beacon

本格強化8年目、県3部から台頭の近江が逆転で関西2位!“広島へ行く”から“プレミアへ行く”へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

近江高が逆転でプレミアリーグプレーオフ進出!

[12.2 高円宮杯プリンスリーグ関西1部第18節 東海大大阪仰星高 1-3 近江高 J-GREEN堺]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 関西1部は2日に最終節を行い、近江高(滋賀)が初のプレミアリーグプレーオフ(12月8日、10日、広島)出場を決めた。前節まで勝ち点29で3位の近江は4位・東海大大阪仰星高(大阪)と対戦し、3-1で逆転勝ち。勝ち点1差の2位・阪南大高(大阪)が京都U-18(京都)に敗れたため、近江はプレーオフ圏内の2位へ浮上してリーグ戦を終えた。
 
 3-1で試合を終えた近江の選手たちが、両手を突き上げる。そして整列、挨拶を終えると、2つ向こうのピッチで試合中の京都U-18対阪南大高戦の終了の笛を待った。そして、2位浮上が確定すると、前田高孝監督やスタッフ、選手たちが喜びを大爆発。本格強化8年目、県3部リーグから一歩一歩積み上げてきた近江が、初めてプレミアリーグプレーオフへの進出を決めた。

 近江、東海大仰星ともに他力ではあったものの、逆転でのプレミアリーグプレーオフ進出の可能性を残して試合をスタート。けが人を複数抱える東海大仰星はリーグMVPのFW水永直太朗主将(3年)や 関西屈指のGK森本真幸(3年)が先発を外れたのに対し、近江は現状のベストでプレーオフ切符をもぎ取りに行った。

 近江のDF金山耀太主将(3年)と中盤の要・MF西飛勇吾(3年)はプレーオフの開催地、広島出身。家族が毎週5、6時間かけて関西でのリーグ戦の応援に駆けつけているという。前田監督は試合前、応援してくれる人やOBのためにも戦うことを選手たちに求めた。「自分のためのサッカーじゃなくて、今まで支えてくれた人とか、県3部から上げてくれたOBとか、そういう人たちのためにもやらなあかんし、西と金山を広島に帰せ。コイツら来週、広島連れて行くからな、そのつもりで行くぞ!」。選手たちは強い思いで戦い、勝利への執着心を存分に発揮した。
 
 近江、東海大仰星はともに選手権出場校同士。前半、近江はボールを保持し、エースMF山門立侑(3年)や左WB浅井晴孔(3年)の個の力やグループでの崩しで相手ゴールをこじ開けようとする。だが、指揮官も指摘したように、ラストのシーンでのキックの質などが課題に。前半は9本のシュートを放ちながら、得点を奪うことができなかった。

 逆に後半20分、東海大仰星に先制点を奪われてしまう。交代出場したばかりの水永のアシストから同じく交代出場のMF小林旺誠(3年)に決められた。この時点でCB平井大地(3年)やCB秋丸凜太郎(3年)を中心に粘り強い守りを見せていた東海大仰星がプレーオフへの最短距離に。だが、近江は失点から2分後の22分、右の山門が、DFをわずかにズラしてからの一撃でニアのネットを破る。

 金山も「山門がああやって点を決めてくれて、もう一回振り出しに戻してくれたのが良かった」と感謝したエースのゴールで同点。この時点で阪南大高は京都U-18にリードを奪われていたものの、近江はまだ得失点差、総得点差で劣っている状況だった。阪南大高を上回るためには勝つしか無い。3バックの一角を担う注目DF金山も再三攻め上がるなど次の1点を目指して戦い続ける。

 東海大仰星も速攻などから攻め返すも、近江の守りはDF西村想大(3年)中心に堅く、スコアを動かすことはできない。そして迎えた41分、近江は相手を押し込むと、右WB鵜戸瑛士(3年)のクロスからFW小山真尋(3年)が執念のダイビングヘッド。これがゴール右隅へ吸い込まれる。すると、水色のユニフォームが、ピッチに伏したまま喜びを噛みしめる小山の下へ。そして、次々とその身体の上へ飛び込んで行った。

 さらにその1分後、山門のスルーパスで抜け出した小山がGKとの1対1を制し、右足で2点目のゴール。そのまま3-1で勝った近江が、「金山と西を広島に連れて行く」目標を達成した。

 金山は「(チームメートの姿は、)逞しかったですし、これまで苦しいことも一緒に乗り越えてきた仲間だったので嬉しかったです。(広島の)エディオンスタジアムだったら(自宅から)歩いて10分くらいで着くので、どこの会場でも凄く近い。最後、広島に戻れて良かった。自分が近江を選んだ時は県リーグだったので、先輩方がカテゴリーを上げてくれて、自分たちがこうやって、そのプリンス1部の舞台で最後プレミア昇格戦を決められて良かった」と先輩や仲間たちに感謝していた。

 近江は本格強化8年目。県3部リーグからわずか3年でプリンスリーグ関西へ昇格した。一度県リーグ降格を経験したが、昨年再び昇格を果たすと、今年は第3節から第5節まで3連勝。その後に指揮官にどこを目指すのか問われた選手たちは「広島へ行きたい。昇格戦へ行きたい」と明確な目標を立てて、リーグ戦に臨んできた。

 プリンスリーグ関西1部は、今年のリーグ王者・京都U-18や、今年のクラブユース選手権で優勝したG大阪ユース、昨年の同優勝チーム・C大阪U-18、そして高体連の強豪校が名を連ねる。だが、近江は毎節、分析、準備から徹底し、Jクラブユースに黒星をつけるなど上位争いを演じてきた。前節、京都橘に1-2で敗れ、翌日の阪南大高対東海大仰星戦は阪南大高が2点を先取。諦めかけたが、東海大仰星が引き分けに持ち込んだことで「これは何かあるぞ」と信じて最終節への準備を進めてきた。

 そして、最終節で逆転勝ち。広島で新たな景色を見ることになった。だが、勝負はここからだ。プレミアリーグへ昇格するためには、強敵との2試合を勝たなければならない。金山は「これまで先輩たちが一つ一つカテゴリーを上げてくれたように、カテゴリーを上げてプレミアの舞台で後輩たちには戦って欲しいと思います」。“広島へ行く”とから“プレミアへ行く”へ。躍進を続ける滋賀の実力派が4強入りを掲げる選手権を前に、新たな歴史を刻む。

(取材・文 吉田太郎)


●高円宮杯プリンスリーグ2023特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP