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[MOM3795]磐田U-18DF李京樹(2年)_攻撃的右サイドバックが終了間際の劇的決勝弾で、ダービー勝利とヒーローインタビュー!

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ジュビロ磐田U-18の攻撃的右サイドバック、DF李京樹

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.9 プレミアリーグWEST第2節 磐田U-18 2-1 清水ユース ゆめりあ]

 時計の針は既に90分を回っていた。もうあとチャンスは多くても1回か2回だ。それなら、行こう。仲間を信じて、自分を信じて、とにかく前へ。

「最後は結構ウチも疲れていましたし、相手側も疲れていたので、最後に走れば必ずチャンスは来ると考えていて、しっかり走り込んだ結果、ああいうゴールができたと思います」。

 3年ぶりにプレミアリーグで開催された伝統の静岡ダービー。白熱の好勝負に決着を付けたのは、ジュビロ磐田U-18(静岡)の右サイドバック、DF李京樹(2年=FC多摩ジュニアユース出身)が後半アディショナルタイムに繰り出した一振りだった。

 失点は自分のサイドからだった。清水エスパルスユース(静岡)との重要な一戦。お互いリズムを掴み切れない中で、先にゴールを奪ったのはアウェイチーム。李が配された磐田U-18の右サイドから上げられた折り返しを、ダイレクトでゴールに叩き込まれる。

「カウンターの形で、こっちが2対1だったところで、相手の左サイドバックの選手が上がってきて、こっちのサイドから点を獲られたので、自分もゴールかアシストで返したいなと思っていました」。やられっぱなしでいるわけにはいかない。絶対にやり返す。強い気持ちを携えて、必死に気持ちを切り替える。

 後半36分。相手陣内でボールを引っ掛けたFW伊藤猛志(3年)が同点ゴールを奪う。流れは間違いなく自分たちにある。効果的に攻撃参加し、全精力を注ぎ込むその時を見極めるために、タイミングを虎視眈々と狙っていた。そして、45+4分にその時が訪れる。

「正直相手のディフェンスが上手くて、なかなか抜けなかったので」、李はいったん右サイドから中央へボールを付ける。待っていたFW河合優希(1年)は冷静だった。「アイツは初プレミアでしたけど、試合後に話したら、『2人に囲まれながら、遊び心を持って股を抜いたら通った』と言っていたので、凄いなと思いました(笑)」と李が話したように、河合のスルーパスが自らの足元にきっちり届く。

「1回預けて走ったら良いボールが来て、そのあとはたぶん相手がクロスを意識していたので、シュートを打ってみようかなと思って」右足を振り抜くと、直後にボールがゴールネットへ飛び込んでいく光景を確認してから、歓喜に沸くチームメイトたちが待つピッチサイドへと、全速力で走っていく。まさにドラマチックな決勝ゴール。静岡ダービーという特別な試合の主役は、プレミア初得点でチームに大きな歓喜をもたらした。



 そのゴールを決めた時、李の脳裏にはいろいろな人の笑顔が浮かんでいたという。「ゴールを決めた瞬間はお父さんと、(FC多摩でチームメイトだった)名古屋グランパスU-18の(貴田)遼河と、遼河のお父さん、コーチやスタッフのことを思い浮かべて、『やってやったぞ』と。あと、自分を使ってくれた前田(遼一)監督とスタッフと、準備してくれた子たちのことも思いました。去年は全然試合に出られていなかったので、正直準備も『面倒だな』と思ったこともあったんですけど、そういう選手たちの気持ちも分かっているので、ゴールを決められて良かったです」。自分1人で戦っているわけではない。多くの人の想いが彼の背中を押したことも、間違いなさそうだ。

 注目度の高いゲームで主役をさらった李は、少なくない報道陣に囲まれてヒーローインタビューに応じていた。「ちょっと恥ずかしいというか、自分は喋るのが下手なので、緊張と不安がありました。ちょっとテンションが低いとか、反応が薄いとか結構言われているので(笑)」。そうは言いながらも、真摯に1つ1つ回答していく姿も実に微笑ましい。

 今シーズンからレギュラーを勝ち獲っている理由を問われ、答えた言葉にも初々しさが滲む。「自分でもよく分からないですけど、今は試合に出られているなと(笑)。ただ、自分がボールを受けて、サイドを崩しながらとか、自分たちのやりたいことを相手に合わせずに貫き通していくスタイルが自分に合っていると思います。やるべきなのは攻撃で上がってクロスを上げたり、シュートを打ったり、そういう攻撃の厚みをもたらして、攻撃力を上げる役割ですね。攻撃、大好きです!」。

 磐田U-18に現れた攻撃的右サイドバックのニューヒーロー。今はまだ蕾のような段階だが、このまま試合に出続けることができれば、シーズンが終わる頃には大輪の花を咲かせ、主役の座を堂々と担っていても、決しておかしくはない。

(取材・文 土屋雅史)

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