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[MOM4288]神村学園DF吉永夢希(3年)_プレミアでも輝く圧倒的なクオリティで敵将も脱帽する珠玉の3アシスト!

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神村学園高のスペシャルなレフティ、DF吉永夢希(3年=ソレッソ熊本出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.13 高円宮杯プレミアリーグWEST第6節 神村学園高 4-1 履正社高 OSAKO YUYA stadium]

「周りが点数をちゃんと獲れていれば、6アシストや7アシストしていてもおかしくなかったですね」という指揮官の言葉は、決して大げさではない。それが強い雨が打ち付け、強い風が吹き付けるピッチコンディションで披露されるのだから、ちょっと手に負えるレベルではない。

「前半で勝負を決めるぐらいの勢いで自分はやっていて、『1アシストしたら、もう1アシスト行けるかな』と自分の中では思っていたので、『自分に出せ』という声を出していましたし、もう自信満々でやっていました」。

 ほぼ30分間で集めた珠玉の3アシスト。世界を見据える神村学園高(鹿児島)の圧倒的な才能。DF吉永夢希(3年=ソレッソ熊本出身)の左足がそのクオリティを眩く証明してみせた。

 履正社高をホームに迎えたプレミアリーグWEST第6節。開幕からの5試合で17ゴールを奪っている神村学園の攻撃力が、この日も前半から爆発する。まずは12分にセットプレーから先制点を奪うと、そこからは左ウイングバックが一際輝いていく。

 13分。カウンターからFW西丸道人(3年)が左へ展開すると、少し縦に運んだ吉永にはその後のイメージがハッキリと湧いていた。「キーパーとディフェンスの間に速いボールを入れることを意識していたので、良いボールが流せたと思います」。グラウンダーで打ち込んだのは、走ったMF平野あいと(3年)が触るだけの完璧な軌道。まずは、1アシスト。

 38分。MF福島和毅(1年)が左サイドへ流したボールから、ドリブルを始めた吉永は試合前の会話を思い出していた。「道人が試合前から『ファーに流れればフリーになる』と話していたことを頭に入れていたので、(名和田)我空がニアで潰れてくれて、そこに速いボールを流したら、道人がファーにいてくれました」。西丸は15番から来たボールを押し込むだけ。続けて、2アシスト。

 45分。ここも時間を作った西丸が左へ振り分け、受けた吉永は中央の状況を冷静に見極めていた。「我空がファーに流れたのが見えて、そこに蹴ればGKと1対1でしたし、余裕を持ってクロスを上げられたのかなと思います」。MF名和田我空(2年)は確実に左足で右サイドのゴールネットへボールを流し込む。とどめの、3アシスト。

 これには履正社を率いる平野直樹監督も「吉永くんのクロスとか、西丸くんのプルアウェイからのファーサイドとか、彼らは自分たちの特徴のパターンを持っているので、今日は相手を褒めるべきなのかなと。予想以上に吉永くんのクロスが良かったです。間違いなくあれでやられましたから」と脱帽の体。倍近いシュートを打たれるなど、神村学園にとっても決して楽な内容ではなかっただけに、吉永のスペシャルな3アシストが勝敗を大きく左右したことに疑いの余地はない。

 これでプレミアでは7アシストを記録しているが、そのうちの3つは西丸へと合わせたクロス。「夢希とはお互いわかり合えていて、『オマエだったらどう思う?』という時に同じ意見だったりすることが多いですし、チャンスのシーンを見た時も『ここはこうだよね』というところを言ったら、次の試合はそこにくれたりと、やりやすい関係だと思っています」と西丸が話せば、「アイツにクロスを上げれば、だいたいの確率で点を獲ってくれるので、自分はそこに合わせるだけで全然OKだなって(笑)。頼もしいですね」と吉永も笑顔。神村学園が誇るホットラインは、プレミアの舞台でも十分過ぎるほどに通用している。

 中学時代は熊本の強豪クラブとして知られるソレッソ熊本でプレーしていたが、「一番最初に今村先生(今村龍介・現神村学園中等部女子サッカー部監督)が声を掛けてくれましたし、あとは1つ上に(大迫)塁さんと(福田)師王さんがいるのは知っていて、その2人と一緒にプレーしたかったので、神村を選びました」と鹿児島の強豪校へと進路を取った。

「家にいる時は親に何でもしてもらって、甘えていた部分がありましたけど(笑)、今はしっかり何でもできるようになってきたので、そこは成長できたのかなと思います。寮生活、メチャメチャ楽しいです」。サッカーはもちろん、私生活の部分でも自立した日々を送れるようになったことも、この学校に来た大きな成果の1つだ。

 今季はチームが3バックを採用していることで、吉永は左ウイングバックに入っているが、このシステムを導入した理由の1つを有村圭一郎監督はこう語っている。「もう『吉永夢希が戦術』みたいなところもあるので、アイツをどういう形で使うのが一番ストロングが出やすいのかと考えたら、後ろを3枚にして、守備のところの軽減をしてあげる方がいいのかなと思ったんです」。

「アイツはなかなか止められないと思いますよ。ディフェンスが1枚で来ても剥がしますし、距離を空けるとクロスを上げられますし、人を使いながら入っていくのがまだ下手ですけど、そんなのはもっと対応されるようになってから覚えればいいかなと思っています」。この日の“6アシストや7アシスト未遂”を見れば、その言葉にも納得だ。

 来月にはU17アジア杯(U-17W杯アジア予選)が開催され、そこを勝ち抜けば自身にとっても初めてとなる世界との邂逅が待っている。「U-17のワールドカップは世界から注目される大会だと思うので、そこでしっかり結果を残すために今は頑張っていますし、そこで世界の人から見られるような選手になりたいですね。本当に素晴らしい大会で、憧れの舞台なので、まずはしっかりアジアを勝ち抜きたい想いはあります」。

「希望を持って夢に向かう、みたいな感じで」付けられたという名前は、輝く未来を期待させる響きも持っている。世界を見据える17歳のレフティ。2023年をさらなる飛躍の1年にするため、吉永夢希は自分の持ち場の左サイドと、望んだステージへと続いていく道を、全力で駆け上がり続けていく。



(取材・文 土屋雅史) 
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