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「好調という名の麻薬」10連勝で止まったイラク戦敗北を外から冷静に見た中山雄太「そういう選手が起爆剤に」

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日本代表DF中山雄太

 ここまでの2試合は出番のなかった日本代表DF中山雄太(ハダースフィールド)が、アジア杯グループリーグ最終戦となるインドネシア戦に向け、「(調子は)バッチリ。起爆剤になりたい」と、出場と勝利へ意欲を燃やした。

 ドーハ入り当初は別調整の日もあり、14日のベトナム戦(○4-2)はベンチ外。19日のイラク戦(●1-2)はベンチ入りしたものの出場機会はなかった。チームはこの間、2試合とも2失点。苦しい戦いが続いている要因について報道陣から意見を求められると、「そもそもセットプレーにしないこともそうだし、失点シーン以前の問題もあると僕は思っている」と指摘した。

「(イラク戦は)失点してから試合運びが難しくなっていたけど、僕のイメージでは一歩、半歩、相手から遠かった。ルーズボールが相手に転んだり、ファーストコンタクトのところでもあまり勝てていない。ベーシックな部分が僕の中では問題かなと思っていた」

 中山はこれらの課題について、イラク戦2日後に行ったミーティングで発言。「僕が今ここで発言することで、これらを全員でもっと意識しましょうという意図があった」という。

 インドネシアについては「イラクよりも若い選手が多いので、前線に来る力強さ、フレッシュさがあるイメージ。それに加えて、帰化している選手も何人かいるので、足元の技術があり、ビルドアップの部分でもしっかりサッカーする。ビルドアップをしっかりしてくるので守備的ではない5バック」とイメージを説明した。

 出場するなら左サイドバックの位置でリーダーシップを発揮したいという意欲も示した。

「相手はどの試合も立ち上がりにプレッシャーをかけてくる。そこに立ち向かうのか、もしくはクレバーにやるのか。そういう判断は自分から発信していきたい。あとは攻めているときのネガトラ(ネガティブトランジション。奪われたあとの攻撃から守備への切り替え)の部分は、自分が意識しているところ。自分たちの攻撃の時間を長く、相手のゴールに近い位置でプレーできるシーンを増やすようなポジション取りはここ数試合できていないので、意識したい。僕がそれを引き出したい」

 イラク戦では国際Aマッチの連勝記録も10でストップ。1対1のところで「半歩遠い」と指摘したことについては、言葉を選びながら「だれも気が緩んでいるつもりはないけど、僕は好調という名の麻薬だと思っている」と独自の例えで表現した。

「なんか半歩遠いなとか、前とちょっと違うなとか、自分が出たらもっと半歩近い方がいいなと思って見ていた。“麻薬”というのは僕の比喩。出ていない選手や俯瞰している選手がいるからこそ、そういう選手が起爆剤になれれば良いと思うし、大会とはそういうものだと思う。26人で戦うところではそういうことが必要になってくる」

 左サイドの連係も重要になる。ベトナム戦で決勝点を決めたMF中村敬斗(スタッド・ランス)について聞かれると、「今大会では組んでいないけど、練習では(中村)敬斗と組む活動が多かったし、以前の代表活動でもやってきた。彼の特長は一枚はがしてからのシュート。彼が攻撃する時間をできるだけ増やすことが自分には求められている。できるだけ敬斗を下げさせない守備。そのためには1対1で負けない、もしくは2対1でも負けないということがあると思う」と、できる限り攻撃に専念させるつもりだ。

 公式戦出場は元日のレスター・シティ戦が最後。ドーハでの合宿が始まってからも別調整の日があり、本格的に練習できたのはベトナム戦の前日からだった。「少しの間、別メニューだったが、その準備が実を結ぶと思って信じてやってきた。期待していてください」。力強くそう言った。

(取材・文 矢内由美子)

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矢内由美子
Text by 矢内由美子

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