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「現時点で背番号1は福元」、なでしこの正GK争いは最終局面へ

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 正GKの座をめぐる争いも最終局面に入った。ロンドン五輪に出場する日本女子代表(なでしこジャパン)が9日、千葉県内に集合し、11日に東京・国立競技場で行われるオーストラリアとの壮行試合に向け、合宿をスタート。佐々木則夫監督はオーストラリア戦に向けて「GKはどっちも起用しようと思っている」と、GK福元美穂(岡山湯郷)とGK海堀あゆみ(INAC神戸)の両GKを起用する考えを示唆した一方、現時点では福元が一歩リードしていることも明らかにした。

 それは指揮官が自ら決めたという五輪本大会の背番号に表れていた。世界一に輝いた昨年の女子W杯ではGK山郷のぞみが1番、福元が12番を背負い、正GKを務めた海堀は21番だった。その後の五輪アジア最終予選、今年のアルガルベ杯、スウェーデン招待はいずれも海堀が背番号1を任され、福元は12番のまま。それがロンドン五輪では福元が1番、海堀が18番に変更された。

「最近は海堀が1番を獲得していたが、今回、変更した。彼女2人には切磋琢磨しながらやってほしいという思いが強いし、現時点では背番号1は福元という評価。それに対して海堀が気を引き締めて奮起してくれれば、というのもある」

 背番号変更の理由をそう説明した佐々木監督は「日本のキャンプの中で(どちらを正GKにするか)決めていきたいとは思っている」と話し、オーストラリア戦を挟んで14日まで行う国内合宿の中で、福元と海堀のどちらに五輪本大会でゴールを守らせるか決断する考えを示した。

 いずれにせよ、アルガルベ杯やスウェーデン招待でも安定したパフォーマンスを見せた福元が守護神の座に近いのは間違いない。本人も「ここ何試合かは自分らしいプレーがコンスタントに出せているのかなと思う」と手応えは感じているが、背番号1に変更になったことについては「背番号が変わったからといって試合に出られる保証はない。自分自身がやることは変わらない。自分らしく、いつもどおりゴールを守りたい」と平常心を貫く。

 昨年の女子W杯では控えに甘んじ、出番のなかった福元だが、4年前の北京五輪では正GKを務め、全6試合に先発フル出場した。しかし、初のベスト4進出を果たしたものの、準決勝、3位決定戦と連敗。メダルにあと一歩届かなかった悔しさがある。

「去年のW杯はチームとして結果を残せたけど、個人としては何もしていない。試合に出たい気持ちはだれにでもあると思うし、自分もある。北京のことを思い出すと、自分自身ふがいなかったというか、全然世界に通用しなかった。(ロンドン五輪に出場して、北京五輪で)一緒に戦った先輩方に成長した姿を見てもらいたい気持ちもある」

 4年前から成長した部分について福元は「メンタルのところだと思う」と話す。昨年の女子W杯以降、佐々木監督は福元と海堀の2人を併用し、ポジション争いはさらに激しさを増したが、出番が来たときには確実に存在感をアピールしてきた。ピッチ上のパフォーマンスにつながったのがメンタルの成長。そのきっかけとなったのが女子W杯だったという。

「W杯のとき、(同じ控えGKとして)山郷さんと長い時間を一緒に過ごさせてもらって、いろんなことを感じた。ピッチに立つときは、いろんな思いを一回置いて、自分のプレーに集中して試合に入るというのは今も意識してやっている。『いろんな思いは一回置いて、ピッチに持ち込まない方がいい』と山郷さんが言っていた。思いはないといけないけど、そういうのをピッチに持ち込むと、硬くなったり、いい方向にはいかないからと」

 余計なプレッシャーを自分自身にかけず、目の前の試合、ピッチ上のプレーだけに集中する。それは五輪を直前に控えた今も変わらない。「(先発は)監督が決めるので、自分はいつでも自分らしいプレーをするだけ。試合に出られなくても、試合に出られても、チームのために全力を尽くしたい」と力強く誓っていた。

(取材・文 西山紘平)

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