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[Fリーグ]ハットトリックの湘南FP鍛代「このユニフォームを着られるだけで幸せなのに…」

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[8.19 F第9節 湘南 4-3 浜松 小田原アリーナ]

 前半を終えて0-2と、ビハインドを背負っていた湘南ベルマーレ(Fリーグ)。ハーフタイムにはスタンドのサポーターからブーイングを浴びたが、チームは逆転を信じて疑わなかったという。

「選手たちは全然悪くないと分かっていたので。ちょっとしたセットプレーやカウンターから失点していたのは問題でしたが、基本的には悪くなかった。監督からも『続けていこう。あとはゴールだけ』と言われていたので、本当にゴールだけを目指していました。むしろ、これで勝てなかったらどうするっていう感じでしたね」と、FP鍛代元気は振り返る。

 後半に入ると2分にFPボラが個人技で1点を返す。鍛代ら若手は「0-2にされて、なかなか逆転するイメージまでは描けていなかった」と話すが、この1点が入ったことで逆転へのイメージが描けるようになったという。そして、そこからは鍛代の独壇場となった。

 9分にはFP小野大輔が出した低く速いパスをゴール前で合わせて同点に持ち込むと、その約30秒後にはFP市原誉昭のキックインを流し込み、逆転に成功する。同17分にも相手の速攻を返す形になり、GKと1対1の場面を迎えると、確実に1対1を決めて、自身にとって初となるハットトリックを達成した。

 もともと鍛代は湘南ベルマーレのサッカースクールで、コーチを務めていた。スクール生の引率などでFリーグを見に行く機会があったときに、子供たちがピッチ上の選手たちに送る熱い視線に感化され、自身もその舞台に立ちたいと思ったという。

「仕事上、Fリーグを見に行ったりしていたら子供たちが目を輝かせているんですよ。それを見て、自分もやりたいな。年齢的にも同じ世代の選手たちがいたので、子供たちにもっと目を輝かせてもらいたいと思いました。そこから、(湘南ベルマーレの下部組織である)ロンドリーナに入ることができて、ベルマーレに入りたいという気持ちで全力でプレーしていた結果が形になり、今季からベルマーレの一員になることができました」

 かつて日本代表としても活躍した相根澄監督が「他の選手との違いは、常にゴールを狙っていること。これからFリーグの中でイヤな選手になってくると思うし、きっかけになってくる試合ではないかと思います」と大きな期待をかける22歳。彼自身、このハットトリックは大きな自信になったと話す。

「常にゴールは狙っていますが、まさか3点も取れるとは…。取ってみたら、こういう感じかと思いましたね。終盤になっても苦しくなくなっていくというか。『なんでも任せて!』っていう感じになりました。実際は、そういうわけにはいかないんですけど、全部頂戴、全部頂戴、っていう気持ちになるんですよね。1点取ってリズムに乗ることはあると思いますが、3点はなかなか取れるものではないので、良い経験をさせてもらいました」

 ゴール前で飛び抜けた嗅覚を見せて、ハットトリックを達成した鍛代は、今後の湘南を担っていく選手だ。リーグ戦の3分の1を終えた今、確かな手ごたえを感じている。

「この(ベルマーレの)ユニフォームを着られるだけで、幸せなのに…。これを着てハットトリックまでできるなんて、本当に嬉しいです。この経験を2巡目、3巡目につなげていきたいと思います」と笑顔で語った。

(取材・文 河合拓)

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