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最後まで決定機をつくった湘南MF古林「勝ちたかった感はある」

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[8.19 J2第29節 湘南 1-1 東京V BMWス]

 疲れ知らず、とは彼のような選手のことを言うのだろう。「いつも走らないといけないですし、攻守に運動量が必要なので。少しは走れたかな」と涼しい顔で話す湘南ベルマーレの右WB古林将太の足は、時計の針が45分を指しても止まることはなかった。

 後半ロスタイム、右サイドでボールを受けた古林は、目の前のスペースにドリブルで仕掛けた。それまで決定的なクロスを供給していたが、このときは自身で試合を決めにいった。古林が中央に切り替えしたとき、ボランチのMF下村東美がオーバーラップを仕掛けたが、迷うことなくシュートを放っている。しかし、ボールはクロスバーを越えていった。

「あの場面はトラップした時から狙ってやると思っていたので、決めたかったですね。東美さんにも『出せなくてスイマセン』と言いましたが『あれは前へのチャレンジだから、全然良いよ』と言ってくれました」

 この試合、前半に上げた一本のクロスで、確かな感触を得ていた。前半21分のことだ。古林が右サイドから折り返したボールは、FWキリノ、MF古橋達也にわずかに合わなかったが、触れば一点というボールだった。「前半は一本くらいしかなかったけど、そこで良いボールを上げられたと思った」と振り返る。

 しかし、前半の東京Vは両SBが攻め上がりを控え、湘南の両WBの攻め上がるスペースを消してきた。そのため、なかなかクロスを上げる機会はなかったが、試合の終盤になって東京Vも前に出てきたことで、古林に見せ場が訪れた。

 後半41分、MFイ・ミンスからのサイドチェンジを受け、深くえぐってからの折り返しが下村に渡ったが、下村のシュートは大きく枠を越えた。その3分後にもPA内左のスペースに柔らかなクロスを送り込んだが、そこに走り込んだ左WB高山薫のシュートも、ゴールマウスに飛ばなかった。

「いつもはなかなか良いボールが上げられないのに、今日は良いボールが入ったから薫もビックリしてシュートを外してしまったのかもしれませんね(笑)。でも、『今日は良かった』というのではダメなので、もっと練習して常に高い精度のボールを上げられるように練習していきたいと思います」と、冗談を交えながらも、プレーの精度を上げたいと語った。

 4-4-2の布陣で戦っていた東京Vは、SHとSBの2人掛かりで湘南のWBに対応してきた。それだけに消耗は激しいのではないかと聞くと、古林は数的不利だからこそのやりやすさもあると口にした。

「相手が2人掛かりできたら、その間を抜けばいいですし、今日は相手が守備を固めてきた前半に崩せなかったことが課題だったと思います。ワンツーとかで崩したり、いろいろな打開策はあるから、もっと練習からやっていきたい」

 現在の湘南が採用する3-4-2-1では、両翼の出来が大きく結果に関わってくる。90分間、サイドで上下動を繰り返せる運動量は、すでにチームにとって欠かせない武器だが、さらに数的不利を打開できる個の力、精度の高いクロスを身に付けることが必要なのだと、古林は自覚する。1-1で終わった試合を「勝ちきれなかった感はある」と振り返った湘南の右の翼は、J1の舞台へ羽ばたく為に、さらなる成長を誓った。

(取材・文 河合拓)

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