、相手には高くて速い選手もいたんですけど、走り負けないようにやっていました」という全日本大学選抜CB車屋紳太郎(2年=大津高)やGK神舎宏(3年=広島皆実高)の好守で勝ち越し点を与えない。

 そして1-1で迎えた36分、筑波大は中野からのパスを右中間で受けた上村がDFとの1対1からわずかに右にボールを動かし、股間を射抜く狙い通りの一撃。「右足(シュートのコース)を切られているのは分かっていたんですけど、最初から(右側へ)一個出して股を狙おうというのは考えていた。動かすことでGKも動くので、股とコースも空くと思った。そうして打ったら、上手くいきました」。GKの反応も遅らせた技ありのゴールが決勝点となった。

「いい内容にこだわり過ぎているところもあるんですけど、自分たちが目指しているのはそこ。いい内容のサッカーが出来れば、内容もついてくると思う。そこはいい内容にこだわりたい」。車屋が口にするに筑波大の魅力は、こだわって磨いてきた技術の高さを表現したサッカー。加えて今季は清水エスパルス加入内定のFW瀬沼優司(4年=桐光学園高)を擁し、2、3年生にも全日本大学選抜のMF谷口彰悟(3年=大津高)、上村、赤崎、車屋と4人の全日本大学選抜を抱えるなど個のレベルも高い。だが、結果が伴わなかった。前期は開幕3連勝を飾りながらも風間八宏監督の退任の影響もあり、失速。後期開幕前に行われた天皇杯で鹿島アントラーズに1-7で大敗したこともチームのダメージとなった。後期開幕戦こそ慶應義塾大に8-1で大勝したが、その後3連敗を喫して後がなくなっていた。

「見てて腹が立つ」「勝つ気持ちがあるのか」。闘争心が表に出てこないチームに対しては周囲からそのような声もあったという。0-2で日本体育大に敗れた試合後にはチーム内の危機感も抑えられなくなった。上村は「どう見ても、自分たちの方がボールを持っているし、チャンスを作れているはずなのに、何故戦えないかというと一人ひとりの向上心だったり、試合をするのに戦いに行くという気持ちがなさすぎた」。思いをコーチにぶつけ、ミーティングでチームメートと話し合った。ようやくメンタル面の“土台”ができてきたチームは神奈川大、東学大に1点差で連勝。上位陣と対戦する終盤戦へ全国へのチャンスを残した。

 上村は「土台がしっかりして自分たちの技術だったり、戦術を加えていけば、本当に負けないと思うんですけど、自分たちは土台の部分が弱い。メンタルの部分だったり、大事なところを時々見失うことがある。ただ、そこがしっかりすればどこにも負けないと思う。あとは全部上位との対決なので全部勝っていくしかない。自分たちの真価が問われている。ここで勝っていく力があれば、日本一にもなれるチームになっていくと思う」。4位・中央大との勝ち点差は4。しっかりとした土台を築く「強くて上手い」筑波大が逆転での全国切符獲得を成し遂げる。

[写真]後半36分、筑波大MF上村が決勝ゴール
(取材・文 吉田太郎)
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