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昨年の勝点、順位超えへ、横浜FCユースがプレミアWEST5位浮上。3日後に選手権予選決勝の静岡学園は敗戦も前向きな戦い

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前半17分、横浜FCユースMF中島洋之介が先制ゴール

[11.8 高円宮杯プレミアリーグWEST第13節 横浜FCユース 2-1 静岡学園高 横浜FC
・LEOCトレーニングセンター]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 WESTは8日、延期されていた第13節の横浜FCユース(神奈川)対静岡学園高(静岡)戦を行った。ホームの横浜FCユースが2-1で勝ち、5位へ順位を上げている。

 当初、試合は9月9日に予定されていたが、静岡学園に感染症が蔓延した理由で延期。この日、平日開催されることになった。3日後に全国高校選手権静岡県予選決勝を控える静岡学園は、疲労や怪我を考慮して11月5日の同準決勝からU-18日本代表GK中村圭佑主将(3年、東京V内定)を除く先発メンバー10名をチェンジ。それでも、勝てば首位・広島ユースと勝ち点37で並ぶだけに、必勝を期しての選択でもあった。

 だが、序盤は横浜FCユースが圧倒する。最終ラインから距離感、テンポよくボールを動かす横浜FCユースに対し、静岡学園は「リスペクトしすぎていましたよね。引いて守っちゃっていた」(川口修監督)という内容。ボールに行けず、攻守ともに落ち着きを欠いてしまうなど相手に押し込まれる展開となった。

 横浜FCユースは、7分に右クロスからMF中島洋之介(3年)が右足シュート。15分にも中島とMF加藤嵩寅(3年)のワンツーで左サイドを切り崩す。そして17分、右サイドを攻略してゴールへ迫ると、最後はこぼれ球を中島が左足で決めて先制した。

 中島はこれが今季3試合目の出場で初ゴール。小野信義監督が「3年生の中でなかなかメンバーに入ったり、出れなかったりした中で、ここ2週間くらいしっかりトレーニングして、このゲームに対して良い準備ができていたので、起用しました」という3年生MFのゴールでリードを奪った。

 対する静岡学園はこれが2か月ぶりの復帰戦だったCB大村海心(3年)がビルドアップ、カバーリングの部分でも相手と渡り合って見せる。チームは序盤、相手のプレッシングに苦戦して攻め切る前にロスト。だが、飛び込んでくるDFをドリブルで剥がすなど、徐々に落ち着いて技術力を発揮できるようになった。

 だが、横浜FCユースもトップチーム昇格内定のU-18日本代表CB林賢吾主将(3年)とCB國枝蒼空(3年)から加藤やMF宮本新(3年)を経由する形でボールを前進させ、アタッカー陣がスピーディーな攻撃を繰り返す。そして31分、右クロスのこぼれ球をコントロールした加藤が右足ミドル。ドライブのかかった一撃をゴール左へ突き刺した。

 静岡学園は苦しい2点ビハインドとなったが、前半終盤に押し返して見せる。U-15日本代表MF山縣優翔(1年)が失わない力を発揮していたほか、トラップからテンポの速いスルーパス。また、左SB岩田琉唯(2年)がカットインから右足を振り抜く。この日は最後の局面で林や國枝にブロックされるシーンが多く、前半の公式記録上のシュート数はゼロだった。それでも後半、チーム内でさらにモチベーションを上げた静岡学園はシュート数を8まで伸ばす。

 後半7分、敵陣での奪い返しからFW大木悠羽(2年)が右中間でFKを獲得する。これをMF岡元和士(3年)が左足で狙うと、ボールはクロスバーをヒット。このこぼれを大村が右足で押し込み、1点差とした。

 後半の静岡学園は狭い相手DF間にもパスを通しに行くなど果敢に攻め、守備でも前へ。対する横浜FCユースは、小野監督が「いつもだったら通されない距離感とかをドリブルで運ばれて、そこを通してきたりして、後半後手後手というか、対応が難しくなったのはあります」と分析したように、ドリブル、パスで次々と仕掛けてくる相手の前に自陣で戦う時間が増えてしまう。

 また、横浜FCユースは追加点のチャンスを活かせなかった。19分、FW庄司啓太郎(2年)が相手CBと入れ替わって独走。だが、右足シュートは静岡学園GK中村のビッグセーブに阻まれた。21分にMF朝見友樹(2年)が右足で放った直接FKもバーをヒット。精度の高い攻撃でゴール前までボールを運んでいたものの、決め切ることができない。それでも、交代出場の右SB飯塚大地(3年)が1対1で強さを見せたほか、林やGK西方優太郎(3年)が要所で好守を続けるなど相手に2点目を許さない。

 一方、GK中村を中心に1点差を維持する静岡学園は、41分に主軸MF森崎澄晴(3年)ら3選手を同時投入。ギアを上げ、1点をもぎ取りに行く。後半の静岡学園は欠場した主力選手たちにも負けない動き。最後まで諦めずに2点目を目指し、あわやのシーンも作ったが、相手の集中した守りをこじ開けることはできなかった。

 川口監督は「もちろん、勝ち点3狙いに行って負けたんだけど、戦う姿勢を見せていたし、この子たちは(1-0で浜松開誠館高に勝った)準決勝を見て、準決勝の流れからさらに良い流れを作りたいと思ってやってくれた。やることはやったから、これが(決勝に)繋がったら良い」。この日は準決勝の先発組が帯同。チームメートたちの熱い戦いを3日後の勝利に結びつける。

 対して、勝った横浜FCユースの小野監督は、「平日の昼間とか、静学が選手権に出ているという中でプレミア(の主軸)じゃないメンバーが出ているとか、自分たちが集中しきれない状況がある中で、選手たちがしっかりやってくれたかなというのが第一印象です」と頷いた。入り良く試合を進めて2ゴール。我慢の時間帯も各選手が責任感を持ってゴールを守り抜き、勝点3を獲得した。 

 前期はチャンスを作りながらも決め切れず、逆にミスから失点して敗れる試合が増えていた。一時期は降格圏で苦しんでいたが、7月8日以降の10試合を7勝3敗と巻き返している。林は「最近、2点3点決められている。点を取れるようになっているし、守備陣とかが絶対に身体を張って守るぞという感じになっているのが大きい」と語り、加藤は「最低でも去年の順位と勝点は超えないといけないと思っているので。それを絶対に超えるためにも、(残り3試合)一戦一戦絶対に勝点3を取って、チーム一丸となって戦っていければ良いと思っています」と目標を掲げる。プレミアリーグEASTを戦った昨年は、勝点27で7位。この日の勝利で勝点を28へ伸ばした横浜FCユースは、残り3試合で現在の5位からさらに順位を上げてシーズンを終える。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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