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不安視されていた代が決勝進出!! 同じ轍を踏まなかった福井商、過去“4戦4敗”の北陸をPK戦で撃破:福井

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PK戦を制した福井商高が決勝へ

[10.29 選手権福井県予選準決勝 北陸高 1-1(PK4-5) 福井商高 テクノポート福井スタジアム]

 第102回全国高校サッカー選手権福井県予選準決勝が29日に開催され、北陸高福井商高が対戦。互いに譲らずPK戦までもつれた一戦は1-1(PK5-4)で福井商が勝利した。11日5日の決勝では16年ぶり2回目の出場をかけて丸岡高と対戦する。

 県1部リーグの後期で行なわれた同一カードは4-0で福井商が勝利。前からボールを奪いに行く福井商にとって、ポゼッションサッカーの北陸は相性が良いはずだが、選手権では思い通りの結果が得られていない。過去の対戦成績は4戦4敗。「いつもやられていたので、自分の中では次こそは思っていた」(高木謙治監督)。

 いつもはキックオフから15分までに先制点を許し、以降は北陸のペースのまま試合を進められていた。同じ轍を踏まないため、前半を無失点で終えるのがこの日のノルマ。「相手はパス回しや足元があるので、一発で飛び込まないように意識した。ゴール前は厚くし、シュートを身体で受け止めようと意識しました」と振り返るDF田中俊平(3年)を中心に手堅く試合を進めていく。

 試合の数日前に北陸の攻撃の要であるMF河合隼人(3年)が怪我をしたため、攻める隙もあったが、カウンターを受けるリスクもあったため、攻撃も慎重になっていた。前半のチャンスはFW谷口櫂我(2年)の浮き球から、MF河原航大(3年)が放ったシュートのみだったが、0-0での折り返しは福井商のシナリオ通りだったと言えるだろう。

 思い通りに試合を運ぶと後半5分にはFW大谷仁人(3年)がスピードに乗ったドリブルで中央を突破し、右サイドの谷口にパス。ゴール前に入れたボールを反対サイドの河原がダイレクトで合わせて先制に成功する。続く6分にはボランチからのパスで右サイドを飛び出した大谷のパスから、谷口がゴールを狙うなど福井商の流れに持ち込んだ。

 だが、時間の経過と共に福井商の中盤の運動量が落ち、FW吉田英生(2年)に前向きでボールを持たれる時間が増えていく。また、後半に入って右SBから一列前に出たDF吉田壮泰(3年)の鋭い仕掛けも受け続ける。何とか凌いでいたが、25分には吉田壮のパスからフリーのFW八木徹汰(3年)に決められ、北陸に同点に追い付かれると、そのまま1-1で延長戦に突入した。

 延長前半も決着が付かず、後半に入ったタイミングで福井商はPK戦を見据え、GK齊川開斗(3年)を投入。読み通りの展開となると、齊川は3本のキックを止めた準々決勝の啓新戦に続いて「成功率は7割ぐらい」と胸を張るPK戦での強さを発揮する。「準決勝と同じように気持ちを沈めて、自分でやるべきことを頭で整理して試合に出た」齊川は指揮官直伝の読みを生かし、1人目のキックをストップ。3本目と5本目も決められこそしたが、ボールに触れてPK職人ぶりを発揮した。頼れる守護神の活躍により、福井商は1-1(PK5-4)で難敵を破り、決勝行きを決めた。

 今年の福井商には過去2年間にはいた絶対的なエースはいない。県内のタレントの多くが丸岡高に進んだ代でもあるため、「1年生の時に俺らの代は弱いし、どうせ勝てないだろうとほとんどの選手が辞めた」(高木監督)。だが、残った部員は素直な選手ばかりで練習すればするほど上手くなっている。今夏はそうした選手たちの特徴を踏まえて、県外遠征には行かず3回に渡って練習合宿を実施。そうした成果が3年ぶりの決勝進出に繋がった。

 不安視されていた代は、「練習すればするほど上手くなるので、僕がやっていて楽しい」と高木監督が笑みを浮かべるまでの代になった。だからこそ、この代の終わりはハッピーエンドしか似合わない。「今まで打倒・丸岡を目指してきたので、120点のプレーをして勝ちたい」。田中が意気込む通り、全国行きの切符を掴み取るのが描くストーリーだ。

(取材・文 森田将義)

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森田将義
Text by 森田将義

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