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南アフリカW杯便り

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身も心も冷え切った1日

[6月16日午前4時@ヨハネスブルク]

 大会5日目となった15日は初めてのナイター取材でした。午前中の飛行機でブルームフォンテーンからヨハネスブルクに戻り、ブラジル対北朝鮮が行われるエリスパークへ。今大会の試合開始時間は午後1時半、午後4時、午後8時半の3パターン。これまで取材した試合はすべて午後4時開始だったんですが、ブラジル対北朝鮮は午後8時半キックオフということで、初のナイターを体験しました。

 南半球にある南アフリカの季節は当然、日本とは反対の冬。分かり切っていたことだったんですが、あらためて痛感させられました。とにかく寒い! FIFAの公式発表は気温3度でしたが、体感温度は氷点下。日本の真冬の取材時と同じように完全防寒してスタジアムへ向かったのですが、試合が終わるころには体の芯から冷え切ってしまいました。

 ところで、今日は体が冷えたと同時に、心もヒヤリとさせられることがありました。ブルームフォンテーンから戻ってきてからの試合取材ということで、移動がバタバタになってしまったんですが、こういうときに限ってメディアバスが定刻通りに動いてくれない。

 いったんヨハネスブルクのホテルに戻り、いざエリスパークに向かおうとバス乗り場に行くと、バスは止まっているのに、運転手がいない。いつ戻ってくるかも分からず、このまま待っている時間もないので、慌ててタクシーを呼んでスタジアムへ移動しました。

 ところが、エリスパーク周辺の道路は駐車券のある車や関係車両以外進入禁止になっており、タクシーはスタジアム近くまで入れない。運転手から「ここから歩いていくしかない」と言われたのは、どう考えてもスタジアムまで徒歩10分はかかる地点。しかも、エリスパークは「世界一危険な都市」と言われるヨハネスブルクの中でも最も治安が悪いとされるダウンタウンに位置しており、普通なら絶対に歩いてはいけない場所なのです。

 運転手に「俺も一緒に行くから大丈夫だ」と説得され、覚悟を決めて徒歩でスタジアムへ向かったのですが、本当に寿命が縮む思いをしました。もちろん、ブラジル人のサポーターもいるにはいたんですが、街の雰囲気が明らかに違う…。運転手が歩きながらチラチラと逐一ちゃんと付いてきているか確認するのを見て、本当にここは危険な場所なんだなと思い知りました。

 幸い何事もなくスタジアムに到着。試合を終え、今こうしてホテルに戻ってコラムを書いていますが、エリスパークにタクシーで行くのは2度とやめようと心に決めたのは言うまでもありません。

(文 西山紘平)

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