タクシー戦争勃発
[6月21日23時@ジョージ]
「ジョージ、ベスト」というダジャレでさえノッキングなしに耳に入るほど、ここジョージの住み心地は快適です。4年前のドイツでも感じましたが、白人社会の、いろんな意味での“余裕”を感じます。
もちろん、背景には黒人社会という対局があり、覆されることのないヒエラルキーがあり、それがあってこその“余裕”ではあるのですが。
このように、さまざまな均衡が保たれていたジョージですが、実は今、水面下でワールドカップをきっかけとしたバトルが起きています。
「あの会社はやめたんだ。これからはこっちの電話にかけてくれ」
タクシー運転手のマイケルから突然の報告を受けたのは、ジョージ滞在10日間が過ぎようとしているころでした。
人の良いマイケルは、日本代表キャンプによるタクシーバブルをいいことに、片道30ランド(約360円)だった料金を40ランド(約480円)に値上げするように指令を出してきた上司と、ここ数日間、喧嘩をしていたのでした。
「便乗値上げなんてできないと突っぱねたら、上司が怒ってね……怒鳴り合っちゃったよ」
こんなやり取りが続いたことで、数日前に会社を辞め、別の会社に移ったというのです。
すると、40ランドに値上げしていた元の会社も、30ランドに料金を戻しました。利用者であるこちらは、安い方がいいので良かったのですが、両社とも「あっちは使うな、こっちを使ってくれ」と、今度は客の取りあいです。
無風状態だったジョージで、日本人が引き起こしたタクシー戦争。熱きバトルはいつまで続くのでしょうか。
(文・矢内由美子)