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「いま積み上げているサッカーが出せた」“プロ基準”で昨季総理大臣杯準Vの大阪学院大、7年ぶりインカレで初戦突破!

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大阪学院大が初戦突破

[12.7 インカレ1回戦 大阪学院大 1-0 九州産業大 第一カッターフィールド]

 第72回全日本大学サッカー選手権(インカレ)は7日、首都圏各地で開幕し、千葉県の第一カッターフィールドでの第1試合は大阪学院大(関西4)が九州産業大(九州3)を1-0で下した。7年ぶり3回目の出場にして初のトーナメント初戦突破。10日の2回戦では、ニッパツ三ツ沢球技場で東京国際大(関東2)と対戦する。

 シュート数は17対1。昨季の総理大臣杯で準優勝と躍進した大阪学院大が着実に強さを見せ、初戦突破を果たした。

 試合序盤は九産大のハイプレスに対し、受けに回る時間も続いた大院大。それでもDF桑本航希(4年=大阪学院大高)とDF舩田陸人(3年=履正社高)のCBコンビと、ボランチのMF山本未来翔(2年=大阪学院大高)とMF箱崎達也(3年=四国学院大香川西高)が絡み、低い位置から打開すると、その後は一方的な攻勢を展開した。

 前半23分、まずはFW澤崎凌大(4年=徳島ユース)からの斜めのパスを受けたFW閑田隼人(3年=広島皆実高)がクロスバー直撃のシュートを放つと、その後も閑田のポストプレーが九産大守備陣を圧倒。同45分には右CKで変化をつけ、DF大野伶(4年=山辺高)が惜しいミドルシュートも放った。

 後半はプレッシングを修正した九産大がFWベ・ジョンミン(4年=駒大苫小牧高/熊本内定)がサイド裏に抜ける形を次々に繰り出し、戦況を取り戻そうと試みたが、大院大の勢いも止まらなかった。後半21分、山本のスルーパスから澤崎がペナルティエリア左を攻略すると、鋭い折り返しにMF関俊哉(4年=静岡学園高)が反応。逆足の左でゴールにねじ込み、先制に成功した。

 対する九産大は失点後、MF松田知己(4年=福岡U-18)とFW軸丸大翔(4年=福岡U-18)の交代選手を入れ、リスクをかけた攻撃にチャレンジ。後半35分には高い位置のボール奪取からべ・ジョンミンが前を向き、強烈なミドルシュートを狙った。だが、これは惜しくも枠外。最後は大院大MF芦高佑(2年=長崎総科大附高)が右ポストを叩く決定的なクロスを上げるなど、最後まで大院大の優勢は揺るがず、スコア以上の内容で初戦突破を決めた。

 大院大を率いるのはかつてガンバ大阪でのプレー経験を持ち、京都サンガF.C.や愛媛FCで監督を務めた實好礼忠氏。昨年は就任1年目で総理大臣杯準優勝に導いたが、今季はインカレでも史上初の初戦突破を成し遂げ、「全体的にいま積み上げているサッカーが出せたので良かった」と手応えを口にした。

 試合中はじっとベンチに座り、選手たちの主体的な修正を促すスタイル。それも日頃のトレーニングでプレーモデルを落とし込んでいるからこそだ。指揮官は「判断も含めて自分達からアクションが起こせるし、試合中もほぼ自分たちでやるので、僕はベンチに座っているだけ。いつもこんな感じですね」と振り返りつつ、サイドを綺麗に攻略した得点シーンには「立ち位置からアクションする再現性のある攻撃で、うちによくある崩しのシーンだった」と太鼓判を押した。

 今季は夏の総理大臣杯出場を逃したが、インカレに7年ぶりの出場。2年連続で全国大会への切符を掴み、またしても歴史を切り拓いた。今季のチームは「昨年足りなかった体づくりのところもトライできている」と昨季の経験も蓄積。「大臣杯に出られなかったのは残念だったけど、いまみんなが行っているサッカーを全国大会で披露したかったのでインカレに出場権が得られて嬉しいし、しっかり表現して結果を出したい」と堂々の姿勢で挑んでいる。

 この日は先発のうち5人が4年生。決勝ゴールを決めた関、アシストの澤崎だけでなく、両サイドの大外で攻撃参加を見せていた大野とDF藤村海那汰(4年=帝京大可児高)、左CBで果敢な持ち上がりと対人対応が光った左利きのDF桑本航希(4年=大阪学院大高)ともに質の高い選手が並ぶが、彼らにとってはキャリアの選択肢を広げるための舞台でもある。

 関西学生リーグのアシスト王で、この日も決勝点をお膳立てしていた澤崎は「少しでも強いチームに行けるようにアピールしたい」と闘志あらわ。實好監督は「サッカーでメシを食いたい選手が多いので、サッカーでメシを食うためのサッカーというのを含め、『これができないとプロには行けないよね』ということも落とし込みながらやってきた。厳しい練習もするけどみんな音を上げずにやってくれている」と選手たちの姿勢を称賛していた。

 そうした指揮官が落とし込む“プロ基準”はコーチングスタッフの陣容にも表れている。GKコーチの松代直樹氏はG大阪でJリーグ通算131試合、コーチの石櫃洋祐氏は神戸や京都などでJリーグ通算370試合の出場経験を持つ元Jリーガー。實好監督は「特にビツはまだまだ動けるし、ボールも蹴れるし、キックは質が違うんでね。選手がそれを見られるし、聞けるし、いろんなことを感じてもらっている」と信頼を口にした。

 今大会の目標は昨季の総理大臣杯で国士舘大に敗れたことで、あと一歩のところで届かなかった日本一。「優勝を狙ってやっています。でも優勝の狙い方も自分たちの中で明確なサッカーができているので、相手がどこであろうとしっかりぶつかっていきたい」(實好監督)。積み重ねてきたスタイルを信じ、全国常連の大学相手にも堂々の戦いを挑んでいくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集

竹内達也
Text by 竹内達也

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