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大宮は“怪我の功名”でホーム初勝利、渡邉「今日のような喜びをまた分かち合いたい」

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[8.27 J1第24節 大宮2-0磐田 NACK]

 ようやくこの日が来た。サポーターの大歓声が鳴り止まない。スタンドのあちこちで、笑顔の花が咲いた。大宮アルディージャが磐田を2-0で下し、今季12試合目で初めてホーム戦白星をつかんだ。選手たちもようやく、笑顔でファンに応えることができた。夏休み最後の試合で、やっと幸せなひと時が流れた。

「僕自身、大宮に来てNACK5で、ホーム戦で初勝利だったので凄く嬉しいです。イメージ通りの切り返しでシュートが打てた。うまく相手が引っかかってくれてシュートを打つことができた。何より、チームの勝利に貢献できたことが嬉しい」

 今季、大分から加入したMF東慶悟は安堵の表情を浮かべた。後半27分、U-22日本代表のアタッカーが勝利に導く大きな先制弾を決めた。浮き球パスをPA内右でFWラファエルが頭で落とし、これを東が受けた。テクニシャンは巧みなステップで、挟んできたDF2人を交わして右足一閃。11試合ぶりの今季4得点目で、貴重な先制点をもたらした。

 これでチームが勢いづく。その4分後には怪我で離脱したキーマンの元韓国代表FW李天秀に代わって先発をつかんだMF渡邉大剛が、中央から右足で低く速いシュートを蹴り込み、2-0と試合を決定付けるゴールを決めた。渡邉は「ほんとここまで長かったので、めちゃめちゃ嬉しいです。前半からミスが多くて、気持ち的に折れそうになったけど、強い気持ちで戦った。試合前から点を取りたいと思っていたけど、イメージ通りのシュートが打てた」と笑顔を見せた。

 今季、大宮は東を筆頭に各所で適切な補強を敢行。韓国代表DF金英權(F東京)、左サイドのスペシャリストの渡邉大剛(京都)、ボランチの上田康太(磐田)らを獲得した。指揮官も新潟で結果を残した鈴木淳監督が2年目とあり、一部では、昨年から加入していたFWラファエルやFW李天秀、GK北野貴之ら実力者とうまくマッチすれば上位を狙えるのでは、と高く評価する人もいた。

 しかし、アウェーではここまで5勝4分3敗とまずまずも、ホームで全く勝てないことが響き15位に低迷。苦しい日々が続いていた。ホームで勝てないことが、余計に選手たちの“負のイメージ”につながり、自信も失った。特に移籍組の東や上田は責任を感じていたという。東は「僕やコウタくん、ダイゴさんもそうですけど、大宮アルディージャをよくしようと思って来た。いつも残留争いをしているけど、今年はそうならないようにと、みんなで言っていた」と明かす。

 これまでも選手全員が一丸となって戦ってきたが、この日、ホームで勝てた背景には“怪我の功名”もあったという。「勝因? 守備的だったことではないか。今までは攻撃的な選手を配置して、特にホームゲームでは攻めることに重点を置いていたが、良いゲームをしても勝てなかった。李天秀の怪我もあって、布陣的に守備のできる選手が入った。守備に少し重心が移動したことで、この結果が出たのかなと思う」と鈴木監督。左MFに渡邉を、左SBに金を据えた新布陣を採用。磐田の日本代表・右SB駒野友一を封じにかかり、成功した。もともと訓練してきた堅守が発揮され、カウンターがうまくはまってゴールが奪えた。

 ホーム初勝利で約1カ月、6試合ぶりに白星をつかんだ大宮。これで勝ち点を28に伸ばし、順位も暫定ながら14位と1つ上げた。2試合連続無失点と守備も安定してきた。“ホーム”の呪縛からも解放され、あとは浮上あるのみだ。渡邉は「今日のような喜びをまた、皆さんと分かち合えるように努力していきたい」と宣言した。

 東も「次はアウェーのガンバ戦ですけど、しっかりとまた勝てるように頑張りたい。ホントお待たせして申し訳なかったですけど、これからどんどん勝っていきたい」と力強く言い切った。今までの借りをサポーターに返すためにも、まずは中断明けの9月10日にG大阪撃破を目指す。

[写真]チームメイトと抱擁する渡邉(13番)

(取材・文 近藤安弘)

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