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良さの消し合い、ファインゴールの応酬、PK戦9人目で決着…市立船橋が大津とのビッグマッチを制す!

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市立船橋高が激闘を制し、3回戦進出

[7.30 インハイ2回戦 市立船橋高 2-2(PK8-7)大津高 忠和公園多目的広場B]

 市船がハイレベルなプレミア勢対決を制す――。30日、令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技2回戦で市立船橋高(千葉)と大津高(熊本)が激突。2-2で突入したPK戦の末、市立船橋が8-7で勝利し、3回戦へ進出した。

 ともに“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグに所属する公立校。ハイレベルなスピード感、強度の中、計4つのファインゴールも生まれた2回戦のビッグマッチは、市立船橋に軍配が上がった。

 市立船橋のSBの攻め上がりやDF背後への抜け出し、大津の2シャドーを起点としたサイド攻撃を互いに消し合うような戦い。その中で互いに特長も発揮していた。市立船橋はMF太田隼剛主将(3年)とMF峯野倖(2年)が距離感良く動き、相手の2シャドーへの配球に対応。峯野が鋭いアプローチを連発したほか、巧みに最終ラインでボールを奪い切る。

 そして、注目ストライカーFW郡司璃来(3年)が抜群のスピードを活かしたドリブルや抜け出し。だが、大津もDF村上慶(1年)が健闘するなど3バックが決定打を打たせない。そして、水戸内定MF碇明日麻主将(3年)ら前線の3人にボールを入れ、そこから得意のサイド攻撃に持ち込んで見せた。

 前半23分、市立船橋は敵陣右中間でFW久保原心優(2年)がFKを獲得。ポイントにいた2人のうちの1人、右SB佐藤凛音(3年)が先に動いて足裏で左後方へボールを転がす。すると、遅れて始動した太田が左足一閃。ファーを突いた一撃はGKの手を弾き、そのままゴールネットへ吸い込まれた。

 太田のスーパーゴールによって市立船橋が先制し、1-0で前半を終える。だが、シード校でこの日が初戦の大津に対して市立船橋は2試合目。疲労もあってセカンドボールを拾えなくなった後半は、大津が主導権を握る展開となった。

 6分、大津は右FKのクリアから左のMF古川大地(3年)がクロス。市立船橋のクリアミスを碇がゴール正面で収める。次の瞬間、半身の状態から左足を思い切り振り抜き、ゴールネットへ突き刺した。プレミアリーグWESTで10戦13発。得点ランキング首位に立っている大型MFのゴールで1-1となった。

 流れは大津。敵陣に押し込んで相手にプレッシャーをかける。そして、左WB田辺幸久(3年)が縦への仕掛けやクロス。対する市立船橋はゴール前で堅さを見せていたが、なかなかボールを保持する時間を作れず、守勢の時間が続いた。

 そして16分、大津はMF嶋本悠大(2年)のインターセプトを起点に連続攻撃。古川の左クロスにFW稲田翼(3年)が競ると、最後はこぼれ球に反応した田辺が利き足と逆の右足を振り抜く。見事な一撃を右隅に決め、逆転に成功した。

 市立船橋の波多秀吾監督は「(大津にサイド攻撃は)やらせなかったけれど、こぼれやクリアミス、ちょっとしたミスを許してくれないというのはプレミアならではという感じですね」。ゴール前でのわずかな隙を逃さなかった大津が勝利に近づいたが、試合はこのままでは終わらない。

 後半21分、市立船橋は敵陣でボールを奪い返すと、太田が中央へショートパス。内川がチームメート、スタッフの静止を振り切る形で左足を振り抜く。ダイレクトでややアウトにかかった一撃は、ゴール右外側から鋭く曲がる軌道でゴール右上隅へ。再びスーパーゴールが生まれ、スコアは2-2となった。

 このゴールで再び出足が良くなった市立船橋が一気に勝ち越しを狙うが、大津も譲らない。互いにゴールへ向かい合う中で迎えた35+2分、大津は田辺の左クロスに交代出場FW山下景司(2年)が飛び込む。だが、ヘディングシュートはクロスバーをヒット。2-2で前後半を終え、決着はPK戦に委ねられた。

 互いに3人が成功して迎えた4人目、先攻・市立船橋DF内川のシュートを大津GK坊野雄大(2年)がストップ。だが、直後に市立船橋GKギマラエス・ニコラス(2年)が大津FW稲田のシュートを止め返す。先攻の市立船橋が正確にシュートを決めていく中、後攻の大津も外せば敗戦というプレッシャーの中で動じず、8人目まで成功。そして、9人目、まず市立船橋DF五来凌空(3年)がゴールを破る。対して大津は、相手のスーパーエース・郡司相手にも好守を連発していた1年生DF村上が右足シュート。これがクロスバーを叩いて大きく跳ね返る。この瞬間、市立船橋が3回戦進出を決めた。

 敗れた大津の山城朋大監督は、「本当に市船、凄く今年良いチームでバランスも良いのでどういうゲームになるのかなと思っていた。僕らも持ち味出せて良いゲームができた。(市立船橋は)堅いですよね。特にゴール前は。人の潰し方とか僕らも勉強になりましたし、その中で2つ取れたので自信にもなりましたし。でも、勝ち上がりたかったですね」と語った。

 一方、最多10度目の優勝を狙う市立船橋は17年以来の3回戦進出。近年は全国舞台で悔しい敗戦を喫することも多く、今年もシーズン当初はリーグ戦で勝ち切れない試合が続いていた。その中で成長を示す1勝だ。波多監督は、「インターハイ入る前の直前のマリノス戦もそうなんですけれども、引き分けていたのが、ギリギリで競り勝ってというのは経験していたので、ちょっとずつそういう力がついてきたと思う。きょうなんか良く追いついたと思うし、そこは彼らの一つの武器でもあるかなと思います」とコメント。選手たちも粘り強く勝つチームへ進化していることを実感していた。

 太田は「市船の伝統と言えば、粘り強く勝つというのが伝統だと思っているので、それをできたことは良かったと思いますし、失点した後も下を向かずに、もう一個一つになってゴールに向かえたのは良い部分だと思っています。本当に勝負強くなっているなと思いますし、相手は大津高校さんでプレミアで本当に力のあるチームに勝ったことで勢いづくと思うので、これから一気に上へ駆け上がっていきたいと思います」。次戦は同じくプレミアリーグ勢で、大応援に後押しされて戦う地元・旭川実高(北海道1)。再びプレミア勢対決を制して頂点に近づく。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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