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羽生が涙の決勝弾、F東京が380分ぶりゴールで開幕戦以来の勝利

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[5.8 J2第11節 F東京1-0富山 味スタ]

 MF羽生直剛の見せた涙が、ここまでの苦しみを表していた。3月5日の開幕戦・鳥栖戦(1-0)以来、4試合ぶりとなる今季2勝目を飾ったFC東京。途中出場で決勝点を決めた羽生は試合後のヒーローインタビューで思わず感極まった。

「31歳だけど、悔しかった。試合に出られないのもそうだし、支えてくれた人に感謝したかった」。前節の東京V戦(0-0)は開幕戦以来の先発を果たしたが、後半23分に交代。チームもリーグ再開後、3試合連続の無得点で2分1敗となった。そして、この日は再びベンチスタートに。出番が回ってきたのは後半23分だった。

 待望のゴールが生まれたのは後半36分だ。左サイドからMF梶山陽平がスローイン。途中出場のMF谷澤達也がヒールでゴール前に流すと、走り込んだ羽生が右足を振り抜いた。シュートはGKの手を弾き、ゴールネットを揺らす。「サポーターに22番はここにいるというのを見せたかった」。ゴール裏のサポーターに向かってダッシュした羽生のもとへチームメイトが駆け寄り、歓喜の輪が広がった。

 開幕戦の後半16分に谷澤が決めた決勝点以来、実に380分ぶりとなる得点。3試合連続ノーゴールと深刻な得点力不足に苦しんできたチームが、長い長いトンネルをようやく抜け出した瞬間だった。

 FWロベルト・セザーが出場停止だったこの日は梶山をトップ下に置く4-2-3-1にシステムを変更。札幌から加入したMF上里一将が移籍後初出場初先発でボランチに入った。一方のカターレ富山はF東京から期限付き移籍中の平出涼が契約の関係で出場できないため3-3-3-1の中盤の中央で江添建次郎が今季初先発となった。

 立ち上がりは富山が積極的なプレーでリズムをつかんだが、相次ぐアクシデントで流れに乗り切れなかった。前半28分にMF吉川拓也がひざを痛めて負傷交代すると、代わって入ったMF谷田悠介も競り合いで頭部を負傷し同44分に交代。後半12分にはDF池端陽介も足首を痛め、交代枠をすべてケガで使い切ってしまった。

 徐々に試合を支配し始めたF東京は上里やMF徳永悠平が積極的にミドルシュートを狙うが、攻撃は単発。前半40分、MF中村北斗からパスを受けた梶山が鋭い切り返しから右足で狙うもGKの好セーブに阻まれ、なかなか1点を奪えなかった。

 また点を取れないのか……。スタジアムを包む不穏な空気を一掃したのが交代で入ってきた谷澤と羽生だった。羽生は「僕が入った以上は連動性、コンビネーションを生みたかったし、谷澤からいいボールが来た。決められてよかった」と胸を張った。

「ずっと勝てなくてすみませんでした」。約2ヵ月ぶりとなる白星に、サポーターへまずは謝罪の言葉を口にした羽生は「僕たちは優勝しなくちゃいけないし、サポーターと喜びをたくさん分かち合いたい」と力強く言った。

 圧倒的な戦力を誇り、シーズン前は揺るぎない優勝候補筆頭と目されながら、まさかの出遅れたとなったJ2での戦い。羽生の一発が反攻の狼煙となるか。試合終了の瞬間、ガッツポーズのあとホッと安堵の表情を浮かべた大熊清監督は「J2は甘くないし、こういう試合が続く。次の準備をしないといけない」と、勝って兜の緒を締めた。

[写真]決勝点を決めたMF羽生直剛がサポーターの声援に手を上げて応える

(文 西山紘平)

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