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トリックプレーを決めた甲府・山本「壁の雰囲気で決めた」

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[3.25 J2第5節 横浜FC 0-2 甲府 ニッパ球]

 試合を優勢に進めながら、なかなか追加点が奪えない。前半から10本のシュートを打ち、猛攻を見せていたヴァンフォーレ甲府だったが、前半に挙げた得点は前半43分の1点のみ。城福浩監督の「2点目を本気で取りに行け!!」という指示を受けて迎えた後半も、2トップのFW高崎寛之、FWダヴィにボールを集めながらゴールに迫るが、体を張った横浜FCの守備から追加点を挙げられなかった。

 その嫌な流れを払しょくしたのが、後半22分のFK時に見せたトリックプレーだった。横浜FCの選手たちが壁をつくる。ボールの前に立ったDF山本英巨は、その壁の様子をジッと見ていたと言う。

「味方同士の連係よりも、壁の選手や壁の横にいる選手たちの雰囲気を把握することを意識していました。そうすると感じることがあるんです。あのときは壁の選手も、壁の横にいた選手も『絶対に点は取られたくない』という状況で、直接FKを警戒していました」と山本は振り返る。壁の前では甲府の選手がGKから壁を隠そうとしていた。その向こうにFWダヴィがいることを確認できた。

「目線を合わせて『もしかしたら行くかもよ』という合図はしていましたね」と話す山本の意図は、しっかりとダヴィに伝わっていた。ホイッスルが鳴ると、山本は横浜FCの壁の裏にフワリとしたループパスを送った。ゴール前で一気にフリーになったダヴィが、左足を振り抜く。チームにとって待望の2点目が決まった。

 アシストした山本も、ベンチに向かって会心のガッツポーズを見せた。「セットプレーは準備していました。でも、特にこれという形ではないんです。そのとき、そのときに何をするか決めます。練習でも、試合でも、そのときの状況によって、隙があればそこを突いていく。監督も『相手の意表を突こう』と常に言っていますが、あのときは全員が意識していたと思います」と、振り返る。

 今季の甲府は強力な2トップにボールを集めて、得点を重ねている。この試合でもアベックゴールを決めた高崎、ダヴィの2トップは大きな脅威になった。だが、そこが抑えられたときに、ほかに打つ手がないと、パニックに陥るようでは意味がない。そのときに、どうやって点を取るか。軸となる戦い方に、変化を加える。その準備ができていたからこそ、試合を決める追加点を挙げることができた。

「まだシーズンは始まったばかり」と高崎は言う。それでも、チームが徐々にできあがっているという手応えを、甲府の選手たちはしっかりと感じながら戦っている。

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