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[関東大会予選]伝統校・武南が7年ぶりV!浦和東を延長戦で振り切り、埼玉タイトル奪還!

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7年ぶりの優勝を果たした武南高イレブン

[4.29 関東大会埼玉県予選決勝 武南高 1-0(延長)浦和東高 埼玉第2]

 武南が埼玉タイトル奪還――。2019年度関東高校サッカー大会埼玉県予選決勝が29日に行われ、延長戦の末、武南高が1-0で浦和東高に勝利。7年ぶり15回目の優勝を飾った。武南と浦和東は6月に茨城県で開催される関東大会に出場する。

 埼玉県内最多タイの選手権出場14回、同最多のインターハイ出場20回を誇る武南が復活Vを果たした。昨年4月に名将・大山照人前監督からバトンを受け継いだ内野慎一郎監督は「嬉しいです」と微笑んだあと、「驕らないように。内容は散々。埼玉には強いチームがいるので、優勝をたまたまにしないようにしたい」。関東大会本大会やインターハイ予選、選手権予選へ向けて、引き締め直していた。

 堅守・浦和東と、ポゼッションに個人技を織り交ぜて攻める武南との埼玉頂上決戦。浦和東は前からボールを奪いに行かず、守備ブロックを形成して相手のパスコースを限定する。押し込まれても注目の大型CB松本ケンチザンガ(3年)の高さやゲーム主将のCB安食龍成(3年)のカバーリングなどで対応。怪我を抱える2年生エースFW古澤将吾をベンチからも外したために、攻撃面は苦戦することになったが、それでも安定した守備でリズムを掴む。そして、FW佐合陸哉(3年)が前線での競り合いで奮闘し、左利きのドリブラー・坪内祐輔(3年)のスピードも活かして攻め返そうとしていた。

 一方の武南は1ボランチのMF清水光太(3年)がボールに多く絡みながら前進。最前線では、10番FW大谷涼太(3年)が良くボールを収めて起点となっていた。そして、一瞬のスピードとテクニックが印象的なMF宇田川拓真(3年)が攻撃をスピードアップさせ、後半はFC東京加入内定のMF紺野和也(現法政大)の後継ドリブラー・MF青野翔太(3年)が存在感を増す。

 前半、浦和東はシュートゼロに終わり、武南も大谷がPA付近で存在感を示していたが、得点できないまま後半を迎えた。後半5分、武南は右サイドから崩して宇田川がフィニッシュ。15分にはMF大澤遥基(3年)とMF佐藤翼丞(3年)を投入してサイドのスピードを加えた浦和東が決定機を作り出す。

 右SB吉田勇輝(3年)が右オープンスペースへボールを入れると、大澤が抜群のスピードで追いついて一気に中へ。ラストパスをファーサイドの佐藤が左足で叩いたがシュートは外側のサイドネットに外れた。

 武南は内野監督が「どうやってこじ開けるか考えていた。でも、(浦和東の)修正が早くて、スペースを与えてくれなかった」。後半開始から投入した“切り札”MF矢地柊斗(3年)が左サイドから仕掛け、清水を右SBに移行して起点をサイドに持っていくなど工夫を加えながら攻めた。そして、ゴール前のシーンもつくったが、攻撃がやや個人頼みになってしまい、加えて浦和東の粘り強い守備の前に1点を奪うことができない。

 徐々にオープンな展開になる中で浦和東もチャンスの数を増やす。32分、大澤が右サイドで2人をかわしてシュートへ持ち込み、アディショナルタイムには松本のヘディングシュートと大澤の右足シュートが武南ゴールを脅かした。だが、今大会無失点の武南はCB{8宝満朋矢}}(3年)や大型GK渡辺海斗(3年)を中心に得点を許さない。

 互いに譲らないまま、試合は延長戦に突入。武南は7分にFW大谷が抜け出しから強烈なシュートを枠に飛ばすが、浦和東はGK川村龍世(2年)がファインセーブで阻止する。浦和東の堅守をこじ開けられずにいた武南だが、この日12本目のシュートでついに1点をもぎ取った。

 延長前半アディショナルタイム、武南は清水が右サイド後方からFKを蹴り込む。これをニアの矢地が頭でそらす。相手の小さなクリアが矢地の元へ。これをコントロールした矢地が右足を振り抜くと、強烈な一撃がゴール右隅を破り、待望の先制点となった。両手を広げて走る矢地中心に武南イレブンが喜びを爆発。攻め続けて1点をもぎ取った武南は残り10分間、巧みに時間を使いながら逃げ切り、埼玉県のタイトルを奪還した。

 試合後、選手たちはロッカールームで大山前監督に優勝報告。81年度選手権で武南に日本一をもたらしている名将からは「1位で行くのと2位で関東行くのは全然違う」と言葉をもらったという。12年のインターハイで全国準優勝し、翌13年も埼玉1位としてインターハイに出場している武南だが、その後は県内トーナメントでも無冠。それだけに青野は「最近は(県大会でも)ベスト8とかで止まっていた。悔しい気持ちがあった。絶対に優勝してインハイも選手権も行くぞという気持ちでやっている。慢心せず、自分たちは新人戦1回負けだった。チャレンジャーの気持ちでやりたい」と力を込め、ゲーム主将の左SB安野天士(3年)も「素直に嬉しいですけれども、ここから関東大会とかあるので、ここで満足せずに自分たちのサッカーをやれれば良いと思います」と誓った。復活Vを素直に喜んだイレブンだが、伝統校の目標はまだまだ先にある。

(取材・文 吉田太郎)

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