beacon

[選手権予選]J内定2トップが生んだ決勝弾!前回全国準Vの四中工、昨年越えへ三重突破!

このエントリーをはてなブックマークに追加

[11.17 全国高校選手権三重県大会決勝 四日市中央工1-0三重 鈴鹿スポーツガーデン]

 第91回全国高校サッカー選手権三重県大会は17日、決勝を行い、昨年度全国準優勝の四日市中央工がサンフレッチェ広島加入内定のU-18日本代表FW浅野拓磨(3年)の決勝ゴールによって三重に1-0で勝利。5年連続30回目の全国大会出場を決めた。

「この子らは本当にプレッシャーがあったと思いますよ。試合前に選手たちにも話したんですけど、昨年の準優勝にも浮かれることなく、天狗になることもなく、本当に謙虚にプレッシャーと戦ってきた1年間だったと思います。プレッシャーの中で頑張ってくれたな、と。選手には感謝の気持ちを試合前には伝えました。『キミらのトレーニングや、日頃の取り組みを見てたら指導者として幸せやと。自信を持ってピッチに立ってくれ。絶対にキミらは結果を残せるチームだよ』と話しました」。四中工の樋口士郎監督は感慨深い表情で振り返った。

 昨年度の全国準Vメンバーから全国大会得点王の浅野や同得点ランキング2位のU-17日本代表FW田村翔太(3年、湘南ベルマーレ加入内定)らレギュラー8人が残った今年、チームは全国的にも「強い」という評価の中でのプレーを強いられた。浅野が鎖骨骨折で欠場した全国総体は初戦で敗退し、今大会も2次リーグで津工に敗戦。決して順調な1年ではなかったが、「自分たちは強い」と奢ることなく、厳しいトレーニングにひたむきに取り組み、そして強豪集う三重県大会を苦しみながらも、勝ち抜くことに成功した。主将のMF田村大樹(3年)はV候補として臨む全国大会へ向けて「どこが来ても今から1か月間しっかり良い準備して、やるだけです。昨年は準優勝。最後ダメだったから悔しい思いしか残っていない。今年は最後、優勝したい」と誓った。

 準決勝で津工を下して初優勝に王手を懸けた三重との決勝。浅野、田村翔のJ内定2トップを軸にゴールを目指した四中工だが、1点が遠かった。前半4分、ショートカウンターから田村翔が決定的な左足シュートを放ち、29分にも浅野のインターセプトから田村翔が決定機を迎えたが、この左足シュートも三重GK森田悠斗(3年)の好守に阻まれた。さらに31分にもディフェンスラインの背後を突いた田村翔が決定的な右足シュートを放ち、36分には攻撃参加した左SB藤山智史(3年)の左クロスを中央の浅野が左足で叩いたがGK正面と三重ゴールを揺らすことができない。

 前半、決定機をつくりはしたものの、相手を警戒し過ぎてか全体的に引き気味だった四中工はボールを奪ってもゴールまで遠く、またミスが多かった。浅野や田村翔の単独突破も相手の網にかかるなど、リズムの悪い40分間に。逆に三重はベンチからの「怖れるな」ということば通りにプレッシャーを受けても、MF鎌田竜太(3年)を起点に最終ラインから丁寧にボールを動かし、シュートレンジまで持ち込むと思い切ったミドルシュートでゴールを狙う。四中工は樋口監督が「受け身になるな! 前へ行こう!」と声を掛け続けていたが、チームはなかなか前への迫力を出すことができないまま前半を終えてしまった。

 それでも後半は四中工の出足の鋭い守りと走力が三重のリズムを狂わせる。浅野を先頭に前線から猛プッシュした四中工は台頭してきたアンカー役のMF眞田翔太(3年)と10番MF松尾和樹(3年)らが中盤で再三インターセプトし、ロングボールは藤崎魁(3年)と坂圭祐(2年)の両CBがシャットアウトした。CB倉田大輝やCB中西竜二らディフェンス陣が相手の快足2トップの突破を必死に阻止していた三重はサイド攻撃からゴールを先制のチャンスを伺うが、相手の堅守の前に後半は全くシュートを撃つことができない。

 四中工も後半9分、投入直後に相手DFの隙を突いた1年生SB舘和希が右足シュートへ持ち込み、17分にも松尾がゴール至近距離から左足シュートを放ったが、歓喜をもたらすことができない。舘投入に伴い、右SB川本将太郎(3年)をSHへ上げて攻撃に厚みを持たせたチームは、相手を押し込むものの、後半30分が過ぎても得点が奪えず、重い空気が漂い始めていた。

 それでも33分、強力2トップがついにスコアを動かした。四中工は田村翔が左中間からドリブルで一気にスペースをつくと、DF2人の間を抜けようとした瞬間にボールはPAでフリーの浅野の下へ。田村翔は「自分でドリブルしようとしたら、大きくなっちゃって。それがタク(浅野)のところへ行った。(DFを)抜いてから出そうと思っていたので。あれは狙っていないです」と苦笑いしていたが、“想定外のスルーパス”を受けた浅野は右足でゴールへと押し込んで決勝ゴールを決めた。「最終ラインが頑張って無失点で抑えてくれていた。ボクらがやらないといけないと思っていた。やっとと言う感じででした」とピッチに大の字になって喜んだ浅野は、一息置くとすぐに応援席へ向けて走りだし、チームメートと喜びを分かち合った。

 ダブルエースによって挙げた1点によって5連覇達成。プレッシャーの中で結果を残した。名門はチャレンジャーとして臨み、快進撃をしてのけた昨年とは違い、堂々の優勝候補として全国大会へ帰ってくる。それぞれが目標を「昨年を超えること」と口にした四中工イレブン。昨年度の全国大会決勝、1-0の後半アディショナルタイムに追いつかれて延長戦で涙をのんだ悔しさは誰も忘れていない。同時にチームとしての手応えもある。今年もどのチームよりも長く仲間とともにサッカーをし、今回は日本一の称号も必ず奪い取る。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2012

TOP