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福西崇史氏が日本代表に提言「ベテランがいた方がいい」

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 選手としては2002年日韓大会、2006年ドイツ大会と2大会連続でW杯に出場。現役時代に培った鋭い戦術眼、物腰の柔らかい解説で人気を博す福西崇史氏に、ブラジルW杯に臨む日本代表の展望を語ってもらった。

―いよいよW杯も目前に迫ってきました。日本代表には大きな期待が集まっています。
「可能性という部分で言うと、今まで以上にあると思っています。日本の調子もいいし、怪我人の問題もありますけど、戦い方がしっかり出来るのであれば、予選突破はもちろん、決勝トーナメントでもいい戦いが出来ると思っています」

―怪我人の部分、ぶっつけ本番になる選手も出てきそうです。
「ぶっつけ本番は正直怖い。監督も計算し辛い部分も多い。使って途中で交代枠をそこで使わなければいけないというリスクも大きい。そこは出来れば避けたい部分ですよね。ここからの1か月は本来、個人として最終調整に入る時期。でも今離脱している選手は無理して早めに試合に出て悪化してしまったら、本番に出れなくなるかもしれないというのが分かっていると思う。そのあたりの葛藤があると思うし、難しい判断になると思う。万全な人でも不安な時期だから、余計に難しいと思いますね」

―メンバー発表は5月12日にされます。いろいろな可能性が考えられる中で、毎回、サプライズ招集という部分に焦点が当たります。
「個人的にはチームが強くなるサプライズであれば必要だと思います。逆に監督が今までの選手で固めたほうがいいと判断すれば、マスコミ的には面白くない選考になるかもしれないですけど(笑)。でも個人的にはベテランの選手がいた方がいいんじゃないかと思います。ただそれは何かがあった時。例えば、1戦目を落としてしまった。僕らもドイツ大会の時は、どうやって立て直すかという時に、それぞれがやってしまっていた。そういうときに経験のある選手がいると違うとは思います」

―2002年の時も中山雅史さん、秋田豊さんの存在が大きかったと聞きます。
「そうですね。サブの選手が腐りかけている時に、その2人が進んで練習することで、サブの選手に声をかけて、それがレギュラー陣にも刺激になっていました。でも基本的には実力で一番強いチームになるための23人を選んだほうがいいと思います」

―逆に若手を帯同させるという意見については?
「今後を見据えるといるというか、経験させることでプラスはあると思う。ただそれは余裕があるのであればでいいと思います。今の状況を見たときに怪我人が多いというのがあるんでね。麻也長谷部内田…。現状では少なくとも3人分はカバーしないといなない人選になるはず。そうすると余裕という部分ではなくなる。さらに有事のためにベテラン枠を優先させるのであれば、若手枠はもっとなくなる。ただ若手枠を否定しているわけではありません。具体名を挙げると、名前も出てますが、柴崎岳(鹿島)、川又堅碁(新潟)、南野拓実(C大阪)。さらにトレーニングパートナーに高校生も入れておこうかという話も出ていますし、それはそれですごく良いことだと思います」

―福西さんは昨年のコンフェデ杯の時にも現地に行かれていました。実際、あの時期のブラジルを体感してみた感想は?
「現地で体感した感想を言うと、全然悪くないという印象です。と言うのも、湿度が高いと言われてますが、日本人は慣れてますからね。だからと言って、そんなに暑くも感じませんでした。問題があるとすれば、移動と気温差ですね。特に3戦目のクイアバ。気温よりも気温差に注意ですね」

―対戦国の分析もお願いします。初戦は6月14日、レシフェでのコートジボワール戦です。
「コートジボワールは言われているように身体能力が高い。ただ組織という部分ではルーズなところも多い。戦い方次第ですが、十分戦えるチームだと見ています。そしてこの試合は昨年のコンフェデレーションズ杯のイタリア戦で試合をしたレシフェであります。経験しているのは大きいと思います。良い戦いをしたイメージもありますしね。雰囲気とか、ホテルもそう。全く知らないところに行くよりも知ってるところのほうがストレスは少ないですしね」

―結果の出た前回大会同様、初戦はアフリカ勢です。
「それも僕はいいと思っています。個を重視するサッカーに対して、日本が準備したそのままの形が出せると思うから。勢いには乗りやすいのかなと思います」

―第2戦は6月19日(現地時間)、ナタルで行うギリシャ戦です。
「ギリシャは逆に組織がしっかりしている。だからこそ、その組織をどう崩すか。それを崩せないのであれば、逆にやられる可能性もあります。ただこの試合は1戦目の結果次第なところもある。もしコートジボワール戦を落としているようであれば、リスクを負って戦わないといけない。そうなると、日本の堅守速攻があだとなる可能性が高い。実力的には日本の方が上だと思いますが、ギリシャ戦はそういう意味では一番難しい戦いになると思いますね」

―そして第3戦は、6月24日(現地時間)のクイアバでのコロンビア戦です。
「コロンビアもコートジボワール同様、個の力が強いチーム。どう組織で守っていくか、どうやって攻めに転じるかといった勝負になる。ただ第3戦はその試合の段階でのモチベーションが大きく影響する。そう考えると、コートジボワール戦の結果が大会すべてのカギを握るといっても過言ではないと思います」

―今回の組み合わせでも個に秀でたチーム、組織で対抗するチームと特色があります。個が勝つのか、組織で対抗できるのか。サッカー界の永遠のテーマかと思いますが、福西さんはそこの部分に深く切り込んだ解説をされています。今回出された本でもその部分が分かりやすく解説されています。
「もちろん、個とか組織とかだけではないというのは分かっています。ただ個が強かった時代、それを抑えるために組織を強くするといった時代の流れがあるのも事実です。そういう見方をすると、また一歩サッカーの奥深さに辿りつく。『こう観ればサッカーは0-0でも面白い』で書いたことを面白いと思ってくれれば、もっとサッカーは楽しくなると思っています。こういう見方が広がれば、日本サッカーのレベルも上がると思いますし、次の世代、そのまた次の世代へと考えが伝わることで、日本サッカーが強くなっていくと信じています」

―最後に改めて今大会、日本代表に期待することをお願いします。
「日本は時代の流れに乗って、成長していっていると思います。ただ世界も同時に成長しています。すべてが歴史になるので、100%を出せるように大会に臨んでほしいですね。選手個人の調子、試合勘など、いろいろ難しい部分もあると思います。今、Jリーグで柿谷曜一朗がゴールがないなどと騒がれていますが、どんな選手にも波はある。何か変えなきゃと焦りにつながるのが一番よくない。よりいい状態を作り上げてほしいと思います」

<商品概要>
■こう観ればサッカーは0-0でも面白い
■著者:福西崇史
■発行元:PHP研究所
■発売日:2014年04月15日
■価格:760円(税別)
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(取材・文 児玉幸洋)

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