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Jを目指せ! by 木次成夫

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第204回「全社関東予選 tonan前橋トップ&サテライトの歴史的快挙」
by 木次成夫

全国地域リーグ決勝大会(以下、地域決勝と略)が気になる季節になってきました。今年は出場規定が変わり、出場チーム数が16から12に減少。地域リーグ成績で出場権を得られるのは各地域1チーム。つまり、リーグ優勝チームが出場辞退しない限り、2位以下は全国社会人選手権(以下、全社と略)経由の“地域決勝”出場に賭けることになります。

[全社関東予選]
“Jリーグを目指す”と標榜しているクラブの中で、「全社に賭けるしかない」状況になったチームのひとつが、昨年の全社で関東2部所属(今季は同1部)ながらもベスト4進出の快挙を達成したtonan(となん)前橋でした。

関東1部は14節中12節を終え、すでにY.S.S.Cが2連覇を達成。現時点の順位は以下(カッコ内の数字は勝ち点)の通り。

1位=Y.S.C.C.(27)
2位=さいたまSC(同20)
3位=FC KOREA(同19)
4位=tonan前橋(17)
5位=ヴェルフェたかはら那須(17)
6位=クラブ・ドラゴンズ(17)
7位=海上自衛隊厚木基地マーカス(15)
8位=ACアルマレッザ(6位)

全社関東予選は28チームが参加し、6月27日、7月4日、7月11日に開催されました。11日の3回戦(全社代表決定戦)の結果は、

坂戸シティ(埼玉)3-0 韮崎アストロス(山梨)
市川SC(千葉)2-1 東邦チタニウム(関東2部)
SC相模原(神奈川) 3-0 さいたまSC
tonan前橋 1-0 FC KOREA
tonan前橋サテライト(群馬) 1-1(PK5-3)海上自衛隊厚木基地マーカス
ヴェルフェたかはら那須 0-0(PK5-3)ACアルマレッザ

全社出場権を得た6チーム中4チームが「県リーグ所属」という波乱の結末でした。

[ 躍進する図南ファミリー]
クラブ名は図南(となん)サッカークラブ。充実した下部組織はJリーグクラブに劣らないほど。その上、クラブ所有のグラウンドがあるため、練習環境も相対的に良好です。ちなみに、群馬県リーグ3部に所属している3軍“tonan前橋サード”も、あります。

クラブ下部組織でコーチなどを務めている選手もいる一方で、一般的な仕事をしている選手もいます。選手の仕事を考慮して、練習は午前と夜間を併用。クラブ代表でトップチーム監督も務めている菅原宏氏いわく「ツテを辿って、選手の仕事を探しています。農業関係、市場関係など様々です。自分でバイトを探した選手もいますよ」。
同氏は前橋商業出身。大所帯を維持できるのは雇用促進の成果であり、同氏が地元で長年かけて培った人脈の賜かもしれません。

[tonan前橋 1-0 FC KOREA]
≪スタメン≫
GK:金子芳裕(27歳、前・琉球←横河武蔵野)
DF:大河原亮(22歳=今季加入、前・琉球、元・柏、図南JY出身)
DF:間下浩延(24歳、前・福島ユナイテッド)
DF:山本武則(25歳、前・福島ユナイテッド)
DF:林田光佑(24歳=今季加入、前・琉球)
MF:東田学(31歳、前・ルネス学園金沢)
MF:氏家英行(31歳、前ザスパ、99年Wユース・ナイジェリア大会出場)
MF:小仁所洋平(31歳、前・山名クラブ=群馬県1部)
MF:マルキーニョ(34歳、前・水戸)
FW:小川誠司(23歳、前・アルテ高崎)
FW:松永康司(23歳、前・道都大学)

≪試合総括≫
tonanは序盤、KOREAの組織的プレーに苦戦。“つなぐ”サッカーを志向しつつも、狙いを読まれ、パスカットされるシーンが散見。その一方で、KOREAはシュートがバーを叩く決定機も――。得点は30分、中盤からのスルーパスが小仁所に通り→深い位置からマイナスのグラウンダー・クロス→マルキーニョがダイレクト・シュート。数少ないチャンスを確実に決めた「ベテランの職人芸」。圧巻でした。その後、tonanは安定したプレーを披露。チーム全体的に見ると、ベテラン揃いだった昨季に比べると、若手と中堅とのバランスが良くなったという印象です。「今年は(JFL昇格の)チャンスだと思っています。近々、(全社開催の)山口県に宿泊場所を探しに行く予定です」(菅原氏)。

[tonan前橋サテライト 1-1(PK5-3) 海上自衛隊厚木基地マーカス]
≪スタメン≫
GK:吉田誠(23歳、前・東京農業大学)
DF:渡部正彰(27歳、前・福島ユナイテッド)
DF:大柳茂(25歳=今季加入、前・鈴鹿ランポーレ)
DF:二瓶隼(23歳、前・常磐高校)
DF:荻原健一(23歳、前・白鴎大学)
MF:広沢祐兵(26歳、前・福島ユナイテッド←平成国際大学←桐生一高=群馬県)
MF:大朏秀人(23歳=今季加入、前・駒澤大学←前橋商業←図南JY)
MF:根本豊(25歳、前・パイオニア川越)
MF:齋藤巧(21歳=今季加入、前・ジャパンサッカーカレッジ=CUPS聖籠)
FW:丸山樹(23歳、前・東洋大学)
FW:安齋将人(23歳=今季加入、前・ジャパンサッカーカレッジ=CUPS聖籠)

≪試合総括≫
tonanサテは序盤から互角の戦いを挑んだものの、24分に大柳が2枚目のイエローカード(PA内でのハンド)で退場になり、PKで失点。しかし、10人になった後も、組織的なサッカーで粘り、後半24分に齋藤→大朏→齋藤と“つなぎ”、最後は相手守備陣の裏でパスを受けた根本が同点ゴール。その後も数的不利を感じさせない動きで延長(10分x2)も戦い切り、PK戦の末に勝利。「練習で走り込ませている成果が出ました」(菅原氏)。

[図南の今後]
サテが4-2-2-2ではなく、4-4-2のラインを維持し、粘り強く“つなぐ”サッカーを志向しているのが印象的でした。例えば、格下が格上と戦う際の常套手段である“放り込み”は皆無。その理由を菅原氏に問うと「子供たちも見ていますから」との答え。つまり、子供たちの手本になるようなサッカーをしなければいけないということ。ちなみに菅原氏は現在、母校の前橋商業でPTA会長も務めているそうです。

トップチームの短期的Jリーグ参入を優先する(優先した)クラブも多い中、図南は独特です。子供の頃に図南で育ち、戻ってきた選手も複数います。「短いサッカー人生を考慮すれば、トップで出番が少ないよりは、サテで主力の方が良いだろうと思い、本人と話し合った上でサテ登録にした選手もいます」(菅原氏)。

傍目に見る限り、最大の課題はファンを、いかに増やすか。この日の観客はKOREA戦が120人で、マーカス戦は100人。鳴り物を使って応援するファンは0人。地元取材陣も0人。前橋市はザスパのホームタウンゆえか、注目度の相対的低さは明らかです。

そんな状況下、気になるのは、今季からオフィシャルパートナーになったヤマダ電機の存在。同社の本拠は群馬県高崎市(創業は前橋市)。現在は、ユニフォームの(胸ではなく)袖と、練習着の胸などバナーは“控えめ”ですが、やがて本気になれば……?

いずれにせよ、全社(10月15日から山口県で開催)が楽しみです。

<写真>tonan前橋主将の氏家英行。YAMADAの文字に注目

●NEWS
全社関東予選、tonan前橋がFC KOREAに勝利
全社関東予選、tonanサテライトも出場権獲得!

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