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女子W杯“放送なし”の危機…JFA田嶋会長「大きな懸念を抱いている」

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カタールW杯で共に試合を見つめるJFA田嶋幸三会長とFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長

 7月20日に開幕を迎える女子ワールドカップの日本国内での放映権が決まっていない問題で、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長が13日、なでしこジャパン(日本女子代表)のW杯メンバー発表会見の場で「女子W杯が放映されるかどうかわからないことには本当に大きな懸念を抱いている」と危機感をあらわにした。

 国際サッカー連盟(FIFA)は2021年以降、男子と女子のW杯放映権を切り離しており、女子単独で販売されるのは今大会が初めて。オーストラリアとニュージーランドで共催される本大会を約40日後に控えた現状、アメリカや韓国のテレビ局がFIFAと合意に至っている一方、日本の他にもイングランド、イタリア、ドイツ、スペイン、フランスなどの強豪国で放送局が決まっていない。

 こうした状況についてFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、今年3月にルワンダ・キガリで行われたFIFA総会や、5月のWTO(世界貿易機関)主催のパネルディスカッションでたびたび危機感を表明。男女サッカーの平等に向けてFIFAは女子賞金額の引き上げを行っていることを強調しつつ、女子W杯は男子W杯の半分程度の視聴率があるにもかかわらず、各国テレビ局による放映権の提示額が1/20〜1/100程度にとどまっていることを批判していた。

 13日に千葉市内で開かれたW杯メンバー発表会見では、報道陣から田嶋会長に放映権についての質問が向けられた。これに対して田嶋会長は「男子と女子の差をなくしていくという考えは非常に賛同できる。FIFAカウンシルのメンバーとしても、男女差をなくして平等である世界にしていきたいという考えには同意する。今回もそれが反映され、チームに対する賞金や選手に対する賞金も今までにない高額なものになった。その一つの表れ。FIFAが行っていることには同意する」とFIFAの方針自体には賛同する姿勢を示しつつ、現状の認識を述べた。

 田嶋会長によると「テレビ放映権に関してはFIFAと各国のコンソーシアムや、各国のテレビ局が交渉して決めていたこと。日本サッカー協会は今まで全く関わってきていない」といい、放映権の交渉は協会の管轄外。田嶋会長は「日本だけではなく、中国、ドイツ、イングランド、フランス、スペイン、イタリアといった強豪国がまだ契約を結んでいない。アメリカ、韓国がどのような契約をしたかはわからないが、カタールW杯のあたりで契約したと聞いている」と他国の例を挙げ、「いまは放映権が日本の市場価値とまだ結びついていないために、放映する局が決まっていないということ。放映されるかどうかわからないことには本当に大きな懸念を抱いている」と危機感を示した。

 続けて田嶋会長は今月に入り、トルコ・イスタンブールでドイツ、イングランド両協会と面会したと明かし、両国でも「全く同じ状況になっている」と指摘。「各国協会が関わることは今までしていないし、関われない。FIFAとテレビ局がやっているが、進捗状況としてはまだ動いていないと聞いている。つい最近もFIFAが日本や中国を訪れたと聞いているが、その交渉状況も詳しいことは私たちには聞かされてない」と葛藤をのぞかせた。

 また「聞かされていないというのはまだ決められないということ、つまり(条件に)隔たりがあるということだと思う」とした上で、今後の対応については「W杯までにどういう形になるのかは別として解決していただき、テレビを多くの国民の皆さんが見て、そしてなでしこジャパンを応援して頂けるようわれわれも望んでいるし、われわれができることがあるとすれば何なのか、そのことも含めて考えていきたいと思っている」と述べるにとどまった。

 加えて田嶋会長は「しっかりと放映されない、見ることができないというのはあってはならない」とも断言。もし放映権の交渉が締結されない場合、FIFAの公式ストリーミングサービス『FIFA+』で日本国内向けに無料放送される形になるようだが、「日本語解説もないし、そういう中で今まで興味を持っていなかった方々や、なでしこが応援したくなったという方が、あえてFIFA+に入るっていくかはわれわれも疑問。サッカーを好きな方なら入ってみようと思ってくださるかもしれないが、地上波でやることの大切さを僕らはしっかりと訴えていきたいと思っている」と地上波放送の意義を訴えた。

 さらに続けて「FIFAもそのことはわかっている。地上波で放送することを前提に今も各国と最後の詰めをしていると聞いている。FIFAからは楽観的とは言わないが、しっかり解決するというコメントを聞いている」と説明。「ただ他のアソシエーション(協会)の状況を聞くと、日本も歩み寄って最終的な交渉に入っているとは聞いていない。ここから1か月半、日本は(テレビの)編成とかがあるので今だってギリギリのタイミングだと重々わかっている。国によってはすぐできるところもあるかもしれないが、そういう状況であることはFIFAに伝えた上で、なんとかこの契約がしっかりして頂けるようにしたい」と残り1か月あまりでの交渉妥結を求めた。

(取材・文 竹内達也)
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