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名古屋内定・国士舘大FW松本孝平、病院実習など学業も手を抜かず…最終シーズン走り切る

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来季の名古屋加入が内定しているFW松本孝平

[10.2 関東大学リーグ第16節 桐蔭横浜大0-1国士舘大 国士舘大G]

 自ら選んだ道を迷うことなく走り切る。名古屋グランパスへの来季加入が内定している国士舘大のFW松本孝平(4年=藤沢清流高)だが、今季ここまでは14戦4得点。昨季は19戦17得点を挙げ、関東大学リーグ得点王となる活躍でブレイクしたFWだが、今季は不振にあえいでいる。松本の不調とともに、国士舘大は順位を落とし、現在は降格圏の11位につける。

 10月2日に行われた関東大学リーグ第16節の桐蔭横浜大戦、松本は2トップの一角で出場。前線でボールを収めようと身体を張ったが、厳しいマークに苦しんだ。前半12分にはカウンターから裏へ抜け出そうとしたがDF八戸雄太(3年=青森山田高)にカットされ、シュートは打てず。0-0の前半はシュート0本で終えた。

 後半16分にチームは先制。右サイドから上がったMF本間達耶(3年=遠野高)のクロスに合わせ、ニアサイドには松本とFW田場ディエゴ(2年=日大藤沢高)が飛び込んだ。2人がDFを引き連れていき、後方にできたスペースへ飛び込んだMF信末悠汰(2年=清水桜が丘高)が最後はシュートを決めた。

 自らが厳しいマークにあっていたため、“おとり”として役割を果たした松本だが、「そりゃあ、もう(自分がボールを)欲しかったですよ!みんな欲しくて、あそこに入っていますから」とストライカーとしてのプライドをのぞかせた。

 その後は松本が二度の決定機を迎えたが決めることはできず。いずれもFW大石竜平(2年=清水桜が丘高)からの右クロスをフリーで受けたが、シュートはクロスバー上へ大きく外れていった。

「ああいうところを決めないといけないのが、自分が今後なる(プロサッカー選手という)仕事。ああいう質をこだわらないといけない。あそこで1点を決めて、勝つか負けるかというシーンがいずれ出ると思うので、最後に決める力や運を自分で持っていないといけないなと思いました」

 この日の試合に1-0で勝利した国士舘大は、11戦ぶりに最下位を脱出し、残留圏の10位とは勝ち点で並んだ。「勝ったことは嬉しいです」と話した松本だったが、「でも、あの決定的なのを外した悔しさは強いです。あの1点で試合が決まって、あそこで2点目を取っていたら、その後も得点を重ねていたかもしれないし。得失点差にも影響してくるので。あそこで沈められるようにならないと」と唇を噛む。

 ゴールを量産し続けた昨季から一転。今季はもどかしい状況が続くが、その理由については「マークが違います」と分析。「去年は無名だったし、『なんだ、このデカいの』みたいに別に目立っていなかったし、マークも曖昧でフリーで出来ていた感じでした。あとは自分が求められることが高くなってきて、自分に足りないことが分かってきて、それを無理やりやろうとしていたからだと思います」と語った。

 マークが厳しくなる中、周囲からの要求は高まるばかり。それに応えようと無我夢中でやるなかで、自分自身の強みを見失いかけた。全てを器用にやろうとしても、その域には達しておらず。負の連鎖に陥った。だからこそ今は「いいところが全くなくなってしまっていたので、そこを改善できるようにやっています」と表情を引き締めた。

「動きながらボールを受けたり、今日とかはサイドが詰まって裏へ抜けたりとかのシーンがあった。自分が動けば相手のCBも動くし、そうすれば相手もきつくなる。前で時間をつくればみんなも上がってくれるので、そういうところをやっていきたい」

 もちろん、チームメイトも松本が再びゴールを量産する日々を待っている。主将のDF附木雄也(4年=八千代高)は「きょうのゲームもマツが決めてくれれば、正直楽だったと思うし、それ外す?!みたいなのがありましたけど」とジョークを交えつつも、「マツが研究されるのは間違いないし、わかっていたことではあるけれど、正直厳しい。でもDFは信じることしかできないし、信じているので」と信頼を口にした。皆がエースの“帰還”を待っている。

 名古屋への来季加入が内定しているFWだが、元々国士舘大への進学後はサッカー部へ所属せずに、体育学部のいち学生として、消防官を目指していた時期がある。今もそれはぶれておらず。Jリーグ開幕後の3月に控える救急救命士国家試験は予定通りに受けるつもりだ。「僕としては取りたいです。絶対に今受けないと(資格は)取らないと思いますし、せっかくなので」と思いを明かした。

 Jリーガーとしての未来が約束されているが、浮き足立つ様子はなく、資格取得を見据え、学業でも手は抜いていない。今年8月末からは病院実習も行った。仮眠を取りながらも、朝8時から翌朝8時までの24時間勤務。明けが休みの5当直、全10日間をやりきった。その間はチームの練習に参加することはできず。高校の練習へ参加したり、自ら身体を動かすのみだったという。それでも松本は自らのコンディションを今季の“不調”の言い訳にはせず。学生として、学業に勤しむのは当然のことだと言うように、淡々と日々を過ごす。

 来季入団する名古屋は、現在J1で15位につけており、関東1部への生き残りを目指す国士舘大と同様に残留争いを戦っている。名古屋は1日の福岡戦に5-0と快勝し、約3か月ぶりに降格圏を脱出。その翌日に行われた試合で国士舘大は11戦ぶりの最下位脱出を果たした。松本は名古屋の結果を受けて、「僕たちも頑張ろうと、とりあえずは(最下位から)一個抜けたので」と語る。

 今では名古屋の試合はテレビでチェック。DF田中マルクス闘莉王が加わったことについては、「声を出したりチームをまとめて、そういう人は絶対にチームに必要。自分が見ていた世代の日本代表の人なので。そういう人たちと出来るのは楽しみです。怖いとよく聞くんですけど。それくらい厳しく言われたほうが自分の成長になりますし、言われたほうが悔しいし、それが代表に入る選手の言うことなので、それくらいのレベルでやらないといけないなと思います」と語った。

 今シーズンも残るは6試合。Jリーガーとしての未来が待っているものの、救急救命士としての資格取得も見据え、自らが選んだ道に言い訳することなく、日々を過ごす。全力を注いで走り切った先に、どんな結果が待っているのか。

(取材・文 片岡涼)

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