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大成が初の関東切符獲得。新たなチャレンジで「戦う」力を強化し、大一番で「歴史と人生を変える」を実現

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関東大会出場を喜ぶ大成高の選手たち

[4.29 関東高校大会東京都予選準決勝 大成高 2-1 実践学園高 駒沢第2]

 大成が初の関東切符獲得――。2024年度 関東高校サッカー大会 東京都予選準決勝が4月29日に行われ、大成高実践学園高に2-1で勝利。決勝進出と関東高校大会初出場を決めた。大成は5月5日の決勝で日大豊山高と戦う。

 大成は2019年のインターハイ初出場以来となる東京都予選突破。豊島裕介監督は今年の選手たちについて、「僕もミーティングをするんですけど、僕以外に選手たちだけでミーティングして、注意点、やらなきゃいけないこと、これだけは最低限みんなでやっていこうっていうところの確認は、もうトレーニングマッチからずっと続けてこの冬やってきてくれたんで、素晴らしいなって思っています」と説明する。自分たちに矢印を向け、自発的に行動できるという世代が歴史を一つ塗り替えた。

 実践学園は昨年度の関東高校大会Bグループ(各都県2位チームが参加)で優勝。2年連続の関東大会出場に王手を掛けていたチームが序盤、優勢に試合を進める。だが、大成は前半13分、右サイドのSH稲荷啓太(3年)がファーサイドへピンポイントのクロスボール。これをMF水谷良吾(2年)がヘッドで狙うと、GKの頭上を越えたボールがそのまま逆サイドのネットへ吸い込まれた。

前半13分、大成高の2年生MF水谷良吾(15番)が先制ゴール

MF稲荷啓太は右サイドからのクロスでアシスト

 大成の闘将、CB小池汐生(3年)は「大成の歴史でも関東大会に出たことがなくて、歴史変えるっていう面で、みんなそれをずっと口に出してやっていて、自分たちが進学するための人生もかかってるんで。『歴史と人生を変える』っていう言葉を口にしながら、試合前とかはアップで上げていました」。その強い気持ちがゴールを引き寄せた。

 先制した大成はMF川村歩夢(3年)らが正確にボールを繋いで前進する。23分には、MF伊佐地晴希(3年)の縦パスを受けたFW坂本青輝(3年)が絶妙なターンでPAへ侵入して左足シュート。GKとの接触でファウルを取られ、ゴールは認められなかったが、一発があるところを示した。

 実践学園はこの接触プレーが影響し、GK樋口暖人(3年)が負傷交代するアクシデント。それでも、CB岸誉道主将(3年)が強度の高い守備で相手の起点を封じたほか、緊急出場のGK加藤飛羽(3年)がアグレッシブな飛び出しで追加点を許さない。だが、岸が「ゲームを支配するっていう面では、今日もいつも通りに表現できたのかなと思うんですけど、やっぱり最後のPAのアイディアとか決定力が足りていない」と首を振ったように、大成の強度高い守備の前になかなか攻め切ることができない。

 逆に大成は坂本のパスからFW伊藤雄淳(3年)がPAへ抜け出したほか、落下点の読みや瞬時のスピード、テクニックを発揮していた2年生MF水谷のシュートが相手ゴールを脅かす。実践学園は後半2分、ドリブルでPAへ切れ込んだFW本間貴悠(2年)がフィニッシュ。だが、大成はGK鈴木稜人(2年)が阻止すると、右SB高倉崇太(3年)のクロスなどから追加点のチャンスをうかがう。そして8分、伊佐地のスルーパスで伊藤が抜け出し、GKとの1対1から右足シュートを決めた。

後半9分にはFW伊藤雄淳(7番)が追加点

 2点ビハインドとなった実践学園はスペースへの配球を狙うが、大成CB小池がことごとくストップ。スピードと強さに自信を持つDFは抜群の存在感で相手の攻撃を封じ込んでいた。

 実践学園は苦しい展開となったものの、昨年の経験者である右SB冨井俊翔(3年)が活動量を増やして攻撃を活性化。また、左SB峰尾燎太(3年)が相手の状況を見ながら鋭いドリブル、左足でボールを前進させる。そして、27分、MF福田怜央(2年)の右クロスをMF岩崎蒼平(3年)が右足ダイレクトで決めて1点差。畳み掛ける実践学園は選手交代で高さを加え、セットプレーなどから同点を目指した。

 だが、大成は小池をはじめ、際の強さを見せていた左SB秋間龍矢(2年)、ともにカバーリングが安定していたCB高橋佑弥(2年)と高倉の4バックが崩れない。また、豊島監督が「入っていった人間がしっかりと仕事してくるっていうところでは、今年のチームの色」と語るように、交代出場のMF稲本兼伸(3年)、MF生駒大雅(1年)も役割を全う。そのまま2-1で勝利した。

左SB秋間龍矢が身体を投げ出してクリア。大成高は際の攻防で強さを見せた

 大成は今冬、新たな取り組みにチャレンジ。年明けの“裏選手権”(ニューバランスカップ)後、2月下旬までの1か月半をフィジカル強化期間に充て、対外試合を行わなかったのだという。ボールトレーニングも行う一方で週3日、それぞれ約1時間半かけてスクワットなどのメニューを実施。そして、対外試合“解禁”後は高体連屈指の強さを持つ青森山田高や、関東大学リーグの強豪大学などとの練習試合に挑んだ。

「戦う」ことに目を向け、独自の強化を図ってきた。豊島監督は、「(大成は)足元の上手い子たちが多かったんですけど、やっぱり『戦う』っていうところを彼らにずっと言ってきて、その『戦う』の意味っていうものを彼ら自身が理解をし、それをやっぱり行動してきてくれた学年だなっていう風に思っています」と頷く。今大会、強みの技術力に加え、地道な取り組みで身につけた筋力、「戦う」力を表現。また、大学生との練習試合の効果によって、選手たちはスピード感の向上にも手応えを感じていた。

 関東大会予選では初の決勝進出。ただし、今大会はプリンスリーグ勢の帝京高と國學院久我山高が参加していない。豊島監督は「ほんとに関東を取ったからゴールじゃない」「そんなに甘い東京ではない」と指摘する。選手たちは引き締めて再スタート。目標に掲げた東京の「タイトルを獲る」、また関東大会「優勝」を成し遂げるため、厳しさを持って行動を続ける。

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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