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MF中野先制弾も鹿島ユースに逆転負け。U-15日本代表候補は初の対外試合を新たな変化へのきっかけに

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1本目28分、U-15日本代表候補MF中野裕唯(FC東京U-15深川)がドリブルシュートを決めて先制点

[5.27 練習試合 U-15日本代表候補 1-3 鹿島ユース Jヴィレッジスタジアム]

 06ジャパンは初の対外試合を新たな変化へのきっかけに――。06年生まれ以降の選手で構成されたU-15日本代表候補(06ジャパン)が福島・Jヴィレッジ合宿最終日の27日、練習試合(30分×3本)で鹿島アントラーズユース(茨城)と対戦。1本目にMF中野裕唯(FC東京U-15深川)のゴールで先制したが、2本目と3本目に失点して1-3で逆転負けした。

 U-15代表候補は、4月に異なるメンバー構成によって2度の千葉・高円宮記念JFA夢フィールド合宿。そこでアピールし、吸い上げられた選手たちによって今回、24日から計4日間の合宿を行った。練習試合で対戦した鹿島ユースは、20年U-16代表候補MF下田栄祐(2年)や21年U-16代表候補右SB今井啓太(2年)ら高校1、2年生に系列ジュニアユースの数名を加えたメンバー。U-15代表候補は結成後初の対外試合となったが、1、2歳年上相手に“海外遠征と同等”と言えるようなレベルの試合を経験することができた。

 U-15代表候補は、トレーニングでコンパクトに守る部分やボールを落ち着かせて相手を揺さぶるところを強調。この日はやってきたことにトライしたが、判断も含めたスピード、フィジカルで鹿島ユースとの差を実感する試合に、また「(自分の常識を変えなければならないことを)本質的に彼らに気付いてもらう、(海外遠征での1試合に)近いものになった」(廣山望監督)。

 立ち上がりから押し込まれ、ゴールへ向かって仕掛けて来る相手の攻撃に耐える時間が続いた。奪われたボールをなかなか奪い返すことができず、加えて自陣PA付近でインターセプトされるようなミスもあったが、GK後藤亘(FC東京U-15深川)が好セーブを見せるなど何とか水際で防いでいく。

 相手の決定的なラストパスをMF立花圭吾(FC東京U-15むさし)がスライディングでカットしたり、ゲームキャプテンのCB坂本翔汰(鹿島ユース)、CB大場章太郎(鳥栖U-15)の跳ね返しやカバーリングなどもあって無失点の時間を継続。狙いとするコンパクトな守備からボールを奪うシーンも幾度かあった。

 ただし、攻撃面で苦戦。相手を揺さぶることにチャレンジはしていたものの、なかなかボールを保持させてもらえない。良い形の守備から一気に仕掛けるシーンもあったが、普段ならばキープしたり、DFを振り切ることができたりするような状況でも、年上の相手にあっさりとインターセプトされていた。また、数的優位の状況を作り出しても、戻りの速い鹿島ユースの前に数的同数・不利に変えられてしまう。その結果、攻めきれずにボールを失い、守備の時間が増えてしまっていた。

 それでも前半28分、U-15代表候補は中盤中央でボールを受けたFW名和田我空(神村学園中)が左サイドの中野へさばく。ここまでほとんどボールに触れることができていなかった中野だが、「次、ボールを受けた時はゴールに向かってドリブルして行こうかなと思っていました」というように、目の前のDFをかわすと一気にスピードアップ。中央までドリブルで切れ込んで右足を振り抜くと、ボールは右ポストを叩いてゴールへ吸い込まれた。

 1-0で1本目を終えたU-15代表候補は、2本目開始から4人をチェンジ。だが、6分、鹿島ユースMF小笠原聖真にサイドを破られ、最後はFW馬目隼乃介に同点ゴールを奪われた。さらに12分には、DFラインの背後を突かれてゴール前まで運ばれ、混戦でボールをかき出すことができない。そして、MF壱岐健斗に勝ち越し点を献上してしまう。

 U-15代表候補もFWワッド・モハメッド・サディキ(柏U-15)がコンタクトの強さを活かしてボールをキープしたり、インターセプト。MF石井陽(前橋FC)がシュートを放つシーンがあったほか、CB土橋竜之介(鹿島つくばJrユース)の好パスからMF佐藤龍之介(FC東京U-15むさし)がカットインシュートを狙うも追いつくことができない。

 2本目15分にCB山本虎(青森山田高)ら7人を投入したU-15代表候補は、3本目開始からさらに4人をチェンジ。敵陣での奪い返しからFW道脇豊(熊本Jrユース)が左足を強引に振り抜くなど同点を目指すが、DFを攻略するまでには至らない。逆に14分、左CKから鹿島ユースCB千葉颯斗に決められて1-3。U-15代表候補は諦めずに戦い、特にCB本多康太郎(湘南U-15)や道脇が気迫ある動きを見せていたが、1-3で敗れた。

 廣山監督は「身体の差とか、スピードの差とか、考えるスピード、予測のスピード、そこで実際に剥がす時のスピードというスピードの部分で経験のないところにさらされた感じがありますね」と分析。中野は「(鹿島ユースは)自分たちよりもガタイも大きくて、スピードも自分たちよりもあったと思う」と感想を口にする。

 廣山監督は選手たちに代表チームで積み上げてきたことをしっかりと個人で積み上げられる選手になることや、個々の持っている技術レベルやスピード感、日常の取り組みなど常識を変えることを求めてきた。前回の合宿からや今回の合宿中も守備意識や細かなポジショニングで明らかな変化が見える選手がいるという。実際、鹿島ユースの鋭いプレッシャーの中でも正確に判断し、特長を発揮していた選手もいた。また今回の招集メンバー以外にも、意識的に体重を増やしたり、自チームでこれまで以上の意識で取り組んでいるという選手の報告も受けているようだ。

 ただし、06ジャパンの第一の目標である23年U-17ワールドカップなど世界で勝つためには、まだまだ個人、チームで変化していかなければならない。例年であれば、海外遠征で同世代のトッププレーヤーたちに打ちのめされたりすることが、彼らの考え方を変えるきっかけに。海外遠征を実施できない中、この日はミーティングやトレーニングで求められていた変化の必要性に気づく試合になった。悔しい思いをした選手たちの今後に注目だ。

 廣山監督は試合直後、ピッチ上でスピード差などを感じた選手たちへメッセージ。その後、個別に声がけを行っていた。今後も限られた中での活動が続きそうだが、「今でしか変えられない、根っこの部分でどれだけ刺激できるか」と廣山監督。スタジアムで試合を実施するなど公式戦を意識した取り組みも行いながら、06ジャパンは世界での戦いへ向けた準備と変化を続ける。

(取材・文 吉田太郎)

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