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F東京 DF椋原「札幌戦も『シュート打て』コールが出ると思う」

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 初のACLに参戦しており、連戦明けには主力にもやや疲労が見えたFC東京。その中にあって一際、元気な選手が、いる。ACLの第5節のブリスベン・ロアー戦(4-2)で左SBに入り、富士ゼロックス・スーパー杯以来のスタメン出場を果たしたDF椋原健太だ。続くリーグ戦の新潟戦(2-0)では、右SBとしてフル出場し、チームの公式戦2連勝に大きく貢献した。

 ブリスベン・ロアー戦では1-1で迎えた前半20分、ゴール前に走り込み勝ち越しゴールを挙げている。冷静に試合に入れたのかと思いきや、実は「いっぱいいっぱいだった」と明かす。「久しぶりの試合ですごくきつかったんです。緊張しすぎてか、試合中に水を一度も飲めなくて。というか、飲むのを忘れてしまって、最後の方は足がつってしまっていたんです」と苦笑する。昨季J2で26試合に出場しているにも関わらず、初々しい。

「1試合、公式戦を挟むと落ち着くなと思いましたね」という新潟戦は「『水を飲まなきゃいけないんだ』と思って、ちゃんと水分補給ができて、たくさん走ることができました」と再び笑う。それにしても短期間で左、右とサイドが変わることに戸惑いはないのだろうか。「右はやりやすい。すっごいやりやすい! 縦に出して、思いっきり縦に走って、またボールを受けて右でクロスを上がられるから、すっごいやりやすかった」と言い、慌てて「もちろん左でも良いですよ。なぜか点を取れるし」と付け足す。

 出場を続けたいから「左も」と付け加えたわけではない。なぜ左で点を取れるているのかも、自身の中では分析できている。「(左サイドだと)中に行かないと自分の良さが出せないと分かっているので、ゴール前まで行くんです」と話す。昨シーズンまで、ほとんど左サイドでプレーする機会もなく、クロスには右足ほどの自信があるわけではない。だから、敵陣深くまで走る。そして、逆サイドからのクロスに飛び込み、フィニッシャーになる。自身の結果を求めたブリスベン・ロアー戦の一撃は、その考えが生んだものだった。

 新潟戦でも2得点、両方に絡んだ。1点目は先の言葉のように、FWルーカスとのワンツーで右サイドを攻め上がり、折り返したボールをMF梶山陽平が決めた。2点目も椋原のロングスローが、ゴール前のMF谷澤達也の前にこぼれて、追加点につながった。「チームにとって大きな安心になった2点目は大きかった」と話すが、実はロングスローにも裏話がある。

「それまでは(ロングスローが)全部ルーカスのところにちゃんと入っていたのですが、あのときだけはルーカスのところに行かなくて『ズレた。やべー!!』と思ったんです。ロングスローは思いっきり投げるから、結構、(ピンポイントで)狙いにくいんですよね。でも、狙いどおりに通ったときに点にならなくて、狙いと違うところに行ったときに点になったので、そういうこともあるのかなと学びました」

 オフ明けの9日の練習でも、椋原は主力組の右SBに入っていた。札幌戦に向けて「(昨年の)最終節の借りを返す」と意気込んでいる。「最少得点差で負けている印象があるんですよね。1点差のゲームが多いし、守ってくると思う。相手には昨年、J2の最終節で勝った良い思い出があると思うので、しっかりと昨年の借りを返す」と力を込める。

 相手が引いた場合、スペースがなくなるため、高い位置に入ることは難しくなる。しかし、札幌戦でも敵陣深くからチャンスをつくりたいと意気込む。

「うちはアーリークロスが入る印象がないというか、中の選手もあまり欲しがらない。たとえば柏とかは、FWが一枚行って、その後にもう一人のFWが行って、さらにSHも行く。(クロスを上げるのが)楽しいだろうな、こんなに入ってきてっていう感じですけどね。うちの場合は、前の一枚にピンポイントで合わない限り、(アーリークロスは)得点にならない。だから深い位置からマイナスのクロスを狙います」。

 試合のイメージは、しっかりとできている。「うちがアーリアくん(長谷川アーリアジャスール)、カジくん(梶山)でずっとボールを回して縦パスを入れるけど、やり直すっていう展開になります。サポーターから『シュート打て!!』コールが出てくると思いますが、誰かがどこかで大胆なことをやらないといけませんよね。1点取れれば、相手も前に出るから楽になると思います」と展開を予想した。待ち続けた出場機会をつかみ、水を得た魚のごとく、サイドで躍動する椋原が、札幌戦でも大胆にF東京の攻撃サッカーを彩っていく。

(取材・文 河合 拓)

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