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引退セレモニーをした千葉MF坂本「指導者として戻って来たい」

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 チームを支え続けてきたミスター・ジェフが、ユニフォームを脱ぐ。天皇杯4回戦の福島ユナイテッド戦の終了後、引退セレモニーを行ったジェフユナイテッド千葉のMF坂本將貴は、目に涙を浮かべ「今季限りで現役を引退することを決意しました」と挨拶し「このフクダ電子アリーナに指導者として戻るために、頑張っていきたいと思います」と、宣言した。

 試合後に引退の理由を問われた坂本は「現役を続けたい気持ちもありましたが、最終的には、このクラブへの愛着から決意しました」と、語った。振り返れば坂本は、そのキャリアを通じて『ジェフ愛』を叫び続けた。00年に千葉に加入すると、01年にはJ1優秀新人賞を獲得。04年からはミスター・ジェフこと中西永輔の後を継ぎ、背番号2を着けた。05年にはクラブ初のタイトルであるナビスコ杯優勝に貢献し、翌年には連覇を達成。中心選手、そして精神的支柱として、クラブの黄金期を支えてきた。

 極め付きは08年シーズン前の決断だ。07年シーズンを前に新潟へ完全移籍した坂本は、全34試合に出場し、新潟を過去最高の6位に導いた。ところが08年シーズンの開幕前に千葉からのオファーが届くと、悩み抜いた末に千葉への復帰を決意した。09年にはクラブ史上初の降格という屈辱にもまみれたが、その後もチームに残り、常に全力で戦い、選手たちを引っ張ってきた。この日の引退セレモニーには登場しなかったが、かつてのチームメイトであるFW巻誠一郎(現東京V)、MF下村東美(現湘南)、FW林丈統(現大分)といった選手たちがフクダ電子アリーナに駆け付けたのも、彼の人柄ゆえだろう。

「今年引退を決めた中山さんとは『隊長』つながりですし、湘南の坂本選手とも『坂本』つながりがあるので、そういう絡みでも取り上げてもらえると嬉しいですね」と、冗談を飛ばした坂本隊長は、千葉を監督として率いるという新たな目標を口にした。「いずれは、このチームを率いたい。強かったころのジェフを知る一員として。J2で3年間低迷していますが、もっと大きなクラブになるべきだし、自分も与えてもらった恩を返していきたい。夢がないとつまらないので、Jの監督として戻ってきたいです」。

 この日、クラブは天皇杯を勝ち進んでいるにもかかわらず、来季の人事を発表した。ある記者は「坂本選手の引退を取り上げるスペースが減っちゃったよ」とボヤいていた。このタイミングでの発表には、さまざまな理由があるのだろう。それでも、功労者の引退セレモニー報道が、消えしまうのは残念なことだ。

 千葉のことを誰よりも考え、『隊長』の愛称で親しまれてきた男は、J1復帰を目指すクラブにとって不可欠な存在だ。クラブに残ることは決まっているが、「まだ、具体的に何をするかは決まっていない」と坂本は明かす。クラブが第2のキャリアに、どのような役割を与えるのか。まずは注視し、期待したい。

(取材・文 河合拓)

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