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一番声を出し頑張っていた先輩が急逝。昨年度4強・湘南学院が「追悼試合」で逆境乗り越えて5-0勝利:神奈川

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湘南学院高は「7」を背負うFW飯野智也の3得点などによって快勝発進

[9.24 選手権神奈川県2次2回戦 光陵高 0-5 湘南学院高 湘南学院高G]

 24日、第97回全国高校サッカー選手権神奈川県2次予選2回戦第2日が行われ、昨年度4強の湘南学院高がエースFW飯野智也(3年)の3得点とMF亀山弘登(3年)の2得点によって光陵高に5-0で快勝。湘南学院は10月20日の3回戦で東海大相模高と戦う。

「彼が助けてくれた」(高村一也監督)。湘南学院は今月上旬に今春卒業したばかりのOBが事故によって急逝。「良い形で送ってやろう」と臨んだ「追悼試合」の光陵戦は、開始12分にキーマンのMF剣凱也(3年)が2枚目の警告を受けて退場してしまう。だが、主将のCB船津海斗(3年)が「自分たちには亡くなった先輩もいるので、(12人対11人から)やっとこれで11対11だという気持ちで臨めました。先輩の力が大きかったです」と説明したように、見守ってくれている先輩の力を感じながらプレーして逆境を乗り越えた。

 とは言え、剣の退場は「剣はみんなの軸となってやってくれているので、その選手がいなくなると大きいので精神的にもキツかった」と船津。県立勢の光陵は左サイドの技巧派レフティー・MF寺村和馬(3年)やMF藤井拓(3年)をはじめ、好選手の多いチームだった。立ち上がりからオープンサイドへボールを運んで寺村やMF中西涼介(2年)を絡めた攻撃からゴール前のシーンを増やしてくる。

 序盤、寺村のクロスにFW志自岐雄大(3年)が2度飛び込むなどあわやのシーンを作ってきていた。加えて湘南学院は退場者を出したことでさらなる苦戦が予想されたが、トップ下からボランチにポジションを移した注目MF井内悠人(3年)が攻撃をコントロール。そして、神奈川県屈指のストライカー・飯野が抜群の得点力を発揮して流れを変えた。

 19分、最終ラインでパスを繋いだ湘南学院は左SB長島頌ヤニック(3年)が絶妙な縦パス。完璧なタイミングで抜け出した飯野が、左からゴール方向へ向かうとGKとの1対1から右足ループシュートを沈めて先制点を挙げた。

 亡くなった先輩の練習番号と同じ7を背負う飯野は、高村一也監督から「(彼と同じ7番を)背負っているから、入れてくれるぞ」と言われていたのだという。その飯野は「(その先輩とは)去年も同じFWとしてポジションを争っていて、最後Aチームに上がっていたけれど、ギリギリ出れないという選手でした。自分はその人の分まで頑張らないといけないという気持ちを去年から持っていました。応援の時も応援リーダーとして一番声を出して頑張ってくれたので悲しい気持ちも持っているんですけれども、だからこそ先輩に向けたメッセージとしてこの選手権で結果を残していきたい」という思いをゴールで表現した。

 光陵は競り合いで強さを発揮したMF小林快(2年)がゴール前に潜り込んでシュートを放つなど反撃。だが、湘南学院はGK小林司(3年)の好守などで凌ぐと27分、この日パワフルな突破を連発していた右MF亀山がインターセプトから一気に前進。PAでGKをかわして右足シュートを流し込んだ。

 光陵も好守で食い下がり、チャンスも作ったが、紙一重のところで活かすことができない。対して湘南学院は、後半11分に右サイドからMF鷹野佳介(3年)、MF鈴木凱斗(3年)と繋ぎ、最後は亀山が左足でゴール。さらに23分には左サイドから仕掛けた飯野が技ありのコントロールショットを決めて4-0とした。

 守備面でも船津を中心にシンプルに守ることを徹底。無失点のまま試合を進めた湘南学院は、38分にも井内のスルーパスから飯野がこの日3点目となるゴールを決めて試合を締めくくった。

 ベンチ外メンバーの応援も後押しに5-0で快勝発進。インターハイ準優勝校の日大藤沢高を破るなど快進撃を見せた1年前を経験している選手が多い今年は期待も大きい。今年は関東大会予選、インターハイ予選ともにベスト16で惜敗と結果が出ていないが、高村監督は「苦しんでいる分、最後やってくれると思います」と期待する。

 試合後、剣に「オマエ(がいないから)、疲れたよ。俺らに恩返ししてくれよ」と声がけしたという船津は、V候補の一角である東海大相模戦へ向けて「きょうみたいな粘り強い守備をしつつカウンターとかで得点したい。僅差で良いので勝てればいい」と力を込めた。昨年超え、そして全国へ。亡くなった先輩への感謝の思いも持って戦い、勝ち続ける。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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