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歴史を作るための最高のリスタート。U-19日本代表がアジアの準決勝で誇示した「2チーム分の戦力」

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前半6分、FW岸本武流の先制ゴールを喜ぶU-19日本代表イレブン

[10.27 AFC U-19選手権準決勝 日本 3-0 ベトナム]

「すごく嬉しい。誰が出ても点を取れて、自分たちのサッカーができて……」

 そう言って相好を崩したのは、この日1分も出場していないMF坂井大将(大分)だった。24日(日本時間25日)に行われたAFC U-19選手権準決勝・ベトナム戦。内山篤監督はこの一戦で先発メンバー10名を刷新。冒険的とも言える采配でこれまで出場時間0分の選手3名を含むメンバーをピッチに送り出し、そして3-0の勝利をつかみ取ってみせたのだ。

 大会直前に行った選手ミーティングの席上、坂井は「出場時間の長い選手もいれば、短くなってしまう選手もいると思う」と率直に語ったという。その上で「チームのためにやってほしい」と語りかけていた。もちろん、選手は人の子。出られなければ悔しいし、フラストレーションがたまらないはずもない。モチベーションを常に最高潮に保てていたかと言えば、そうでないときもあっただろう。「試合に出られないメンバーは、イライラしていた部分はある」とMF長沼洋一(広島)は率直に言う。ただ、「マチ(町田浩樹=鹿島)とかが(出られない悔しさを)顔に出すことなくやってくれていた」と坂井が振り返ったように、出場機会のない選手たちもチームのために戦うという思いは共有し続けていた。

 そして迎えた準決勝は、そうした選手たちを一気に起用する機会となった。これを指揮官の温情采配と見るのはお門違いだろう。「『勝つ』という大前提の下で、4試合を戦ってのコンディション、メンタルのいろいろなものを総合して判断した」と内山監督は言う。世界切符という最大目標を獲得した直後のモチベーション、そしてフィジカルコンディションを考えての決断だった。裏を返して言えば、試合に飢えている選手たちのモチベーションは高く、フィジカル的に消耗していないということである。「みんなに機会を与えるという安易なものではない」という内山監督の言葉は、建前ではなくて本音だろう。

 試合前日の練習前のミーティングで発表されたこの日のスタメン。「やってやろうという気持ちだった」と長沼が言うように、士気は抜群に高かった。実戦感覚という意味では一抹の不安があったが、準々決勝からメンバーを代えずに臨んできたベトナムとは、この一戦に懸ける思いに天地の差があったことは間違いない。立ち上がりから圧倒しての3-0という勝利は、「この代表には2チーム分の戦力があることを証明した」(長沼)ものだった。

「今日は(廣末)陸、マチ、(板倉)滉といった出場0の選手たちがみんなを引っ張ってくれた」と主将の坂井は言う。試合に出続けていた選手たちにとっても、大いに刺激となる結果だったことは間違いない。「準々決勝で(10年ぶり世界大会出場という形で)歴史を変えられたので、次は今まで優勝したことのない大会を23人とスタッフ全員の力で優勝して、歴史を作ろうと思います」(坂井)。次の相手は、大会でこれまで当たったチームとはちょっとレベルの違うサウジアラビア。圧倒的攻撃力を誇る難敵に対してチーム一丸で戦い抜いて初優勝をつかみとる。世界切符をつかんだチームは、新たな歴史を作るための最高のリスタートを切ってみせた。

(取材・文 川端暁彦)
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