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[関東大会予選]日大豊山が初の「東京代表」に!80分間走り、戦い続けて選手権3位の堀越を1-0撃破

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前半40+6分、MF作道海斗の先制点を喜ぶ日大豊山高の選手たち

[4.29 関東高校大会東京都予選準決勝 堀越高 0-1 日大豊山高 駒沢第2]

 日大豊山が初の関東大会進出! 2024年度関東高校サッカー大会 東京都予選準決勝が4月29日に行われ、日大豊山高が1-0で堀越高に勝利。関東高校大会初出場を決めた。日大豊山は5月5日の決勝で大成高と戦う。

 試合終盤、堀越の猛攻を白のユニフォームが跳ね返す度に大きな歓声が上がっていた。スタンドの観衆を巻き込むような日大豊山の奮闘。そして、選手権3位の強敵を80分間封じ切ると、選手たちはピッチ上で抱擁し、応援団の下へ駆け寄って喜びを分かち合っていた。

 就任13年目で選手、スタッフたちとともに歴史を塗り替えた海老根航監督は、まず走り切った選手たちを称賛。そして、「ウチのチームのコンセプトで、『誰からも応援されるチームになろう』っていうことで。サッカーのスタイルだけじゃなくて、サッカーに向かう姿勢とか、そういったところでも色々な人から愛されて、応援されるようなチームをっていうのはもうずっと言い続けてきてることなので、それをグラウンドで表現できたことが、皆さんにこうやって色々声援を頂いている要因なのかなと思います」と目を細めていた。

 大半の時間帯でボールを保持され、押し込まれる展開。だが、守り一辺倒になることなく、攻める姿勢も見せて勝ち取った1勝だ。U-17日本高校選抜CB森奏(3年)や右SB竹内利樹人主将(3年)、MF仲谷俊(3年)ら選手権の先発6人を残す堀越は、個々の技術力が高く、簡単にはボールを失わない。13分には、ゴール前の狭い局面で仲谷が斜め前方へのパスを差し込んだほか、クロスやミドルシュートでゴールへ迫る。

 日大豊山は、“豊山の遠藤航”ことMF平間右庵(3年)が序盤からタイミングを意識したアプローチ。際の攻防で相手ボールに触れ、また守備範囲広く走るボランチの存在は大きかった。加えて、右SB瓜田周平(3年)がタックルで相手の突破を阻止。各選手が堀越に立ち向かってその攻撃を食い止めていた。

 そして、奪ったボールを右SH作道海斗(3年)が幾度か前進させていたほか、FW大山泰生(3年)が推進力のある動き。また、10番MF葛西由晏主将(3年)がミドルシュートを打ち込むなど攻め返す。

 堀越は前半28分、FW小泉翔汰(3年)が縦突破で左のポケットへ侵入。そして、クロスにMF渡辺隼大(3年)が飛び込んだがわずかに合わない。また、シュート、ラストパスまで持ち込んでいたものの、日大豊山GK高橋謙心(3年)の鋭いセービングの前に阻まれていた。

 迎えた前半40+6分、日大豊山が先制点を奪う。左SH高岡佑吏(3年)が左サイドやや内側のポジションでCB丸山修史(3年)からの縦パスを受けると、前を向いて絶妙なスルーパス。これで左SB大根悠資(3年)が抜け出すと、ゴールライン際で切り返して右足を振り抜く。GKの頭上を捉えた一撃は惜しくもセーブされたが、こぼれ球を作道が右足ダイレクトでゴールへ押し込んだ。

「丁寧に動かして、相手の空いているところを突いていくっていうコンセプトでずっとやっている」(海老根監督)というコンセプトが表現されての先制点。攻守で活動量を増やした作道のゴールに日大豊山イレブンが喜びを爆発させた。

こぼれ球を日大豊山高MF作道海斗が押し込み、先制点

 堀越の佐藤実監督はハーフタイム直前の失点で「相手に考える時間を与えてしまった」ことを指摘する。日大豊山は残り40分間へ向けて戦い方をしっかりと整理。縦パスを通されるシーンが多かったことから、守備のポイントについて確認し、後半に臨んだ。

 堀越は仲谷が対角の右足シュートを飛ばすなど、後半立ち上がりからプッシュ。だが、日大豊山は186cmCB石田悠太郎(3年)が縦パスに対して厳しいチェックを続け、下がりながらのヘッドでも打点を発揮して相手の前に立ちはだかる。その石田が、「横にいれば安心です」と信頼を置く丸山もグラウンダークロスに身体を投げ出してクリア。後半も好守を見せる平間や長身MF高橋叶愛(2年)ら各選手が集中して守りを続けた。

 堀越はベンチからの「落ち着け」という声の中で攻め続ける。小泉や竹内がドリブルで相手ゴール前の脇を狙い、20分には交代出場のFW三鴨奏太(2年)が右クロスから決定的なヘッド。だが、日大豊山・海老根監督が「サイズもそんなにないですし、ほんとにひたむきにサッカーに一生懸命取り組む子なので、そういったものが今日一つ結果として出たんじゃないかなと」評したGK高橋謙が再びストップする。

日大豊山高GK高橋謙心は好セーブを連発した

 GK高橋謙は24分にも仲谷のドリブルシュートをストップ。また、交代で出場したMF根本朝陽(2年)がすぐに身体を張った守備を見せ、またチームを盛り上げる。辛抱強く守った日大豊山は31分、大山が右サイドをドリブルでこじ開け、マイナスのラストパスに葛西が反応する。だが、今度は堀越GK佐藤晴翔(3年)が止め返す。流れを変えるようなビッグプレー。この直後、堀越は選手交代に伴い、CB森奏を前線へ上げて攻撃の色を強める。

 森奏は空中戦で強さを発揮。だが、堀越は佐藤監督が「相手のCBの選手とか動かしたかったんですけど、CBの選手が動かなくてもいいシチュエーションが多く、引き出せなかったです」と指摘したように、日大豊山の強力な2CBが構えて守るような攻撃が最後まで多かった。日大豊山は34分に投入された右SB臼倉夢之心(3年)含めて鉄壁の守り。1プレー1プレーに歓声が上がるなど、石田が「凄い嬉しいです。自分的にも気分上がってやりやすいです」という会場の雰囲気にも後押しされた日大豊山が1-0で勝ち切った。

 日大豊山の海老根監督は「やっぱり技術的にも全然相手の方が上手だったんで、粘り強く守るっていう展開が続いたんですけども、選手たちはほんとに良く走って、(準々決勝から)中1日で苦しいところもあったんですけど、最後まで良く走り切ってくれたと思います」。インターハイ、選手権含めて初の「東京代表」に。関東大会へ向けては、相手の脅威になるような攻撃の回数を増やしていく考えだ。

「もちろん、勝ってきたチームにも恥ずかしくないようなゲームをしっかり関東大会でもしなきゃいけないなっていう責任は感じなきゃいけないかなと思ってるので、もう一回、チームをレベルアップさせて、関東大会に臨めるように頑張りたいと思います」と力を込めた。

 選手たちも大舞台での戦いに意欲。平間は「今まで出たこともないですし、やってみないと分からないですけど、自分たちが出せる力を全部出し切って、良い大会にしていきたい」。ともにプリンスリーグ勢の帝京高、國學院久我山高が不参加とは言え、堂々の東京予選突破。関東大会でも応援されるような戦いを表現し、白星も勝ち取る。

勝利を喜ぶ日大豊山高の選手たち

スタンドも歓喜

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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