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自身を鼓舞しながら走り、戦った90分間。C大阪内定の神村学園MF大迫塁がC大阪U-18との激闘で涙の勝利

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神村学園高(鹿児島)のC大阪内定MF大迫塁主将

[12.9 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ2回戦 C大阪U-18 1-2 神村学園高 広島一球]

 後半半ば、キッカーとして右CKに向かう背番号14が、自らの拳で胸を2度3度と強く叩いていた。そして、自身を鼓舞するように「やれる!」「やれる!」の言葉。その表情は普段見せないような鬼気迫るモノだった。

 試合後、神村学園高(鹿児島)のC大阪内定MF大迫塁主将(3年=神村学園中出身)はこのシーンについて、「足、死んでいたので自分を鼓舞していました」と明かす。この日、神村学園は珍しくボールを支配される展開。序盤はクラブユース選手権優勝チームの“格上”C大阪U-18のポゼッションに全く対応できず、前半10分に失点し、その後もボールを奪えない時間帯が続いた。

 その中で大迫の運動量も自然と増加。加えて、この試合が初戦のC大阪U-18に対して神村学園は2日前に1試合を戦っている。それでも、相手の縦パス、斜めのパスに慣れたチームは、前から行く形でボール奪取の回数を増加。神村学園は各選手が2度追い、3度追いも厭わずに懸命にボールを追い、マイボールにして攻撃に出ていく。

 前半終了間際と後半20分のゴールによって逆転に成功。だが、大迫含めて各選手の疲労はピークに達していた。勝ち越し後は再び相手に押し込まれる展開。それでも、「プレミアリーグへ行きたい」「1年間やり続けてここで負けたら意味がない」(大迫)という思いが各選手の身体を突き動かした。

 大迫は世代を代表する左利きのプレーメーカーだ。攻撃を作る力に加え、ゴールに近い位置など狭い局面での精度、視野の広さも異質のものがある。だが、この日は攻撃面を自重。その分、懸命に走り、チームをサポートした。中央、サイドの局面に顔を出して相手にプレッシャーを掛け、奪ったボールを運ぼうとする。

「この一年で一番だった」という集中力。大迫だけでなく、神村学園は3年生が気持ちの伝わるようなハードワークを90分間貫いた。身体を投げ出すように相手をブロック。競り合いでは一歩でも、半歩でも前に出ようとした。

 そして、2-1で試合終了の笛が鳴ると、大迫は涙を流しながらチームメート、そして有村圭一郎監督と抱擁した。「本当はもっと攻撃に係わりたくてフィニッシュも打ちたかったけれど、なかなか厳しい状況だった。前の選手に託しながら、きょうは焦れずにやっていくと。仲間のために、チームのために、走った。(勝って)ホッとしました」。全力を出し尽くして勝ち取ったプレミアリーグ参入権。主将は後輩たちにその権利をプレゼントできたこと、そしてC大阪U-18に勝利したことを素直に喜んだ。

 プレミアリーグプレーオフの組み合わせが決定した12月5日、大迫はC大阪のメディカルチェックに臨んでいたという。「(来季からチームメートになる北野)颯太と話したんですけれども、まさかまさかで」C大阪U-18と同組。だが、「やりにくさとか全くなかったです。ここ勝っていければ、優先順位的に自分が(トップチームでも一つ)チャンスを掴める」。自分のチャンスと捉えて戦い、勝利。大迫は試合後、先頭に立ってC大阪U-18のサポーターの下へ向かい、挨拶し、エールを受けていた。

「温かい声を頂いて、自分自身凄く励みになったし、よりセレッソのためにプレーしたいという気持ちになりました」。神村学園の選手として公式戦でプレーするのは最大でもあと5試合。自身3度目の選手権が最後の戦いとなる。

「選手権って楽しむ場所だと思うし、最後だからこそガチッとなりすぎずに楽しんで、負けたら負けたで。(でも)ウチのサッカー、仲間だったら負けないと思っているので、楽しくやりたいです」。この日は強敵・C大阪U-18相手に守備面を重視する戦いとなったが、選手権ではより自分の特長を発揮し、楽しんで勝つ。


(取材・文 吉田太郎)
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