[11.27 J1第33節 F東京1-1山形 味スタ]

　すでにJ1残留を決めていたモンテディオ山形だが、容赦はしなかった。F東京を歓喜から一気に失意に陥れたのは、途中出場の元日本代表FW田代有三だった。0-1の後半41分、左サイドからのクロスに飛び込み、得意の高さを生かしてヘディングシュートを浴びせた。敵地・味の素スタジアムに悲鳴を響かせた。
　
　「自分が入ったあとに点を取られたんで、同点にできてよかった。いいボールが来たんで、うまく合わせるだけだった。いいコースに飛んでくれてよかったです」

　背番号「10」は敵地のミックスゾーンで笑顔を見せた。この日はFW長谷川悠に先発を奪われ、後半14分からの途中出場だった。だが自身の出場から15分後に先制点を喰らった。すでにJ1残留が決まっていたとはいえ、ストライカーの本能がうずきまくった。

　これで今季通算10得点と自身初の二桁という大台に乗せた。昨季は鹿島でリーグ戦2得点と悔しい結果に終わっていた田代。チームのため、そして自分のため、ストライカーらしい結果が残せてうれしかった。何より、この1年間の成長を感じられるゴールだった。

　「山形に来て責任感がついたと思う。鹿島時代は先発で出ても、誰かが点を取って勝っていた。(自分が)途中出場でも、誰かが点を取ってくれて、勝たせてくれた。このチームは自分が取ったら、勝てる。逆に取らないと負ける。それがJ1(残留)かJ2(降格)につながるから、責任感がついた。ほんと山形で成長できた」

　今季は出場機会を求めて、名門・鹿島からレンタル移籍した。これまではFWマルキーニョスやMF小笠原満男ら中心選手に引っ張ってもらっていたが、山形では背番号「10」を託され、牽引する立場になった。出番を与えてくれたクラブ、応援してくれるサポーターのためにも、最後の最後までゴールという恩返しをしたかった。

　気になる来季についてだが、田代は「まだ1試合あるんで、しっかり戦いたい。去就?　早めに決めたいと思います」と山形残留か鹿島復帰かは、詳細を明かさなかった。今季、出場機会を得て復活を遂げた大型ストライカー。山形はもちろん、鹿島にとっても、頼れる男に成長したことは間違いない。

[写真]得点を決めた田代の周りに歓喜の輪ができる

(取材・文　近藤安弘)