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[横山杯]仲間たちに示したトップチームの「基準」、来季の日本一狙う市立船橋が完勝V!

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[12.29 横山杯ファイナルマッチ 埼玉栄高 0-3 市立船橋高 矢田部サッカー場A面]

 「横山杯 第15回全国ユース招待サッカー大会」1st Divisionは29日午後、矢田部サッカー場A面(茨城)で決勝を行い、市立船橋高(千葉)が3-0で埼玉栄高(埼玉)に快勝。06年以来3度目の優勝を飾った市立船橋は副賞のフランス遠征の権利を獲得した。なお、大会MVPには市立船橋のMF椎橋慧也主将が選出された。

 このファイナルゲーム、市立船橋は横山杯の他のカテゴリーの大会に出場していた全部員が会場に集結し、ピッチサイドから試合を見つめていた。その中、現時点での市立船橋のトップチームに当たる11人が、トップチームの「基準」を見せつける。「自分たちがトップチームでやっている以上、『基準』を見せつけて、みんなでの競争を高めていかなければならない」と語った主将の椎橋は「きょうはみんな気合入っていて本当に良かったです」と球際、攻守の切り替えの部分で負けないことなど「基準」を仲間たちに示して快勝したことを喜んだ。そして朝岡隆蔵監督は「今年(15年)はセカンドをどう上げて行くかがカギ。(彼らが)『基準』をどう感じたか。食らいついて欲しいですね」とサブ組の選手たちの奮起を期待していた。

 ファイナルゲームは市立船橋が3-4-3、埼玉栄が4-2-3-1システムでスタートした。決勝リーグを3試合連続無失点で勝ち上がってきた市立船橋はGK寺尾凌。3バックは杉岡大暉を中央に右が喜岡佳太、左が白井達也、中盤は椎橋と古屋誠志郎のダブルボランチで右が永藤歩、左が工藤友暉。3トップは右から太田貴也高宇洋西羽拓が並んだ。

 一方、予選リーグで市立船橋を4-1で下している埼玉栄は「幸先のいいスタートが切れている。私も思っていなかった」という稲垣忠司監督の予想を上回る戦いぶりで“決勝”進出。先発はGKが小山隼、4バックは右から塩川尚輝、山口泰生、和氣一真、飯田勇吹。中盤は蔵川慎吾と斉藤陽平のダブルボランチでトップ下が石井勇太郎。右が貫井拓弥、左がU-17日本代表の高橋利樹、1トップは森山虎太郎が入った。

 前半4分に相手の背後を突いた埼玉栄・高橋が右足ループシュートを放ったものの、その後は市立船橋が試合を支配した。雨中でもボールコントロールがほとんど乱れずハイクオリティーなゲームを展開。それを可能にさせたのは椎橋と古屋の2人を筆頭に球際の激しさ、ボールへの執着心を見せ、個々がハードワークで埼玉栄に差をつけた市立船橋の姿勢だった。

 埼玉栄MF石井と激しいマッチアップを繰り広げた古屋は相手に絶対にボールを触らせないという構え。そのこだわる姿勢は異彩を放っていたほどだ。「最終的にはそういうチームが勝つ。チームのコンセプトも球際なのでそこでは市船は負けちゃいけない。そこで日本一を獲れるように」と古屋。空中戦では椎橋や杉岡が絶対に先に触り、喜岡と石井も些細なカバーリングを欠かさない。埼玉栄の稲垣監督は「(相手を)食いつかせてサイドを使おうとしている。やろうとしているのは次につながる」と語り、市立船橋のハイプレスをかわした際は好展開を見せていた選手たちに目を細めていたが、「力の差がはっきりした。教えて頂いた」と相手の強さ・意識の高さを讃えていた。

 市立船橋は前半7分、11分と右の永藤がスペースを突いてクロス。10分には左サイドから中へ持ち込んだ工藤のパスから西羽が右足シュートを打ちこむ。15分にも右サイドでターンした太田がDF2人を剥がすと、高が入れたラストパスに工藤が飛び込んだ。そして19分に先制点が生まれる。クリアボールを上手くDFの背後へ落とした市立船橋はそれに高が反応。DFをブロックしながらキープした高はそのまま縦へ持ち込んで左足シュートを流し込んだ。

 埼玉栄もサイドチェンジを交えて反撃。31分には斉藤が左サイドを縦に突き、飯田がクロスを入れる。ただ、GK寺尾にキャッチされるなど相手を脅かすことができない。逆に市立船橋は後半9分、永藤の右クロスのこぼれ球に反応した椎橋が右中間から右足ミドル。会場、市船ベンチも大いに沸いたほどの驚愕の一撃は弾丸ライナーでゴール枠を弾いてゴールへ吸い込まれた。さらに18分には工藤が自ら獲得した左FKをゴール前に入れると、勢いを持って飛び込んできた喜岡がダイレクトでゴールへ押し込んで3-0。勝敗の行方を決定づけた。

 埼玉栄は17分に投入された大型FW杉浦拓磨が球際の強さ、ボールキープで対抗。また28分には左SBに佐藤滉悟を投入する。一方、22分にMF今村晃、30分にFW矢野龍斗をピッチへ送り出した市立船橋は終盤も多彩な崩しから決定機をつくり出す。埼玉栄GK小山の好守もあって4点目を奪うことはできなかったものの、椎橋が「海外、初めてなので嬉しいです」という海外遠征の権利を獲得した。

 試合後、市立船橋のミーティングではトップチームの戦いを目の当たりにした控え選手たちから「凄く悔しい」「もっと自分と向き合っていかないといけない」という言葉が相次いだ。チーム全体が意識を高めた名門は来年、日本一を奪還する。選手権予選決勝で敗退したことについて「あの悔しさがあるから成長できると思う。あの悔しさを無駄にしないでこれからも頑張っていきたい」と語った古屋は「プレミアは優勝争いできるようにして、選手権では日本一を獲れるように日々の練習から取り組んでいく」。選手権への想いの強い選手たちにとっては少し早い新チームのスタートとなっているが、それを無駄にせず、全員でより意識高く取り組んで目標を達成する。 

(取材・文 吉田太郎)
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