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大津がプレミアリーグWEST首位・静岡学園にリベンジ。夏に積み上げ、今季リーグ戦初の無失点

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後半42分、大津高MF稲田翼(右)のゴールで2-0

[9.3 高円宮杯プレミアリーグWEST第12節 静岡学園高 0-2 大津高 エスプラットフジスパーク]

 3日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 WEST第12節2日目が行われ、5位の大津高(熊本)が首位・静岡学園高(静岡)に2-0で勝利した。

 静岡学園はプレミアリーグ復帰2年目の今季、前半戦で快進撃。8勝2分1敗で2位と勝点4差をつけて首位ターンしていた。一方、プレミアリーグWEST唯一の公立校である大津も5勝2分4敗と健闘。山城朋大監督が「夏、結構タフに試合できたので、ちょっと大味な試合からこうやって粘って粘ってという戦いが和倉(ユース大会、準優勝)でできるようになりました。積み上げができてきていると思います」という大津がこの日、首位撃破を果たした。

 この日が再開初戦の静岡学園は、U-18日本代表FW神田奏真(3年)と10番MF高田優(3年)、ブレイク中の司令塔・MF森崎澄晴(3年)、大型MF福地瑠伊(3年)ら主軸の半数が怪我やインフルエンザで欠場。その影響は大きく、特に前半はなかなか前線へボールを運ぶことができなかった。

 対する大津は守備から試合に入り、徐々にボールを保持する時間を増やしていく。そして、日本高校選抜候補左SB田辺幸久(3年)が決定的なシュート、クロスに持ち込み、得点ランキング首位で水戸内定のMF碇明日麻主将(3年、日本高校選抜候補)が肩も活用した巧みなボールコントロールからシュートを打ち込む。

 また、開幕戦以来となる先発のMF徳永雄斗(3年)が右サイドで積極的な仕掛け。大津は空中戦、ボールを収める部分で違いを作る碇をはじめ、MF嶋本悠大(2年)とMF兼松将(2年)のダブルボランチも攻撃に係わって相手ゴールへ迫る。そして26分、右サイドからのFKがファーへ流れると、CB吉本篤史(3年)が思い切り良く右足を振り抜く。DFに当たった一撃がゴール右隅へ。吉本のリーグ戦初ゴールによって、大津が先制した。

 静岡学園は飲水タイム後、本来右SBながら守備で奮闘していた泉光太郎(3年)の1ボランチからダブルボランチへ変更し、テンポよくボールを動かすシーンもあった。28分にはPA中央のMF宮嵜隆之介(3年)が右足シュートへ持ち込むも、大津CB五嶋夏生(2年)がブロック。42分にはCB大村海心(3年)のスルーパスでFW大木悠羽(2年)が抜け出したが、距離を詰めた大津GK坊野雄大(2年)に止められてしまう。

 それでも、静岡学園は後半開始から切り札のMF田嶋旦陽(3年)を投入。3分には大村を起点とした攻撃から田嶋の強烈な右足シュートがゴール右上隅を捉える。だが、大津GK坊野が再びファインセーブ。平岡和徳総監督に見出され、1年前にCBからGKへ転向した守護神がゴールを許さない。

 後半立ち上がりは静岡学園の時間帯が続いたが、大津は守備力の高さも示した田辺や五嶋の奪い返しから相手の背後を強襲。前線を追い越す動きやシュート数を増やし、その中には大津ベンチも追加点と思ったというFW山下景司(2年)の一撃もあった。だが、そのたびに静岡学園のU-18日本代表GK中村圭佑主将(3年)が立ちはだかる。

 攻略困難だった中村をはじめ、静岡学園の守備陣も粘り強い守り。大津は右SB大神優斗(2年)やこの日は切り札役に回ったMF古川大地(3年)らがサイドからプレッシャーを掛け続ける。だが、静岡学園は粘り強く1点差を維持。逆にU-15日本代表候補MF山縣優翔(1年)の精度の高いキックなどから、ワンチャンスをモノにしようとしていた。

 だが、大津が次の1点を奪う。後半42分、大津は左SB田辺がアーリークロス。碇がDF、GKと競って、ゴール前にボールがこぼれる。これをMF稲田翼(3年)が右足で押し込んで2-0。碇は「後半の入り苦しい時間が続きましたけれども、しっかり無失点に抑えられて、そこからは自分たちの走り切るところが活きて、最後追加点が取れたんじゃないかと思います」。大きな2点目を奪った大津が、1-5で敗れた5か月前のリベンジに成功した。

 プレミアリーグWEST初優勝、ファイナル進出を狙う静岡学園は後半戦黒星スタート。この日は主軸、代役候補数人も先発できない中で苦しい戦いだった。だが、川口修監督は「あの強度でやったことがない選手ばかり。でも、経験したことで絶対変わってくると思う」と前向き。今回経験した選手や、新たにチャンスを得た選手が活躍し、後半戦も優勝争いに加わり続けることができるか注目だ。

 一方、大津はインターハイ初戦で市立船橋高と激闘を演じた末にPK戦で敗退。その翌日から碇は内定先の水戸へ約3週間練習参加し、残ったメンバーも田辺や稲田が引っ張る形で成長を遂げた。碇は「(大津に再合流した際、)めっちゃ声を出して、めっちゃ良い雰囲気でやっているなと。強度もちょっとずつ高くやって、とても良い練習ができていると思います」と頷く。

 一週間前の東福岡高戦は2-2で引き分けたが、この日は試合を通して運動量と粘り強い守りを維持。静岡学園に決定打をほとんど打たせず、GK坊野の活躍もあって今季リーグ戦初の無失点で試合を終えた。前期はリーグトップの30得点を挙げた一方、3番目に多い29失点。この日のような戦いを続け、プレミアリーグ、選手権で白星を積み重ねていく。

 山城監督は「あとはこれをどれくらい継続して、選手権までの試合を崩れずに行けるのか。去年は後期からこういうゲームができるようになって、勢いに乗って(3位に入った)選手権まで行けたので、そういう意味では順調に来ている」。プレミアリーグWESTも首位と勝点6差。“公立の雄”大津はここから進化を続け、過去最高成績のプレミアリーグWEST4位、選手権準優勝を超える。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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