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信頼の左サイド起用に「やるしかない」と奮起、筑波大卒ルーキー神戸MF山内翔がプロ初先発初ゴール!!

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ヴィッセル神戸MF山内翔

[4.13 J1第8節 町田 1-2 神戸 国立]

 期待のスタメン起用に結果で応えた。ヴィッセル神戸MF山内翔はプロ初先発となった町田戦の前半45分、味方のシュートのこぼれ球をペナルティエリア内左で拾うと、冷静に右足シュートを沈めてプロ初ゴールを記録。拮抗した国立決戦で価値ある先制点を奪い、首位撃破に大きく貢献した。

 神戸U-18出身で筑波大を経て今季加入した22歳のルーキーにとって、開幕8戦目でついに巡ってきたプロ初先発のチャンス。託されたポジションは本職のボランチではなく、負傷者が相次いだ影響で空席となっていた左サイドハーフだった。

「練習からパフォーマンスが良かった」と起用理由を明かした吉田孝行監督によると、山内に託したのは「ウイングバックっぽく」振る舞うプレー。これまでは本職SBの広瀬陸斗を同じポジションで起用する試合もあったが、「陸斗みたいな役割ができる選手は誰かなと考えた時、山内が一番いいかなと考えた」と信頼を感じたという。

 もっともルーキーの初先発としては珍しい本職外での起用。それでも第5節・札幌戦でJリーグデビューを果たすも、その後は出番のなかった山内にとっては貴重なチャンスとあり、新たなタスクに臨むモチベーションは高かった。

「いつもと違うポジションなのは数日前からわかっていて、自分のできることと監督が求めることをやるしかないと思っていた。チームとして求められていることをやらないといけないと思いながら試合に向けて準備ができた」

「普段と違うので難しいところはあるけど、自分の立場もあってやるしかないと思っていた。自分がこういうところだったら合わないと思うより本当にやれることをやるしかないと思っていた。普段と違うというのは言い訳にしかならないので、求められていることをただただやるしかないと思っていた」

 序盤は「町田さんの圧力にアジャストするのに時間がかかった」と振り返ったように、チーム全体が押し下げられ、山内にボールが入る回数は少なかった。またボールを受けてもパスミスが続く時間も見られた。それでも山内は「終わったことを反省しても仕方ないと思っていたし、上手く割り切っていた」。ミスを引きずることなく、見事に結果を出した。

 得点は0-0で迎えた前半45分、FW宮代大聖のドリブル突破が起点だった。ペナルティエリア右で宮代がFW武藤嘉紀と絡む間に、山内は「チームとしての約束事」というゴール前のスペースへ。武藤のシュートのこぼれ球にいち早く反応し、最後は冷静に右足で蹴り込んだ。

「うまくボールが流れてきて、時間もあったので、周りの状況もクリアに見えていたし、狙ったところに上手く流し込めた。チームとしても大きい先制点だったし、タフなゲームで先制点を取れたのは大きかった」。初先発でのプロ初ゴールは、チームにとって貴重な先制点。その後は終盤に両者1点を取り合う形となったが、山内の1点が大きく勝負を分けた。

 またチームにとっては、FW大迫勇也不在で臨んだ試合での先制点という点でも価値の大きなゴールだった。「(主力不在という)こういうことは絶対にある。出た選手がチームの力になるしかないと思っていた。試合前から結果を残してやろうと意気込んでいたわけではないけど、自分として初めてのスタメンだったし、そこに向けて準備をしてきたつもりだった。そこで一つ結果を残せたのはよかった」(山内)。期待のルーキーが選手層の厚さを示した。

 それでも山内は試合後、自身のパフォーマンスに厳しい言葉も口にした。「まだまだプレーを振り返ればダメ。ミスも多かったし、ストロングのところでいいプレーができたかはどうだったかなと思う。普段と景色が違うというのもあるけど、せっかく前で出ているからには攻撃のところでもっとチームの力になりたい」と課題を掲げた。

 またポジションがどこであるかに関係なく、効果的な上下動を続けていく運動量の必要性も感じたという。「サイドであれ、中盤であれやらないといけないことは変わらない。今までやってきたこととは全く違うけど、それをやれた上で自分ができることを出さないといけない。まだまだそういうところにおいても物足りないと思っている。今はそういうところを反省して、次の試合のために準備したい」

 山内は4年前、神戸U-18からトップチームに昇格できなかった悔しさを味わっており、これが4年越しの先発デビューとなった。それでも大きな一歩を刻んだこの日印象づけたのは、過去を振り返る感慨よりも前を向こうとする姿勢だった。

「筑波に行っていなかったら今の自分はないし、今日もスタンドには同期の仲間たちが応援しに来てくれていた。そういう人と出会えたのも大学の良さだと思うし、大学で4年間、自分の足りないところを必死でやりながら取り組めたのが良かったと思う。筑波の4年間がなかったら今日を迎えられなかったし、自分自身のこともそうだけど、今までのことに感謝したい」

 ゴールという大きなインパクトを残したことも、心のうちに感じた課題も今はまだ通過点。「結果として出たのはよかったけど、これからだなと思う」と決意を新たに次の試合を見据えた。

(取材・文 竹内達也)

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