beacon

[新人戦]ラッキーボーイから絶対的な主力へ。前橋育英FW大岡航未は群馬決勝で1得点も、より貪欲に勝利へ直結するゴールを目指す

このエントリーをはてなブックマークに追加

前橋育英高FW大岡航未(1年=FC VALONジュニアユース出身、13番)はゴールで存在感

[2.4 群馬県新人大会決勝 前橋育英高 1-2 桐生一高 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 決して楽観できる立ち位置にいるわけではないが、ラッキーボーイで終わるつもりなんて毛頭ない。2年生になる今年は、必ず自分の実力を証明してみせるし、このチームの主役を担うぐらいの気持ちで、ゴールを奪い続けてやる。

「ここからトップチームに残って、しっかりスタメンを確立して、しっかり点を決めて、自分がチームを勝たせられるような、周りから頼られるストライカーになっていきたいなと思います」。

 虎視眈々と定位置奪還を狙う前橋育英高(群馬)のストライカー。FW大岡航未(1年=FC VALONジュニアユース出身)がゴールという明確な結果で、復権への狼煙を上げている。


「最近は調子も上がらなくて、試合に出られない時間が続いているので、シンプルにアピール不足です」。新チームになって初の大会となった、群馬県高等学校サッカー新人大会の決勝。県内最大のライバル・桐生一高と対峙した一戦のスタメンリストに名前を書き込まれなかった大岡は、ベンチで試合開始の笛を聞く。

 チームは前半で2失点を献上。小さくないビハインドを負うと、後半18分にようやくアップエリアにいたストライカーに声が掛かる。「『自分が試合に出て何とかしてやろう』とはずっと思っていて、負けている状態で入ったので、とにかく点が欲しくて、前に仕掛けていこうというイメージでした」。

 26分。DF山田佳(2年)を起点に、盟友のMF平林尊琉(1年)が得意のドリブルで中央を切り裂くと、大岡はプルアウェイから左サイドに膨らんでボールを呼び込む。右スミを狙ったシュートはわずかに枠の右へと外れたものの、漂った得点への期待感。前橋育英にようやく攻撃のスイッチが入る。

 終了間際の40+4分。この日2度目の決定機が巡ってくる。左サイドをDF井上萩斗(2年)と平林で崩すと、FW狩野大輝(2年)が落としたボールを大岡は思い切りよく右足一閃。DFがブラインドになっていたGKは反応できず、ボールはゴールネットへと転がり込む。

 ただ、直後に響いたのはタイムアップのホイッスル。「とにかくシュートを意識していた中で、狩野さんから落としのボールが来たので、しっかりシュートを打つことができましたし、入って良かったです」と自身のゴールに言及しつつも、「結局1点しか絡むことができなくて、チームとしても負けてしまったので悔しいです」ときっぱり。勝利に貢献できなかったもどかしさが、強い口調に滲んだ。


 その“出現”はまさにセンセーショナルだった。1年生だった昨シーズン。栃木のFC VALONジュニアユースからタイガー軍団の門を叩いたものの、しばらくは地道なトレーニングに励む日々が続く。だが、ルーキーリーグの視察に訪れた山田耕介監督の前で好プレーを披露すると、参加したトップチームの練習でも高評価を得て、10月1日の尚志高戦でプレミアリーグデビューを飾る。

 すると、翌節の市立船橋高戦ではスタメンに抜擢された上に、先制ゴールを叩き出してチームの連敗ストップに結果で貢献。さらに選手権予選では準決勝、決勝と連続ゴールをマークし、「1年で3年生たちを差し置いて出ている責任は自分の中にありましたし、決めなきゃいけないと思っていたので、結果も残せて良かったです」と語るなど、一気にチームの得点源としてブレイクを果たした。

 ところが、そこからは思ったようなパフォーマンスを発揮できず、徐々に序列は低下。選手権の本大会も30人の登録枠には入ったものの、初戦のメンバーには選ばれず、同時期に波崎で行われていた横山杯への参戦を命じられる。

「メンバーを外れたのは自分の責任なので、あそこから『本当に変わらなきゃいけないんだな』と強く思うようになりました」。初戦から2日後の2回戦。横山杯でのアピールが実り、神戸弘陵高戦でベンチメンバーに返り咲いた大岡は、前半30分から途中出場。チームは0-2で敗れたが、逆境から掴んだ選手権での出場機会は、本人も「1年生であの舞台に立てたことは凄く大きいと思うので、その経験を生かして、今年はインターハイもプレミアも選手権もああいう大きな舞台に立って活躍したいなと思いました」と口にしたように、かけがえのない経験になった。


 自己分析は「爆発的なものはないですけど、選択肢は多い方かなと。背後への動き出しだったり、個で打開できたり、いろいろなパターンを持っているところが長所だと思います」とのこと。ボールを受ける意識も高く、確かにいろいろなことができそうなタイプではあるが、チームの課題を考えてもやはり仕事をしてほしいのはゴール前。求められるのは言うまでもなく、得点だ。

 この日は欠場していたFW佐藤耕太(2年)が前線の軸として期待される中で、ポジションを不動のものにするためには、やはり結果を出し続けるしかない。「また調子の上がらない時期に入ってしまったので、去年の選手権の時期みたいに自信を持ってプレーできたらなと思いますし、もっと練習から変わっていかないといけないのかなと感じています」。

 その秘めたるポテンシャルは十分な代物。上州のタイガー軍団が懐に忍ばせる、ゴールを奪う才に恵まれた2年生ストライカー。ラッキーボーイから、絶対的な主力へ。大岡のさらなるブレイクは、前橋育英が真剣に目指す昨年度以上の成績を手繰り寄せるためには、絶対に欠かせない。

(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

TOP