beacon

Jリーグ再開へ、仙台・手倉森監督「希望を失いかけている人の光に」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 23日のJリーグ再開を翌日に控えた22日、都内で記者会見が行われ、等々力陸上競技場で対戦する川崎Fと仙台、国立競技場で対戦する鹿島と横浜FMの4チームの監督が出席した。

 東日本大震災で被災したベガルタ仙台手倉森誠監督は「3月11日、あの場にいて、あの地震を経験して、今日こうして記者会見が開かれることになって、ようやくここまで来たなと感じている。他のJクラブの関係者、サポーターの皆さんからの支援をいただいて、ここまでたどり着けた。ありがとうございます」と、一つひとつの言葉をかみ締めるように感謝の言葉を口にした。

 震災の影響で一時、解散を余儀なくされたチームは18日後の3月29日からようやく活動を再開。今月3日からは関東に場所を移し、リーグ再開に向けて調整してきた。「本当にサッカーをしていていいのか、勝負できる状態になるのか。いろんな思いが交錯した」という指揮官は、あらためて震災直後の状況を振り返った。

「あの地震の揺れの大きさ。クラブハウスの天井が崩れ落ちて、ガラスも割れ、駐車場はひび割れが起きていた。停電の中、ろうそくの光で一夜を過ごした。ワンセグで津波の状況を知った。その被災状況を見て、間違いなくJリーグは中断するな、少なくとも我々のチームは活動できないなと思った。あれだけ多くの命が失われ、たくさんの財産をなくした人たちがいる中で、本当にサッカーができるのか、サッカーをしていていのか。それがあのときの気持ちだった」

 限られた準備期間の中、関東合宿では大学生2チーム、湘南、大宮と練習試合を行った。「いろんなチームの協力もいただいて練習試合を組むことができて、ようやくフロンターレと戦う準備ができたと実感している」。地元を離れて約3週間。今もなお避難所生活を続ける数多くの人たち、余震などの不安に苦しんでいる人たちのことが頭から離れたことはない。「外でキャンプをしている状況が、これ以上長かったらどうなっていただろうと思う。選手のメンタリティーをコントロールしてきたが、我々にとっての通常はリーグ戦がある状況。公式戦がないと、我々はどうしても他の考え事が多くなる。ちょうどいいタイミングで再開になったと思う」と実感を込めて言った。

 被災地に勇気を届けたい。全力でプレーし、勝利をもぎ取りたい。仙台にとっての再開初戦は、いまだかつてない特別な意味を持つ。「どんな感情になるのか、見当も付かない。ものすごい雰囲気になるだろうと選手には話している。それを想像して準備してほしいと」。そう話す手倉森監督が恐れるのは「選手の気負い」だ。

「アグレッシブになり過ぎてファウルが増えれば、試合は台無しになる。この期間にコンディションだけでなく、戦術面も高めてきた。そうしたタクティクスも含めて上手く表現して、なおかつフェアで、ベストを尽くす。それだけだと思う。そこは自分もしっかりコントロールしてやらせたいと思っている」

 被災地を代表して、日本が復興に向けて前進していることを日本中に、そして世界中に示したいという思いもある。「今、日本は注目されている。Jリーグが再開されて、全チームが元気な姿を見せれば、それが日本のアピールになる」。そう力説すると、最後は東北にいる被災者の方々へ力強いメッセージを送った。

「ベガルタが元気な姿を見せ、活躍することで東北に元気や勇気を与えることができると思う。希望を失いかけている人にとって、少しでも希望の光になれるように力を注ぎたい。被災された方の意もくんで、出せる力のすべてを注いで、全力で戦う姿を見せたい」

[写真]再開初戦で対戦する川崎Fの相馬直樹監督(左)と握手する仙台の手倉森誠監督

(取材・文 西山紘平)

「ゲキサカ」ショート動画

TOP