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あるべき姿を取り戻した伝統校…四中工が宇治山田商下して三重制覇、2大会ぶり30回目の総体出場!!

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2大会ぶり30度目の総体に臨む四日市中央工高

[5.29 インターハイ三重県予選決勝 四日市中央工高 5-1 宇治山田商高 三重交通Gスポーツの杜鈴鹿]

 29日、令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技三重県予選決勝が行われた。四日市中央工高宇治山田商高に5-1で快勝し、2大会ぶり30回目のインターハイ出場を手にした。

 県勢最多の選手権出場回数を誇る四中工だが、今年の3年生が入学してからは全国の舞台から遠ざかっていた。試合内容が悪くなくても勝てなければ選手は自信を失い、四中工本来のアグレッシブな姿勢は失われていく。昨年の選手権予選はベスト4まで進んだが、ピッチに立っていた今年の3年生はごくわずか。ベスト4以上の試合が行われる三重交通Gスポーツの杜の雰囲気を知る選手がいなかったため、前日に同じ会場で行われた準決勝では浮足だったプレーが目についた。全国行きの切符を掴んで、四中工が本来あるべき姿を取り戻すのが、この日のミッションだった。

 また、もう一つ負けられない理由があった。樋口士郎前監督時代から、25年に渡ってトレーナーとしてチームを支え続けた村松正英氏が今年3月にすい臓がんのため、亡くなった。多くのOBが信頼を寄せ、チームになくてはならない存在だった人物。村松氏が愛用していたイニシャル入りの帽子を被って試合に挑んだ伊室陽介監督だけでなく、チーム全員が今も村松氏と一緒に戦っている気持ちは強い。良い報告をするためにも、絶対に勝たなければいけない一戦だった。

 延長戦までもつれた前日の津工高戦とは違い、この日は試合序盤から四中工は飛ばしていく。「自分たちは前からのプレスでボールを奪って、攻撃に繋げるのが特徴。今日はそれが前半から出せた」と話すのは、主将のDF野崎峻大郎(3年)。ボールを奪ったら、後方の選手が前方をどんどん追い越し、厚みのある攻撃で宇治山田商のゴールに迫り続けた。

 前半15分には、MF川北琉雅(3年)の展開から、右サイドのDF古谷柊飛(3年)がクロス。後方から一気にゴール前へと走り込んだ野崎が頭で合わせるも、シュートは枠を逸れた。同17分には右サイドのスローインからFW平尾勇人(3年)がシュート。こぼれ球をMF加藤源大(3年)が狙ったが、DFに阻まれてCKとなった。

 押し込みながらも1点が遠かったが、前半20分にはサイドチェンジから左のMF平野颯汰(2年)に入ると、素早く中央にスルーパス。タイミング良く抜け出したMF岡本海里(3年)がドリブルから右足シュートを決めて、四中工が先制した。この1点で勢いに乗ると同26分には右CKから、川北がヘディングでのゴールをマーク。同35分には岡本のスルーパスから抜け出した平尾がGK荒木天聖をかわしてゴールネットを揺らした。

 3-0になってからも勢いは止まらない。後半4分にはCKのクリアを受けた平尾が左前方に展開。走り込んだ野崎のクロスを平野がゴール前で受けた。そこから後ろに下げると反応したのは、川北。「こぼれてきたら打とうと決めていた」と振り返る一撃が決まって、4点差となった。

 スコアが開いてからは、技術力の高いFW石橋和空(3年)の仕掛けや、前半終盤から投入されたFW光田向志(2年)のスピードによる宇治山田商の攻撃を受ける場面もあった。後半16分には石橋のパスから、右サイドに侵入したMF濱口颯馬(2年)の低いクロスがオウンゴールとなったが、それ以外は危ない場面を与えず。試合終了間際には再び攻勢に出て、MF岩田楓太(3年)が5点目をマークするなど、相手を圧倒して試合を終えた。

 記念すべき30回目の選手権出場を掴んだ以上に、久々の全国大会出場が選手に与える心理的なメリットは大きい。「今日の勝利は大きい。自信を持って、本来あるべき姿に戻れる。高校生は1試合で急激に変わります。昨日、延長戦を戦って逞しくなりました。で、今日勝って普段の四中工が持つ伝統校の心理状態になれたと思います」。そう口にするのは、伊室監督だ。本来の力を出せば、結果を残せると選手が知った事も大きい。「最近の四中工は良い結果を残せていない。強い時の四中工はベスト8ぐらいに入っていた。出るからには結果を残したい」と意気込む川北を中心に全国でも結果を残して、強い四中工の姿を見せ付ける。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2022

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