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横浜FCvs鳥取、勝敗を分けた切り替えの速さ

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[7.22 J2第25節 横浜FC 3-1 鳥取 ニッパ球]

 横浜FCの大きな変化を感じ取っている選手がガイナーレ鳥取に、いた。08年から10年まで横浜FCに在籍していたDF戸川健太である。前半の45分のうちに変化を感じ取っていた彼は、ハーフタイムにチームメイトに注意を促したという。しかし、結局、勝敗を分ける1点は、戸川が警戒した形から生まれた。

「前半が終わった時点で、相手の(攻守の)切り替えの部分について僕は言っていたんです。『相手はリスタートを始めているから、(審判に)文句を言っている場合ではない』って。それを実行できず、まさにその形で失点してしまいました。もったいない部分もありますが、相手が上だった」と戸川は振り返る。

 勝敗を分けた1点が決まったのは、後半30分のことだった。その直前、鳥取のFW久保裕一が右サイドからのクロスに合わせて、ゴールネットを揺らした。鳥取の選手たちはゴールが決まったものだと喜び始めていた。

 しかし、横浜FCのGKシュナイダー潤之介はクロスが入った時点で、オフサイドを確信していたという。前半34分にも似た形があった。このときも、サイドからのクロスを久保に合わされて、ゴールネットを揺らされた。しかし、久保の位置はオフサイドであり、得点が認められていなかった。

「堀之内(聖)が90分間、常にラインコントロールをしてくれている。それこそクロスが上がる、ずっと前から。だからDF4枚のバランスが良い。1枚でも(DFが)下がっていると、オフサイドにならないし、ああいうオフサイドが取れているのは、最終ラインがすごく良い状態ということ」とシュナイダーは胸を張る。後半30分の場面も、最終ラインより手前に久保がいることが確認できていた。

「相手が喜んでブワーッて走って行ったので『これはチャンスだ』と思って、僕はボールを取りに行ったんです。(杉山)新も感じて前に走っていたので、僕と新で『すぐに始めよう』と意思疎通をして、近くにレフェリーがいたので『すぐに始めますよ!』と声を掛けました」

 そこからは、一気だった。シュナイダーからボールを受けたDF杉山新は右サイドのスペースをドリブルで敵陣PAの手前まで突き進み、CBを引き出してからMF武岡優斗にパスを出した。武岡の背後からも次々と横浜FCの選手たちが攻め上がってくる。最終的に横浜FCは、鳥取のゴール前で6対3の数的優位をつくっていた。約70mの距離を駆け上がり、左サイドでフリーになっていたDF阿部巧に武岡からのパスが通ると、阿部はGKの股間を抜くシュートを決めた。

 戸川が変化を感じたと話す切り替えの部分は、横浜FCが練習から取り組んでいたことでもある。「今日は切り替えのところが勝負だよ、とゲーム前にも話していました。トレーニングのときからもあまり流れを止めずに、僕が笛を吹いてストップと合図するまで続けさせています。あの2点目の場面、選手たちは僕のストップの合図が聞こえなかったので、プレーを続けたんじゃないかな」と山口素弘監督は笑顔で語った。

 チームに浸透した切り替えの速さで2点目を挙げた横浜FCが、確実に勝ち点3を上乗せした。

(取材・文 河合拓)

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