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「ぶっ潰れるまでやろう」と走った仙台・太田が「一生忘れない」同点ゴール

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[4.23 J1第7節 川崎F1-2仙台 等々力]

 限界ギリギリだった。だが交代するわけにはいかなかった。足を攣らせながらもピッチに立ち続けたFW太田吉彰が劣勢のベガルタ仙台を救った。0-1の後半28分、仙台は敵陣左サイドでの混戦からボールが中央のFW赤嶺真吾へと入る。そしてすぐさま右前方へと送られたボールに必死に飛び込んだ背番号15が右足で合わせると、DFに当たって大きく弾んだボールはそのままゴールへと吸い込まれた。

 ピッチに倒れこんだまま両手でガッツポーズした太田だが、足が攣って動くことができない。だが喜びは格別だった。「足に来ていた。でもみんな頑張っているし引き下がるわけにはいかなかった。『ぶっ潰れるまでやろう』と思っていた。どんなゴールでもうれしいけれど、このゴールは一生忘れないと思う」。気迫で決めた「魂」のゴールだった。

 前半、カウンターからゴールへ迫る場面もあったが、チームは中盤での選手間が開きすぎている時間が長く、落ち着いた攻撃をすることができなかった。ビルドアップの途中でミスを犯したりする場面が多く、サイドまでボールを運んでも単調なクロスは相手CBに跳ね返されていた。それでも「絶対に勝てると思っていた。難しかったけどチャンスはできていた」という太田は自らの足で同点ゴールをもたらした。

 ただ、東日本大震災の後初めて迎えた公式戦でのゴールは、自分の力だけで入れたものではないと確信している。震災で受けた大きな打撃から復興を目指す地元・仙台の力。「みんなで入れたゴールだと思う。そうでないと(DFに当たった)あんな弱いシュートが入る訳がない」。チームを救ったゴールは、チーム、サポーター、そして「頑張ろう東北」と復興を目指す人々「全員のゴール」だった。

[写真]同点ゴールを決めた太田

(取材・文 吉田太郎)

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