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京都の高校3年生・久保が1G1Aの大暴れ、「日本を背負って立つような選手になる」

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[12.29 天皇杯準決勝 横浜FM2-4(延長)京都 国立]

 18歳のうえ、まだ2種登録の若武者が大きな大きな仕事をやってのけた。京都サンガF.C.を優勝した2002年度以来、9大会ぶりの決勝に導いたのはFW久保裕也だった。延長後半11分、MF工藤浩平のスルーパスに抜け出し、一瞬のスピードでDFラインを切り裂いて右足で突き刺した。3-2と勝利を決める一撃。先輩たちにもみくちゃにされながら、高校3年生の天才ストライカーは満面の笑みを浮かべた。

「無我夢中で打った感じです。最高でした。ああいう形で点が決められて、勝てて良かったです。裏に抜けて決めようと考えていた。それができて嬉しいです」

 2-2で迎えた延長前半14分、ようやく久保にチャンスが回ってきた。12月3日のJ2最終節・岐阜戦(3-1)以来、公式戦3試合ぶりの出場だった。「正直、出られなくてほんとに悔しい気持ちだった。今日出たら、やってたろうと思っていた」。その言葉通り、ピッチに出た途端にアクセル全開。持ち味のドリブル突破とスピードで“雰囲気”を感じさせた。そして、劇的ゴールを決めてみせた。

 ゴールの興奮冷めやらない、延長後半15分には、左サイドの縦パスに快足を活かして追いつき、深い位置でマークもいたが、ドリブルで突破して左足のグラウンダークロス。4-2とするMF駒井善成のゴールをアシストした。出場から25分ほどで1ゴール1アシストと試合を決める大活躍。今季リーグ戦でチーム最多の10得点を決めているが、まさに“脅威の18歳”らしいプレーを聖地で見せた。

 久保の活躍ぶりに、チームメートも絶賛した。ブラジル人助っ人のFWドゥトラも「本当に素晴らしい選手だ。1分でも2分でも、試合に出たら点を取るための努力をし、結果を出してくれる。当然、これからも日々努力しないといけないが、将来、日の丸をつけてW杯に出場するような、日本を背負って立つような選手になると思う」と最大級の評価を与えた。

 これで“久保裕也”の名前も、サッカー界で全国区になったかもしれない。今季、高校生ながら2種登録でトップチームに帯同。リーグ戦30試合に出場し、チーム最多で得点ランク8位タイの10得点と大活躍した。シーズン終盤はドゥトラの復活があり、ベンチスタートが多かったが、それでも18歳とは思えない活躍ぶりを披露した。まさに“京都のワンダーボーイ”といえる。

 久保の活躍は、チームの育成の成果が出た形だ。京都は2006年から立命館宇治高校と提携。ユースの10選手が全寮制で学校とサッカーを両立させている。親会社の京セラなどの出資で授業料などが免除され、まさに“文武両道の英才教育”が施される。1学年先輩には“京都の至宝”FW宮吉拓実やこの日ゴールを決めたMF駒井善成らも輩出している。“ヤング・サンガ”の躍進は、これらのユース出身選手とMF工藤浩平やMF中山博貴らの中堅選手との融合にある。

 元日の決勝では、同じくJ2を戦ったFC東京と対戦する。リーグ戦では1-4、1-6の大敗を喫しており、気合が入っている。「FC東京とはリーグ戦で2敗している。だから、負けられないです。ホント、勝ちたい気持ちが強いです。次が大事になる」と久保は強い決意を語った。久保や宮吉らの“ヤング・サンガ”は絶対に、FC東京にリベンジして日本一をつかむ決意だ。

(取材・文 近藤安弘)

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